スウェーデンのストックホルムに本社を置き、世界で一番楽しいポータブル・シンセサイザーと評判の『OP-1』を世に送り出し、他のメーカーとは一味違った電子楽器を発表する事で知られる『Teenage Engineering』(ティーンエイジ・エンジニアリング) 。
同社から発売されている、ポケット・オペレーター・シリーズ(以下、POシリーズ)は、ゲーム・ウォッチを思わせる液晶画面と、基盤がむき出しの電卓のようなレトロなルックスに、本格的なシンセサイザーやシーケンサー、ドラム・マシンなどが搭載されたユニークな製品です。2015年に第一世代のPOシリーズが発売されてから、続々と新しい製品が登場し、現在までに9種類がラインアップされています。
POシリーズの第一世代は、ドラム・マシンの『PO-12 rhythm』、ベース・シンセの『PO-14 sub』、メロディ、リードに特化したシンセ『PO-16 factory』、第二世代は、演奏を重視したアーケード・サウンド・シンセ『PO-20 arcade』、ビンテージOA機器のサンプルを収録したドラム・マシン『PO-24 office』、パターンを再生しながら8bitメロディを演奏できる『PO-28 robot』が発売されています。
そして第三世代となる新シリーズは、専用ソフトウェア「Microtonic」で作成したサウンドやパターンを、PCスピーカーから内蔵マイクへデータ転送できるドラム・マシン『PO-32 tonic』、レコーディング用マイクと40秒のメモリーを搭載するマイクロ・サンプラー『PO-33 K.O!』、サンプリングした声に異なるキャラクターとフレーズをつけるボイス・エフェクト・サンプラー『PO-35 speak』が発売されました。
今回ご紹介しますのは、POシリーズ第三世代の『PO-33 K.O!』(ノックアウト! )という製品です。どんな物なのか興味のある方や、これから買おうかと思っている皆様に向けて、『PO-33 K.O!』の使用レポートをお届けしたいと思います!
こちらが『PO-33 K.O!』です。本製品は、内蔵されたマイクやライン入力から、色々な音をサンプリングしてドラムとして演奏したり、音階をつけて演奏したり、それらの音を使って打ち込みをしたり、エフェクトをかける事もできる、マイクロ・サンプラーなのです。
まずは単四乾電池2本をセットして、ノブを回し時刻を設定
鳴らして遊ぶ前に、本製品の裏側に単四乾電池2本をセットして、2つのノブを回し時刻を設定します。この2つのノブは左側が「ノブA」、右側が「ノブB」です。こちらのノブは時刻だけでなく、いくつかのパラメーターを調節するのにも使用します。楽器として使わない時は液晶画面に時刻が表示され時計としても使えます。画面に表示されるキャラのコミカルな動きは、ゲーム・ウォッチみたいで懐かしい物があります。
サウンドやパターンを選んだり、BPMやマスター・ボリュームを調整できる
液晶画面のすぐ下に、「sound」、「pattern」、「bpm m」と書かれたボタンがあります。
「sound」ボタンは保存されたサンプルを選ぶ時に使います。その方法は「sound」ボタンを押したまま「1〜16」ボタンを押してサンプルを選びます。選んだら「1~16」ボタンを押せばその音が再生されます。サンプルを選んだ状態で、「write」ボタンと「sound」ボタンを一緒に押しながら「1~16」ボタンのどれかを押せば、選んだサンプルをそこにコピーする事ができます。
その隣の「pattern」ボタンは打ち込まれたパターンを選ぶときに使います。こちらも「pattern」ボタンを押したまま、「1~16」ボタンを押してパターンを選びます。「play」ボタンを押せば、選んだパターンが再生されます。これらの操作は曲を作る時も、演奏する時も良く使うので早めに覚えてしまうと良いでしょう。
「bpm m」と書かれたボタンは、曲のBPMを設定する時と、本製品のマスター・ボリュームを調整するのに使います。
「bpm m」ボタンを押す度に液晶画面には「HIP HOP」、「DISCO」、「TECHNO」と表示が切り替わり、それぞれテンポは「80BPM」、「120BPM」、「140BPM」と固定で切り替わります。もし「98BPM」とか「136BPM」のように微調整したい場合は、「bpm m」ボタンを押しながら「ノブB」を回せばOKです。本製品はリズムのスイング感を調整する事も可能で、その場合は「bpm m」ボタンを押しながら「ノブA」を回します。
『PO-33 K.O!』のマスター・ボリュームを調整したい時は「bpm m」ボタンを押しながら「1~16」ボタンを押します。「1」が無音で「2」が小さい音、「16」がフル・ボリュームです。スピーカーに接続しなくても部屋で楽しむ分には十分なくらい大き目な音が出ます。
録音再生モードで、16ステップ・シーケンサーに音を配置して曲を作る
「sound」と「pattern」の選び方をマスターしたら次はパターンを打ち込みます。先にご説明した方法で好きなサンプルと、消してもいいパターンを選びます。『PO-33 K.O!』はプリセットの音色やパターンが最初から入っていますが、ガシガシ新しい音をサンプリングして、オリジナルのパターンを上書きし、自分専用に育てていくのが楽しい使い方です。
まず、ボタン右列の一番下にあります「write」ボタンを押します。すると液晶画面の上の方に四角いマークが表示され、録音モードになります。
ここで言う録音モードというのはサンプリングの事ではなく、シーケンサーに打ち込みをするモードという意味です。もう一度「write」ボタンを押せば、録音モードは解除されます。
録音モードにした状態で「play」ボタンを押すと四角いマークの隣に三角のマークが表示され録音再生モードになります。
16ステップのシーケンサーが再生されると「1~16」ボタンの赤いランプが順番に点滅します。鳴らしたいサンプルを16個の中から選び、この16ステップ・シーケンサーの鳴らしたいタイミングに音を配置してパターンを作り上げて行きます。
内蔵されたマイクから気軽にサンプリングできる
『PO-33 K.O!』に音をサンプリングする方法はとても簡単です。本製品の右上にある小さな内蔵のマイクを録りたい音源に向けて、「recordボタン」と「1~16」ボタンのどれかを押したままにするとサンプリングできます。ボタンを放せばサンプリングが完了し「1~16」の押したボタンに音が保存されます。
身近にある物を叩いたり、鳴らしたりした音を、内蔵マイクから気軽にサンプリングして、その素材を使ってすぐに曲が作れるところが本製品の面白いところです。ライン・インプットも付いているので、3.5mmのケーブルをつないで、シンセやドラム・マシンなどからサンプリングする事もできます。本製品はトータルで40秒までモノラル・サンプリングが可能です。
メモリーの容量を限界まで使ってしまい、新しい音をサンプリングしたいけどできないという場合は、いらないサンプルを消去します。その時は、消したいサンプルをまず選んで、「record」ボタンを押しながら「sound」ボタンを押せばOKです。
次は『PO-33 K.O!』で作った曲を演奏しましたので、その動画を見て頂きたいと思います。曲の中でカンカン鳴っている金属音は、缶のゴミ箱や、鍋の蓋、鉄製のスピーカー・スタンドをドライバーで叩いた音で、コロコロと転がる音は、机の上や、ペット用の皿に小石を転がした音です。ライン・インプットからは、シンセ、ギター、ドラム音色などをサンプリングして曲を作りました。お楽しみください!
PO-33 K.O! Demo Play by FALCON-106