Apple Watchの登場以降、様々なメーカーがスマートウォッチ市場に参入した。その中でも大きな成功を収めているのが『タグ・ホイヤー コネクテッド』だ。今回は高級腕時計専門誌の『クロノス』日本版で編集長を務める広田雅将氏に、タグ・ホイヤーが示す、スマートウォッチ、そして高級腕時計の新しいあり方について解説してもらった。

スマートウォッチの隆盛を受けて、今や様々なメーカーが、このジャンルに参入した。その中で、ひときわ際立つ“時計”がある。それがタグ・ホイヤーの手がける『コネクテッド モジュラー』だ。計器としての確かさに加えて、この時計には、自分だけの1本を作るという、全く新しい要素が盛り込まれたのである。

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もともとタグ・ホイヤーは計器メーカーだった

今や、スポーツウォッチメーカーとして、知らぬ人のいない存在となったタグ・ホイヤー。しかし、同社に最盛期をもたらしたジャック・ホイヤー氏(現名誉会長)はこう語った。「(私がホイヤーに入社した1958年当時)ホイヤーはほとんどストップウォッチを製作しており、今のような腕時計メーカーではありませんでした」。事実、彼が腕時計の分野で成功をもたらした72年の時点でさえ、ホイヤーは売り上げの多くをストップウォッチに頼っていたのである。タグ・ホイヤーは、どの時計メーカーにもまして、計器メーカーだった。

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▲タグ・ホイヤー 名誉会長 ジャック・ホイヤー氏

計器メーカーとしてタグ・ホイヤーが成功を収めた理由は、いち早くアメリカ市場に進出したことと、様々なジャンルに対応できるよう、様々な種類のストップウォッチを用意したためだった。中でも、モータースポーツのジャンルに関して、ホイヤーは実に多彩なバリエーションを揃えたのである。

ジャック・ホイヤーのセンスがホイヤーを時計メーカーに脱皮させた

こういう方向性を確立させたのが、ジャック・ホイヤー氏だった。学生時代からモータースポーツに熱中した彼は、弱冠28歳で、ホイヤーの筆頭株主となった。ラリーカー向けの『ダッシュボード・クロノグラフ』を刷新しただけでなく、モータースポーツにも向く、まったく新しい腕時計クロノグラフを開発したのである。

ちなみに当時、ホイヤーは世界最大のストップウォッチメーカーであり、強いて腕時計用クロノグラフを作る理由はなかった。しかし、ホイヤー氏は、腕時計クロノグラフこそ、ホイヤーの未来には不可欠だと確信していたのである。

かつて計器メーカーから時計メーカーへと脱皮したタグ・ホイヤーが
スマートウォッチに見出した可能性とは?

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Text:広田雅将
画像提供:タグ・ホイヤー