ェームズ・ベイ、ホージア、トバイアス・ジェッソ・Jrといった若き男性シンガーソングライター陣の活躍が目覚ましい2015年だが、まさかトロ・イ・モワの新作もそのリストに加わることになろうとは、夢にも思わなかった。

「踊れる」サイド・プロジェクト=レ・シンズの1stアルバム『マイケル』(14年)の興奮もさめやらぬ中、およそ2年ぶりに届けられた4作目『ホワット・フォー?』は、兼ねてからエリオット・スミスやリバース・クオモ(ウィーザー)をフェイバリットに挙げてきたトロちゃん=チャズ・バンディックのメロディーメーカーとしての資質を存分に発揮している大傑作だ。彼がプロデュースしたコロンビア出身の男性SSW、キース・ミードのデビュー作『Sunday Dinner』もビートルズを彷彿とさせる作風だったが、エコーの効きまくった歌声はまるでジョン・レノンのようだし、テンプルズやTHE GOASTTといった近年のサイケ・リバイバル勢とも共振する力強いバンド・アンサンブルを見事にモノにしている(アンノウン・モータル・オーケストラのルーバン・ニールソンや、ニュージャージーの鬼才ジュリアン・リンチも参加)。ここにはもう、「チルウェイヴ」の先駆者として祭り上げられていた頃のトロちゃんの姿はない。

また、トロちゃんといえば自らアートワークやミュージック・ビデオを手がけるなど、ビジュアル面にも確固たるこだわりを持つ人物。『ホワット・フォー?』のアルバム・カヴァーでは、スピリチュアルな壁画の前で満面の笑みを浮かべるトロちゃん本人の姿がフィーチャーされているが、今回3度目のインタビュー登場となるQeticでは、あえてミュージシャンというよりも、“ビジュアル・アーティスト”としての彼の素顔に迫ってみた。

Interview:Chazwick Bundick(Toro Y Moi)

音楽を聴くときには、真っ先に「色」を思い浮かべるんだよね。
それを自分のジャケットにも反映するようにしてるんだよ

――今回は、アートワークやビジュアル面のお話をメインに聞ければと思っています。まず、新作『ホワット・フォー?』のアルバム・カヴァーには何かしらのコンセプトがあったのでしょうか? 僕はエリオット・スミスの『フィギュア8』とサン・ラのパロディかな? と予想したのですが……。

【プチ特集】トロ・イ・モワ新作『ホワット・フォー?』リリース記念。“ビジュアル・アーティスト”としての素顔に迫る! art150408_toroymoi_1

エリオット・スミス『フィギア8』ジャケ写

【プチ特集】トロ・イ・モワ新作『ホワット・フォー?』リリース記念。“ビジュアル・アーティスト”としての素顔に迫る! art150408_toroymoi_3

トロ・イ・モワ『ホワット・フォー?』ジャケ写

『フィギュア8』は、間違いなくインスピレーションのひとつだよ。『ポートレイト(肖像)にしよう』というのが最初にあったんだよね。ポートレイトをレコードのカヴァーにするのはずっとやりたかったことだったから。あの壁画も、僕にとっては大切な場所なんだ。バークレーにある有名なギター屋さん(Subway Guitars)の壁で、オーナーのファット・ドッグも快く撮影に貸してくれた。こういうアプローチのアルバム・カヴァーって、シンプルだけどタイムレスな趣があると思う。それこそ、音楽とデザインで僕が目指してるものなんだ。

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