アメリカの電子工学博士であるロバート・モーグが開発し、数多くのミュージシャンが愛用する事で知られる『Moog Synthsizer』(モーグ・シンセサイザー)。今回ご紹介する『Moog Prodigy』(モーグ・プロディジー)は、モーグから1979年~1984年頃にかけて販売され、お手頃な価格とシンプルな設計でエレクトロニック系のミュージシャンに人気があり、入門機に適したモデルでした。上位機種の『Minimoog』に比べて凝った音作りは出来ませんが、両サイドが木製のパネルで出来たそのルックスや、抜けの良いシンセ・ベース、シンセ・リードなどの音色は、まさしくモーグ・シンセサイザーなのです。
筆者がこのシンセを購入したのは、1993年頃。当時、テクノ・ブームの影響もあり、デジタルのシンセサイザーでは出す事が出来ない、アナログ・シンセ特有の音色が流行し、すでに生産が終了した古いアナログ・シンセやドラム・マシンの価格が上がり始め、世の中はビンテージ・シンセ・ブームの真っ只中でした。そんな中、中古の楽器店で『Moog Prodigy』と出会いました。
現在では、往年のアナログやデジタルのシンセサイザーの名器を再現したソフトウェア・シンセや、新製品のハードウェアのアナログ・シンセサイザーが多数発売されていますが、90年代の始め頃、多くの楽器メーカーはデジタルのハードウェア・シンセを中心に販売しており、アナログ・シンセが欲しい人は中古市場を探すしかありませんでした。
こちらの『Moog Prodigy』は、上位機種の『minimoog』に比べてお手頃な価格。木で出来たサイド・パネルはモーグらしいルックスで、出音も格好良かったので、その辺りが購入の決め手となりました。初めて『Moog Prodigy』の音を出した時、『ビヨーン』となめらかでありながら鋭い電子音と、まるで生楽器のように不安定なチューニングに驚いたのを覚えています。
『Moog Prodigy』は何度かモデル・チェンジしているそうで、初期型は、CVゲートが付いておらず多重録音やライブ等でキーボードを手弾きしたい人向けのモデル。後期型にはCVゲートが付いていて、もしシーケンサーとの同期演奏がしたい方は後期型を見つけて購入すると良いでしょう。ちなみに写真のモデルは初期型です。
シンセの背面には『Moog Prodigy』とでっかく書いてあります。国産のシンセにはない、外国製らしい無骨な雰囲気がとても格好良く、気に入っています。ちなみに『Moog Prodigy』は、デペッシュ・モード、ブラー、808ステイト、マッシヴ・アタック、ナイン・インチ・ネイルズ、などのアーティストも使用しているそうです。
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