福岡を拠点に活動する4人組バンドyonawoが、満を持してのファースト・フルアルバム『明日は当然来ないでしょ』をリリースした。ビートルズ(The Beatles)やレディオヘッド(Radiohead)アークティック・モンキーズ(Arctic Monkeys)といったUKロックをルーツに、ジャズやソウル、R&B、ヒップホップなどのエッセンスを取り入れたグルーヴィーなアンサンブルと、ボーカル荒谷翔大のスモーキーかつソウルフルな歌声は健在で、今作ではそこにシンセサイザーなどを導入したスペイシーでサイケデリックなサウンドスケープと、どこか官能的でありながら「死」の気配を感じさせる歌詞の世界が印象的。

また、本作にはコロナ禍のステイホーム中に書かれた楽曲も収録されており、メジャー・デビューからわずか1年で、著しく成長を遂げた4人の姿が本作にはしっかりと刻み込まれている。

変化し続ける街・福岡でyonawoの音楽性が愛される理由とは column201127_yonawo_04

ジャンルレスなグルーヴを纏い
独創的なワードセンスを放つ4人組

荒谷翔大(Vo)田中慧(Bs)斉藤雄哉(Gt)野元喬文(Dr)の4人からなるyonawo。荒谷と斉藤は中学校のサッカーチームで意気投合し、高校時代に斉藤の同級生だった田中と野元とも知り合い、4人で遊ぶようになる。高校卒業後、荒谷はバンクーバーに1年ほど滞在することになるが、その間も4人の交流は続き、それぞれの音楽性も徐々に進化・深化していったという。

荒谷の帰国後、本格的にバンドとしての活動をスタート。荒谷の作るオリジナル曲をセッションするようになっていく。徐々にロックだけではなく、ジャズやソウル、ヒップホップなど冒頭で述べたようなジャンルも積極的に取り入れるように。2018年に自主制作でリリースした2枚のEP『ijo』と『SHRIMP』には、すでに「yonawoワールド」の萌芽を覗かせているディアンジェロ(D’Angelo)エリカ・バドゥ(Erykah Badu)ら、ネオソウルにも通じるようなレイドバックした野元と田中のリズム・セクション、ジョージ・ベンソン(George Benson)チェット・ベイカー(Chet Baker)に傾倒する齊藤のジャジーなギター・フレーズ、そして荒谷によるスモーキーかつジェンダーレスな歌声。それは2020年4月にリリースされたミニ・アルバム『LOBSTER』にも、より進化した形で引き継がれていく。

中でも“矜羯羅がる”の反復する言葉の心地よさ、“Mademoiselle”で見せる独特のワードセンスは、yonawoの真骨頂といえるものだろう。ポーティスヘッド(Portishead)ボーズ・オブ・カナダ(Boards of Canada)らをフェイバリット・アーティストに挙げるだけあって、そのサウンド・プロダクションは単に心地よいだけでなく、どこか不穏な空気を纏っているのも特徴的。

また、今年5月にデジタル・リリースされた過去の音源&デモ集『desk』を含む、全作品のアートワークをドラムの野元が担当するなどヴィジュアル面でのこだわりも、彼らを一筋縄ではいかない存在にしている要因の一つだ。

yonawo – 矜羯羅がる

東京に行く必要ってある?

水本香代子(「THE LIVELY福岡博多」)
好きな場所での生活にこだわっているというか、むしろ『東京に行く必要ってある?』という感じのところに惹かれました

『明日は当然来ないでしょ』にも収録されている“天神”が配信限定リリースされたことに合わせ、大々的なコラボ企画を行った福岡のライフスタイルホテル「THE LIVELY福岡博多」の水本香代子氏は、yonawoの魅力についてこのように語っている。すでに全国規模で話題を集めているyonawoだが、その唯一無二の音楽性は地元であり、現在も拠点にしている「福岡」という土壌が非常に大きな影響を与えていることは想像に難くない

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yonawoの野元氏(Dr.)が描き下ろしたオリジナルデザインのアートポッド
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THE LIVELY BAR ✕ yonawoオリジナルカクテル

福岡が生んだアーティストといえば、チューリップ井上陽水に始まり、ザ・ルースターズシーナ&ザ・ロケッツ椎名林檎ナンバーガール家入レオなど枚挙にいとまがない。ここ数年だけに絞ってみても、藤原さくらユアネス神はサイコロを振らないポルカドットスティングレイといったアーティストが誕生し、福岡を巣立っていったが、yonawoをはじめ多くのアーティストが今、福岡に拠点を置いたまま音楽活動を続けており、緩やかに繋がりながら大きなうねりを作り出している。

yonawo – 天神

福岡在住のアーティストといえば、今年2月にリリースした“snow jam”がTikTok経由でバイラルチャート首位を記録した大学生ラッパー、Rin音の名を挙げないわけにはいかない。「日本の四季」をテーマに変わりゆく季節や、何気ない日々の「一瞬」を鮮やかに捉えた独特のワードセンスが光るファースト・アルバム『swipe sheep』には、彼の盟友クボタカイをはじめ、ICARUSやトラックメーカーShun Marunoなど、やはり福岡を拠点に活動するアーティストが参加している。

福岡ではないが、シンガー・ソングライターのみゆなは九州・宮崎県在住で、クボタカイと共にコラボ曲“あのねこの話“を今年8月にリリース。さらにyonawoの荒谷が楽曲を提供し、福岡のクリエイティブクルーBOATがアレンジを、同じく福岡の西村匠(the perfect me)がエンジニアを務めた楽曲”乙女の声は天津風“を、10月リリースのサード・ミニアルバム『reply』に収録している。

みゆな – 乙女の声は天津風

変化するコンパクト・シティ福岡でyonawoであり続けること

栗田善太郎(『BIGMOUTH WEB MAGAZINE』編集長)
福岡らしさ……というのは街と一緒で今も変化し続けています。yonawoのライブに足を運ぶ若いオーディエンスはハードなロックでも、クラブユーズなヒップホップでもない音楽を求めていたんだと思います

福岡を代表するラジオDJで、福岡のカルチャーを紹介する『BIGMOUTH WEB MAGAZINE』の編集長、栗田善太郎氏は、yonawoの音楽性が福岡で受け入れられた理由について、このように述べる。また以前、本サイトでBOATのメンバーにインタビューをした時、福岡の特徴について彼らは「コンパクトな街だからこそ生まれる出会いみたいなのがあるような気がします」と話していた。

クボタカイもみゆなとの対談の中で、(福岡では)街ぐるみで音楽フェスがあったりして、住んでいる人たちが普段から音楽に触れ合う機会が多いのでコアな音楽も受け入れられやすい土壌があるのかなと思いますね。僕らみたいなアーティストがヒップホップのシーンだけでなく、バンドものやポップス中心のイベントでもパフォーマンスさせてもらえるのは福岡だからかもしれないと話しており、コンパクト・シティ福岡だからこそお互い切磋琢磨し合ったり、音楽的に影響を与え合ったりしているところもきっとあるのだろう。

他にも福岡には、yonawoとも深い親交のあるnape ‘sや、Deep Sea Diving Clubといったバンドが頭角を表している。今年11月18日には福岡にライブハウス「秘密」がオープンし、すでにDeep Sea Diving Clubの出演も決まっている。ここを震源地に福岡の音楽シーンがさらに盛り上がることは必至。yonawoの存在感も、さらに増していくことだろう。

yonawo – rendez-vous

最後にコメントをくれたお二方よりyonawoへの期待の言葉を頂戴した。

栗田善太郎(『BIGMOUTH WEB MAGAZINE』編集長)
「今後も変わらず福岡を拠点にするにしても、取り敢えず実家を出てみるのも良いかと思います。ミレニアル世代らしさも魅力だとは思いますが、大人の期待を飄々と裏切られる強さを見てみたいです。音楽性も今を感じ、変わり続けて欲しいなと思います」

水本香代子(「THE LIVELY福岡博多」)
「健康で楽しく過ごして欲しいですね(笑)。いろんな環境の変化や気持ちの変化はあるとは思うのですが、みんなが心地よく暮らせるところでこれからも活動できると良いなと思っています。yonawoの曲が大好きなので、これからもずっと長くyonawoであり続けて欲しいですね」

Text by Takanori Kuroda

PROFILE

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yonawo

荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)による福岡で結成された新世代ネオ・ソウル・バンド。
2018 年に自主制作した 2 枚の EP『ijo』、『SHRIMP』は CDパッケージが入荷即完売。地元のカレッジチャートにもランクインし、早耳リスナーの間で謎の新アーティストとして話題に。

2019年11月にAtlantic Japanよりメジャーデビュー。
配信限定シングル“ミルクチョコ”“Mademoiselle”を11月&12月に2ヵ月連続でリリース。
2020年4月15日(水)に初の全国流通盤となる6曲入りのミニアルバム『LOBSTER』をリリース。
4月24日(金)に配信限定シングル“good job”、5月1日(金)には過去のデモ曲をまとめた配信限定アルバム『desk』、6月12日、(金)にParaviオリジナルドラマ『love⇄distance』主題歌オープニング曲“トキメキ”を配信限定でリリース。8月14日(金)には、史上初となる福岡FM3局で同時パワープレイを獲得した“天神”の配信がスタート。
そして、11月11日(水)には、待望のファーストフルアルバム『明日は当然来ないでしょ』をリリース。

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RELEASE INFORMATION

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『明日は当然来ないでしょ』

2020年11月11日(水)
yonawo
WARNER MUSIC JAPAN / Atlantic Japan
1、通常盤(1CD) WPCL―13245 ¥2,800(+tax )
2、初回限定盤(CD+DVD)WPZL―31783/4 ¥3,600(+tax )

[CD]
01. 独白
02. 逢えない季節
03. トキメキ Paraviオリジナルドラマ 『love⇄distance』主題歌オープニング曲
04. rendez-vous
05. good job
06. cart pool
07. 蒲公英 (読み:たんぽぽ)
08. 202
09. 天神
10. ムタ
11. 麗らか (読み:うららか)
12. close to me
13. 生き別れ
14. 告白

[初回盤DVD]
01. 矜羯羅がる
02. ijo
03. しあわせ
04. 26時
05. Mademoiselle
06. ミルクチョコ
07. 202
08. good job
09. 天神
10. トキメキ
11. 蒲公英

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EVENT INFORMATION

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yonawo 1st full album『明日は当然来ないでしょ』release one man live tour

2020年12月20日(日)福岡 BEAT STATION
2020年12月23日(水)東京 TSUTAYA O―EAST

yonawo presents「LOBSTER」(※yonawo 1st mini album『LOBSTER』release live 振替公演)

2021年3月31日(水)guest:韻シスト @ 恵比寿 LIQUIDROOM(東京)
2021年4月2日(金)guest:君島大空 @ 梅田 Shangri-La(大阪)

ARABAKI ROCK FEST.20

2021年4月29日(木・祝)―5月2日(日)会場:みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

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