1980年にローランド社より発売され、エレクトロからヒップホップ、あらゆる音楽シーンの発展に欠かせないものとなったリズムマシン『TR-808』が、「1曲分のリズムを自由にプログラムでき、音楽シーンに大きな影響を与えたリズムマシン」として、2019年度「重要科学技術史資料」に登録された。
電子楽器として史上初の快挙
ユニクロの「UT」シリーズでTシャツになったり、ファッションアイコンとしても親しまれた通称ヤオヤが同資料に登録されるのは、電子楽器として史上初の快挙。登録は「日本国内の科学技術史において『科学技術の発達上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの』や『国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えたもの』という基準で選定が行われており、『TR-808』の社会的意義が正式に認められたと捉えることができるだろう。
リズムマシンはオルガンの伴奏機器として、1950年代から欧米で開発が始まった。当初は決まったパターンを繰り返し演奏することしかできなかったが、TR-808は32種類のリズムの作成と編集が可能で、作成されたパターンを自由に組み合わせて一曲分のリズムパターンを作り出せる画期的なリズムマシンである。アナログ方式による様々な打楽器を模した本機の合成音色は、「ヒップホップ」や「テクノ」など新しい音楽ジャンルの定番リズム音として世界中のミュージシャンに愛用され、品番をもじった「ヤオヤ」という愛称で広く知られ、現代のポピュラー音楽の世界で欠かせない音源として活躍した。新しい音楽創造に貢献した電子楽器の代表例として重要である。
ドキュメンタリー・フィルムも公開中
Apple Musicでは、マシンをテーマにしたドキュメンタリー・フィルム『808』が独占配信中。フロアに爆発を与え続けている低音とベッドルームでもリラックスさせてくれるグルーブを生み出した名機を深く知るためにはうってつけな90分の映像となっている。
また、ローランド社のオフィシャルSpotifyアカウントでは、『TR-808』が使用された名曲をコンパイルしたプレイリストが公開中。プレイリストには、カニエ・ウェストの“Love LockDown”やマーヴィン・ゲイの“Sexual Healing”、ドレイクの“God’s Plan”、アウトキャストの“The Way You Move”、エイフェックス・ツインの“Analogue Bubblebath”、トーキング・ヘッズの“Psycho Killer(Live)”、フィル・コリンズの“One More Night”などが収録。これを機に、名機の音を意識して音楽を聴いてみると、また新たな楽しみ方が見つかるかもしれません。