また、もう一つ特徴的だったのは、PayPassというサービスを導入していること。フェス会場内のフード、ドリンク、グッズ、アトラクションなどどこであろうと一切現金は使えず、事前に会場内にあるPayPass窓口でチャージした(もちろんクレジットカードでチャージできる)プリペイドカードのみで支払いができるというものだ。チャージするときに手数料500ハンガリーフォリント(約220円)取られたり、足りなくなったらチャージしに行かなければならなかったりと、一日訪れただけの人間にとっては煩わしい部分もあったが、多くの人たちが複数日滞在するわけで、そのような人たちにとっては現金をジャラジャラと何日も持ち歩く必要がなく便利に違いない。山中で複数日行うようなフェスであれば、日本でも将来導入するところがでてくるだろう。
(※以下、写真カウンターにある小さな機器にPayPassカードをあてれば支払いが終了する)

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さて、7月5日16時、「Petőfi Radio Stage」というメイン・ステージの次に大きく、テントの張られた2ndステージでtricotのライブが始まった。こちらのフェスは大抵夜中までやっているので、16時といってもまだその日の2番手。加えて日本とは違い、演奏が始まる前からステージ前でじっと待っているような人たちは少なく、みんな思い思いにピットやフロア外でフェスを楽しんでいるので、ライブ開始直後、人はまばらだった。しかし、<VOLT FESTIVAL>ではメイン・ステージ及びこの2ndステージのみ、全日(合意した)全てのアーティストの全ライブがライブ・ストリーミングによって配信されていることもあって、日本からもtricotのライブが観ることもでき、メンバーは気合い十分(もちろん配信の有無は関係なくいつでも気合い十分だが)。いつも通り、初っ端からフル・スロットルでぶっ飛ばし、ハンガリーの人たちにとってはびっくり仰天の、外見からは想像もつかなかったであろう爆裂パフォーマンスがフロアに熱を注ぎ始める。そしてその熱がだんだんと観客を呼び寄せ、フロアに人が増え始めた。

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tricotのメンバーは英語もそこまで流暢に話せないし、良くも悪くも世界中どこに居ても恐らくそのまんまの自然体。だが、ライブ・ストリーミングがあることは事前に日本の音楽サイトなどでも情報が流れていたので、日本からも「観るよ!」といった声がTwitterなどでメンバーに届いていたようだ。更にこの時期はワールド・カップの真っ最中。チェコ共和国だのハンガリーだのと、日本語を歌うバンドがこれまで、このような地のこれだけ大きなフェスに連日出演することは前代未聞であり、メンバーは「国」とか「アイデンティティ」といったことをおぼろげに意識し出してきたところだったかもしれない。中盤の「アナメイン」ではキダ モティフォ(Gt&Cho)が、「これが日本のtricotじゃーーー!」と日本語で喚き、終盤には中嶋イッキュウ(Vo&Gt)が、忍ばせていた日の丸を広げ、高々と掲げる場面もあった。間違いなく日本で観てくれている人に向けて、発されたメッセージでもあったと思う。みんなも観てるか、と。日本を背負ってるぞ、と。

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きっとこれは、世界中の国々からアーティストが集まっているフェスだからこそ生まれた感情だと思う。音楽であろうと、人であろうと、アートであろうと何であれ、世界を舞台に考えるのであれば、「インターナショナライズ」は必要である。それは、英語や現地語でのMCや歌詞だったり、現地の文化に対する理解や現地の人とのコミュニケーションだったりするだろう。要は、違いを知り、敬い、理解しようとし、伝えようとすること。でも、それが「グローバライズ」になってしまっては駄目だと思う。それはつまり、世界どこにいっても、みんながGAPを着て、iPhoneを持ち、NIKEを履いて、マクドナルドを食すといったこと。無理矢理訳すとすれば「インターナショナライズ」は国際化、「グローバライズ」は世界一体化。tricotはこの日、世界に出て「インターナショナライズ」することはあれど、自分たちにとってルーツである大事なアイデンティティは消えない、といわんばかりのパフォーマンスを見せた。その絶対的な個を保持したまま、世界に羽ばたいていっているのだ。そしてその地は、イギリスに移る。(続く)

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