ポップとラップを自在に行き来する新世代アーティストの活躍著しい昨今の音楽シーン。その中でも、鋭角に研ぎ澄まされた言葉とサウンドで話題沸騰中。MCいつかとDJゴンチによるエレクトロ・ラップ・ユニット、Charisma.com(カリスマドットコム)。
世の中の欺瞞にメスを入れる「あるある度数」満点の鋭いリリックと、高揚感溢れるエレクトロ・サウンドで人気を集める彼女たちは、今年2月にはテレビ朝日系『ミュージックステーション』にも出演。そしてメジャー・デビュー・アルバムとなる今回の『愛泥C』では、なんと「愛」にフォーカス。SNSの普及などで見えやすくなった人々の自己愛を題材に、現代人の気持ちを代弁するような痛快なサウンドを聴かせてくれる。また、トラック面ではYASUHITO YAMADAを筆頭に様々なプロデューサー陣が集結。3曲目“腰掛けラップ”ではbanvoxも楽曲を担当するなど、以前にも増して多彩になったサウンドが、彼女たちの新たな表情を引き出す全8曲が広がっている(*タワーレコード限定盤のみ9曲収録)。
今回はそんな最新作について、そして今のCharisma.comについて2人を直撃。不思議なバランスで成立しているお互いの関係性から、メジャー・デビューを経て見えてきた毒舌の向こう側まで……? ユーモアたっぷりに話してもらいました。
Interview:Charisma.com[MCいつか、DJゴンチ]
――今回のメジャー・デビュー・アルバム『愛泥C』は「愛」をテーマに制作されていますね。このテーマが出てきたのはなぜだったんですか?
いつか 前作『OLest』が「OL」に最上級の「est」をつけて会社での出来事をテーマにしていたので、今度はプライベートでの出来事を題材にしたいと思ったんです。「会社でピリピリしている人が、普段はどういう人なのか」ってすごく気になりますよね。中でも私は恋愛が気になると思ったんで、「愛」をテーマにしようと思って。
――そういうことだったんですか。
いつか それでタイトルにも「愛」を入れたんですけど、「Charisma.com的な愛ってどういうことだろう?」と考えた時に、そこは「泥」を入れたいな、と(笑)。「C」はCharisma.comの「C」で、『愛泥C』は語感で選びました。泥を入れなければ『愛C』でもよかったと思うんですけど、やっぱり「泥」の部分をフィーチャーしたかった。
――泥を真ん中に持ってきて目立たせたかった(笑)。
いつか (笑)。そうです。それで「シット(Shit/嫉妬)」とか「憎悪」みたいなものを、「泥」で表現してみたんですよ。「悪」でもよかったんですけど。「泥」っていうとちょっとかわいいですよね。だから、口が気持ちいいものとして『愛泥C』にしたんです。そうしたら、韓国の化粧品で「I DOROTHY(アイドロシー)」というものがあるみたいで、「韓流を意識して入れてるんですか?」って言われたりもして。それは言われるまで全然気づかなかった(笑)。
――ひと言で「愛」と言っても様々な種類があると思うんですが、今回の楽曲は特に「自己愛」に焦点が当てられていますね。これはなぜなのでしょう?
いつか 「その悩みって、結局は自分のことを第一に思ってるやつだよね」みたいな感覚って、あまり歌にフィーチャーされてないな、と思ったんです。もちろん、中島みゆきさんとかになってくると「それですよね、人間って」という感じですけど、最近は炎上とかもあるし、「あんまり悪いことは言わない」「綺麗なところだけをすくって……」ということが多いと思うんですよ。でもそうなってくると、私は「ほんと?」って思っちゃう。
――なるほど。ゴンチさんは、このコンセプトをはじめて聞いた時どんな風に感じましたか。
ゴンチ 正直、あまり意味が分からなかったというか(笑)。
――ははは。
ゴンチ それで作品が出来てくるにしたがって、「ああ、こういうことか」と理解したんです。
――ゴンチさんの立ち位置って独特ですよね(笑)。以前いつかさんが「後ろにいるお客さん」という風にたとえていたことがありましたが、メンバーでありながらリスナー的な視点も持ち合わせていて、本当にユニークだと思います。
いつか その偏ってる感じがいいと言ってくださる人もいるので、ありがたいことですよ。
ゴンチ まぁ、今から私が前に行っても、みたいなところもありますしね。
いつか いいじゃん、前に出れば(笑)。Charisma.comの結成当初はライヴでも私とDJブースが並列だったのに、そこからどんどん後ろに下がっていっちゃったりもして。
ゴンチ 性格的に。でも、最近ではライヴで前に出させていただくことも増えてきたんです。いまだに苦手ではあるんですけど(笑)。
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