2013年要注目の音楽クリエイター、古川本舗の最新アルバム『SOUP』は時代の壁を越えていく作品だ。そこでQeticでは、彼の才能を紐解くために以前、『古川本舗をミュージック・ビデオから紐解く。デビュー当時〜岩井俊二監督のMVまで徹底解説』という特集を組んだ。先行シングルとしてリリースされた、岩井俊二監督とのコラボレーションによるミュージックビデオ“HOME”は、カルチャーシーンにおいて事件だったのだ。

古川本舗は、かつてボーカロイド・プロデューサーとして注目され、『ニコニコ動画』から誕生したクリエイターだったが、彼が作る作品はギターロック、エレクトロニカ、ポストロックを融合した独自なポップサウンドを奏でている。アルバム作品では、その後フィーチャリング・ボーカルに野宮真貴、カヒミ・カリィ、アイコ(from advantage Lucy)、大坪加奈(from Spangle call Lilli line)、山崎ゆかり(from 空気公団)、YeYeを起用しているセンスにも注目して欲しい。いわゆる、昨今の『ニコニコ動画』的文化とは一線を画した作風なのだ。その後、2ndアルバムからはこの秋メジャーデビューすることが決定したハルカトミユキや、サブカルチャー・シーンで定評のある印象派などを手がけている〈SPACE SHOWER NETWORK〉のレーベルからアルバム作品がリリースされている。さらにレコーディングエンジニアには、くるりやスネオヘアーなど、ひとクセあるアーティストを世に打ち出してきた〈Cafe au Label〉の原朋信氏を迎えており、こだわりのアナログなバンドサウンドによって、美しくも儚い郷愁に満ちたオリジナルな世界観を形作っているのだ。

そして、3枚目となる最新アルバム『SOUP』では、若干21歳のヴォーカリスト、キクチリョウタをメイン・ヴォーカリストとして起用したことで、古川本舗はより“バンド・スタイル”で、ネクストステージへと歩み始めた。そんな彼へ、音楽活動へのこだわりを聞いてみた。

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