1990年に英HMVの日本進出1号店としてオープンし、20年にわたり愛されてきた「HMV渋谷」の涙の閉店から実に4年。CDもレコードも相変わらず売れない売れないと言われているこの時代、まさか戻ってきてくれるとは思っていなかったけど、HMVは「HMV record shop 渋谷」として渋谷に戻ってきた! しかも立地はかつて世界でも類を見ない、レコード店密集地としてその名を轟かせた渋谷の宇田川町のど真ん中。グランドオープンの8月2日には多くの音楽ファンたちが詰めかけ、またDJやアーティストたちによるイヴェントも多数開催された。もうすでに足を運んだ人も少なくないだろう。
広い店内におよそ8万点のアナログ・レコード、ドーナツ盤、CD、音楽関連書籍、カセットテープなどが並ぶ。息を吸い込むと、埃臭い中古レコードの独特の匂いが漂ってくる。ああ、ここにはいったいまだ僕の知らない音楽がどれだけあるんだろうと、その場にいるだけで、未知なるレコードへの好奇心がとめどなく溢れ出してくる。そう、「HMV record shop 渋谷」は、これまでのHMVでの商品展開とはガラッと趣向を変え、中古盤やアナログ・レコードなどを商品の主軸にし、またこのショップでしか買えない限定盤や限定グッズを販売するなど、レーベル的な機能も兼ね備えた、とてもユニークなヴィジョンを持ったショップになっている。
今回はこのお店の最高責任者であり、株式会社ローソンHMVエンターテイメントの執行役員でもある小松正人氏に「HMV record shop 渋谷」の全貌とこれからの意気込みについてお話をうかがった。
Interview:HMV record shop 渋谷
[小松正人氏(HMV record shop 渋谷最高責任者/株式会社ローソンHMVエンターテイメント 執行役員)]
—–2010年のHMV渋谷の閉店から4年、まずはこのショップをオープンさせるに至った背景から教えてください。
年々CDの売り上げが減少しているという現実を受け、社内ではその減った分をどういった事業で補っていこうかという議論があり、さまざまなアイディアがあるなかで、我々にとっても非常に親和性の高い中古商材を活かしたビジネスに可能性があるのではないかと考えての決定でした。
—–リアルの店舗展開というアイディアはすぐに出てきたんですか?
EコマースにおいてはAmazonさん、ヤフオク!さんという巨大なプラットフォームがあり、リアルの店舗においてはTSUTAYAさんやブックオフさんのような全国規模のお店が定着しているので、そこに同じように参入しても、歯が立たないだろうなと。であれば、我々の武器とは何かと考え、たどり着いたのが“専門性”であると。で、専門性を武器にした展開とは何だろうと考えていった先に、CDだけではなく、アナログ盤も取り扱ったリアル店舗の出店というアイディアに至りました。CDだけではお客様のニーズを満たすことができないし、CD化も配信もされていないような素晴らしい音源が中古のアナログ盤にはたくさんある。そういったものを展開していきたいなと。