――以前もお聞きしましたが、『Causers of This』(10年)→『アンダーニース・ザ・パイン』(11年)→『エニシング・イン・リターン』(13年)→今回の新作と、徐々にあなたの口元から顔、そして全身があらわになっていますよね? これまでの4作品で共通するテーマやモチーフがあるとしたら、それは何でしょう?

僕もそれには気付いてたよ! 本当に偶然なんだ。意図的なコンセプトだったとしたらすごく格好良かったのにね。今でも覚えているのが、初めてウィーザーのブルー・アルバム(95年の『ウィーザー』)を見たときのことで、バックの青色がすごく肌の色を引き立てているなって思ったんだ。目が痛くなるくらい鮮烈で、それがアルバムのポップなサウンドにとても合っていた。だから、音楽を聴くときには、真っ先に「色」を思い浮かべるんだよね。それを自分のジャケットにも反映するようにしてるんだよ。

――“Empty Nesters”のビデオは『スクリーム』のようなマスクマンが登場しますし、アレハンドロ・ホドロフスキーのようなカルト映画っぽい質感もありますよね。脚本から監督まであなた自身が手がけているようですが、どういったコンセプトで制作されたのでしょうか? あと、あなたの足の速さにもビックリしました(笑)。

Toro Y Moi –“Empty Nesters (Official Music Video) ”

ありがとう! ホドロフスキーと比較してもらえるなんて、すごくうれしいよ。彼は最高のビジュアル・クリエイターのひとりだと思うからね。あのビデオに関しては、歌詞をビジュアルで表現することがメインのコンセプトだった。それぞれのシーンが、アイコニックだったり、ロゴっぽかったりする見え方になるように意識したよ。ダッシュのシーンについては、(フレームレートを)18fpsで撮影して24fpsにスピード・アップすれば、誰でもあれくらいの速さで走れるようになるんだ(笑)。

――レ・シンズ名義の『マイケル』では「東京の雑踏(特に銀座)の中で流れている音楽」をイメージしたと語っていましたが、東京、もしくは日本をテーマにしたアートワークやビデオを撮影するとしたら、どんな内容にしたいですか? また、日本人で好きなクリエイター(アーティスト、フォトグラファー、映画監督、漫画家……etc)は誰ですか。

そうだなぁ……。日本の落ち着いた一面にフォーカスするってのは良いかもね。誰かに日本の電車についてのショート・フィルムを作ってもらえたらクールだと思う。日本の電車ってすごく興味深いし、とにかく効率的だよね。きっと面白い題材になると思う。日本のアーティストというと、最近のアーティストはあまり分からないんだけど、70年代のサイケ・ロックはすごく好きだよ。他にもレコメンドがあればぜひ教えてほしい!

――では最後に、あなたにとって「史上最高のアルバム・アートワーク」と、「史上最高のミュージック・ビデオ」をひとつずつ挙げていただけませんか?

選ぶのはすごく難しいね。“最高“の基準って、何なんだろう? という疑問も出てくるし。でも、ヒプノシス(ピンクフロイドやレッド・ツェッペリンなどのアルバム・カヴァーで知られる、イギリスのデザイン・チーム)の手掛けたものは、総じて好きかな。彼らのデザインって、僕がアルバム・カヴァーに求める要素をすべて含んでいる。写真からロゴ、色合いまで……。すべてがパーフェクトなんだ。

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