サーキット・ベンディングで有名なオランダの工業デザイナー「Gijs Gieskes」(ハイス・ジースクス)は、ハードディスクやゲームボーイなどの内部の電子回路を改造し、全く違う音を奏でる装置に作り替え、オーデオ・ビジュアル用の電子楽器の設計を専門とするアーティストです。
主にライブ・パフォーマンスをするための、機械的で風変りなガジェットや、ノイジーで歪んだ質感のグラフィックスを出力できる、映像表現のためのマシンなど、オリジナリティーに溢れ、普通の人が思いつかないような発想の電子楽器を設計、製造し、販売もしています。
今回、その「Gijs Gieskes」が開発した、「Oscillatoscope 2b」(オシレイトスコープ・ツービー)という製品をご紹介したいと思います。本製品は、色鮮やかなグラフィックスと、電子音を同時に出力でき、外部からオーディオ信号を入力すれば映像に動きをつける事も出来る、強力なビデオ・シンセサイザーなのです。
映像を出力する前から期待が高まる、整然としたコントロール・パネル
こちらが「Oscillatoscope 2b」です。白いアクリル板で出来たコントロール・パネルには、ツマミや、金属で出来たピカピカのスイッチ、入力端子などが整然とまとめられ、テクノロジーを感じさせる文字や記号がカッコよく、映像を出力する前から期待が高まります。大きさは、幅10cm、奥行7cm、高さ2.2cmと、結構コンパクトです。
スイッチとツマミのセッティングで、縦と横のラインを組み合わせ、画面に模様を作る
本製品の3つの「R、G、Bスイッチ」は、その上にある「R、G、Bピッチ」の黒いツマミとつながっています。
スイッチを下にすると、画面に垂直のラインが表示され、ツマミを回すと垂直のラインを動かせます。スイッチを上にすると、画面に水平のラインが表示され、電子音が出力されます。その状態でツマミを回すと水平のラインを動かせると同時に、電子音も強烈に変化する仕組みになっています。
例えばスイッチのセッティングを、R/下、G/上、B/下のように、上と下を組み合わせれば、縦と横のラインが組み合わさり、画面に格子模様を作る事ができます。
「R、G、Bスイッチ」の右側にある灰色のツマミは「R、G、Bピッチ(starve)」です。通常は一番右に設定し、左に下げて行くとグラフィックスが画面左上に向かって拡大され、徐々に暗くなり、左に回し切ると映像が消えます。
このツマミを映像が消える寸前くらいに設定すると、色や線がぼんやりとにじみ、淡くソフトな映像も出力できます。
テレビのノイズ画面のように激しい映像も出力できる
左側にある2つの黒いツマミは、下が「水平同期」、上が「垂直同期」です。
本製品は「水平同期」のツマミを左に回すと、グラフィックスが水平方向に伸び、「垂直同期」のツマミを左に回すと、グラフィックスが垂直方向に動きます。この2つツマミで水平、垂直方向の動きを速くすれば、テレビのノイズ画面のように激しい映像を出力する事ができます。このセクションは、少しの操作で激しく映像が動くので、ゆっくりツマミを動かす使い方がおすすめです。
電子音を出力するアウトプットと、映像を動かすためのCVインプットを装備
本製品に装備された6つのミニジャック端子のご説明をします。
右列は、「オーディオ・アウトプット」と、「垂直同期アウトプット」です。本製品の「オーディオ・アウトプット」からは、映像を動かすと同時に電子音が出力されます。
「垂直同期アウトプット」からは常に「ジー」というテレビのノイズのような音が鳴っています。マニュアルには詳しい事が書かれていないのですが、ミニジャック・ケーブルを「垂直同期アウトプット」から、その他のCVインプットに接続すると、映像の形や動きの方向が、ガラリと変化するので色々試すと面白いです。
中央列は、「R、G、Bピッチ CVインプット(starve)」と、「R、G、Bピッチのハイゲイン・オーディオ・インプット(starve)」です。
このインプットに他の楽器などから音を入力すると、画面に表示されたR、G、Bカラーを揺らす事ができます。「ハイゲイン・オーディオ・インプット」の方が、小さい音を入力するだけで激しく映像が揺れます。
左列は、「水平同期のためのCVインプット」と、「垂直同期のためのCVインプット」です。これらは、水平方向と、垂直方向に映像を動かすためのインプットで、中央2つの「CVインプット」に比べ、大きめの音を入力した方が変化が分かりやすかったです。
ちなみに本製品の裏側は底が透明のアクリル板なので、内部の基盤が良く見えてカッコいいです。
VGAコネクタを搭載したパソコン用のディスプレイと接続できる
本製品のパワーインに付属の専用ACアダプターと、VGA映像出力(Dsub15ピン)にVGAケーブルを接続したところです。
VGAコネクタを搭載したパソコン用のディスプレイをお持ちの場合は、本製品とVGAケーブルを接続すれば映像を出力できますが、お持ちでない場合は、VGAのディスプレイを別途、購入する必要があります。
画面のサイズは640×480ですが、信号がアナログなので接続したディスプレイの解像度で表示されます。
「Oscillatoscope 2b」の色鮮やかなグラフィックス
次は実際に「Oscillatoscope 2b」を操作した動画を撮影しました。
前半は本製品を単体で使用している動画、後半は本製品のハイゲイン・オーディオ・インプットにギターを入力し、グラフィックスを揺らしている動画を収録しましたのでご覧ください。
YouTubeの動画プレイヤーの設定で、画質を「720p HD」や「1080p HD」に選択しますと、より鮮明な画像でお楽しみいただけます。
▼Video synthesizer 「Oscillatoscope 2b」 performance HD
絵と音の世界に引き込まれる、強力なビデオ・シンセサイザー
「Oscillatoscope 2b」を使ってみて感じたのは、とにかく画面が色鮮やかで、静止画から激しくフラッシュした映像まで出力でき、絵と音の世界に引き込まれる、強力なビデオ・シンセサイザーだと言う事です。
操作感覚はとてもアナログで、ツマミを動かすと絵が「グニャー」と伸びたり、縮んだり、色と色を重ね合わせて違う色になるなど、簡単で使いやすく、つい時間を忘れて遊んでしまいます。
使う程に様々な色彩を引き出せる
本製品は、ツマミをゆっくり動かしてカラフルな映像を楽しむ事も、スイッチングして激しく点滅させる事もでき、ツマミのセッティングを変えれば、かなりのバリエーションのグラフィックスを引き出せます。テレビの放送終了後のカラーバーのように、直線的ではっきりした原色の映像も、曲線的で淡く、幻想的な色合いの映像も出力でき、使う程に様々な色彩を引き出せるようになってきます。
絵を動かすと同時に鳴るシンセの音色も何気に強烈でカッコいいです。そのサウンドはオシレーター・シンクをかけたような、主張の強い電子音が「ギュイーン」と鳴りながら、色彩の動きと一緒に変化し、グラフィックスをより一層引き立ててくれます。
プロジェクターを使ってライブ・パフォーマンスするのも面白そうですし、家で遊ぶだけでも十分楽しめると思います。
本製品を作った「Gijs Gieskes」は他にも一風変わった電子楽器や、ビデオ・シンセサイザーを設計、製造しています。興味のある方はホームページをチェックしてみてはいかがでしょう。
「Oscillatoscope 2b」を設計した「Gijs Gieskes」のホームページはコチラ