1.2つの物語
ここに2つの物語がある。
1つは、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳連峰。頂上付近に雪が積もる冬山へ5人の若者が登山へ向かった。日程は4泊5日。状況は3日目に一変する。2人のクルーが行方不明になってしまったのだ。登山本部、警察などの捜索活動の結果、2人は滑落事故に遭い亡くなってしまった。
2つは、ブータン、中国にまたがるヒマラヤ山脈。東部未踏峰の山『ディンジュンリ』へ2人の若者が向かった。これは、山岳部存続を掛けた一世一代の大きな挑戦であった。そして3月。2人は現地案内人らとともに山脈に入り、未踏峰の山『ディンジュンリ』に世界初登頂を果たした。
彼らに共通していること。それはどちらも経験豊富なクライマーであったことだ。スイス・イタリア国境のマッターホルン、フランス・イタリア国境のモンブラン、ヒマラヤ山脈など、数々の著名な山々の登頂に成功してきた。また、彼らにとって頂上が後一歩のところでも「降りる」と決断することは、立派な「正しさ」であることはわかっていた。しかし、状況は変わった。
「山へ登るとはそういうものだ。」常に刻々と変わる状況の中で決断をしなければならない。そして、1つの決断は死と直結する。特に世界最高峰の山エベレストとなればその状況は一層厳しくなる。
エベレスト
2.映画『エベレスト3D』
11月6日から公開された映画『エベレスト3D』は、最も危険で最も登山家にとって憧れの場所であるエベレスト登頂へ挑んだ12人の物語だ。隊長は登山専門の会社「アドベンチャー・コンサルタント」を営むロブ・ホール(ジェイソン・クラーク)。その顧客として参加する6人と共に、登山ガイドのハロルド・ハリス(マーティン・ヘンダーソン)、過去に酸素補給なしでエベレスト登頂を果たしたマイク・グルーム(トーマス・M・ライト)など経験豊富なクライマー達が名を連ねる。1点大きな違いがあるとすれば、「顧客」を抱えた商業登山であったことだろう。普段はそれぞれ別な仕事をしながら生計を立て、今回エベレスト登山のために集まった。
映画『エベレスト3D』
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