ゆるスポーツの大運動会<ゆるスポーツランド2018>が5月19日、豊洲の『TOYO TIRES TOYOSU DOME』で開催された。3年目を迎える今年は世界ゆるスポーツ協会が提供する30種目の中から17種目が体験可能という充実ぶり。それなりに体力が必要そうなものから、座ってできるゲーム感覚のもの、小さな子供も遊べる「おやこコーナー」まで、広い会場の中でいろんなタイプの“ゆるスポ”を横断的に楽しめる内容ラインアップだ。
一般社団法人 世界ゆるスポーツ協会が主催するこのイベント。法人の代表は以前Qeticのシリーズインタビュー『imfamous』の第一回に登場した複数の職業と肩書きを持つ福田智洋さん。コピーライター、音楽家、福祉クリエーター、漫画家でもあり、スポーツクリエーターである澤田さんが“スポーツ弱者を世界からなくす”ことを目的に、発明した新しいスポーツを実際に複数、体験できるのがこの日というわけだ。
▼RELATED
福祉クリエイターや音楽家、複数の顔をもつ澤田智洋さんが登場!新インタビューシリーズ『imfamous』がスタート!
13時半に代表の澤田さんが開会の挨拶に立つと、主に20、30代を中心に下は小学生から上は60代を思しき人まで、親子三世代に渡る家族や友人同士、知らない同士が集合。
“ゆるササイズ”と名付けた準備運動から開始。まずはゆるい、が、よく考えられている「ざっくり体操」から。澤田さんは「肩〜とか腰〜しか言わないんで自由に動いてください」と指示もゆるい。が、だからこそ各々自主的にストレッチや運動で体をほぐす。
他にも“5人兄弟”設定の「五つ子体操」では、「長男!」「四男!」と名指された人の動き(どんな変な動きでもダンスでもOK)に合わせて、“兄弟”全員が同じ動きをするという、ちょっと引いてみるとシュール、参加している人は必死&爆笑。準備運動だけで、すでにゆるスポの真髄を体現している感じだった。
開会式が終わると、各々やりたい競技に向かう皆さん。いい意味で全部やってみようという心構えからか、いい塩梅にどの競技にも人が集まっている。では、今年導入された新しい種目をメインに具体的にレポートしていこう。
笑顔が絶えないゆるスポの新種目を紹介!
顔借競争
運動会の「借り物競争」にも似たこの競技。ルールは自分に似た人を3分以内に会場から探し出し、NECの顔認証技術を使った「どれだけ似てるか」認識でパーセンテージが高い組が勝つというもの。競技者は「ちょっと顔を貸してください」という、「ちょっと顔貸せや」をソフトにした感じの文言がプリントされたビブスを着用。
そういうちょっとしたセンスにもクスッとしながら、「顔を貸した人」と並んでうつされた画面に向かって外野が「案外似てる!」などと囃し立て、結果に一喜一憂するのも楽しい。ちなみに結果は数値以外に「犬と猫ほど違う」とか、「兄弟レベル!」とか、言葉でも表現されるのが楽しい。
「すごい勢いで似てない人を判断するので、頭も体もフル回転。でも最後は直感ですね。知らない人にも競技だから声をかけられるし、結果が出るから面白い。」(ヨネ・24歳)
「見回したら小学生の男の子がこっちを見てくれてたんですよ、「来いよ」って視線で。なので迷わず声かけました。」(マー・24歳)
セキュリティに使われる顔認識の技術が笑いを生むことに目をつけた、体力よりはコミュニケーション力と判断力を要するゆるスポのニューカマーという感じか。
CANNOOON BALL!!!
アクアシティお台場と提携したスポーツキャノンを打ち合い、ゴールした球の数で勝敗を決めるゆるスポ。キャノン砲のサイズは大中小あり、大きいほど点数も大きいものの、狙いを定めるのが難しそう。せっせと小キャノン砲で数を稼ぐ人はコツを掴むとどんどんゴールに打ちこめている印象だ。
「大きいキャノンはコツを掴むまであらぬ方向に飛んで行っちゃいます。ゆるく見えて、なんども球を拾っては詰めて引っ張るので案外ハードでした!」(あゆ・24歳)
「4対4なので、チームには知らない人も。でもそれがむしろ面白くてゲームをやることで知り合いになれました。」(キョン・24歳)
トントンボイス相撲
1対1で声の大きさで相撲するという、一番敷居の低いゆるスポがこちら。が、本気で勝ちにいこうと思うと「トンントントントン!」と、高速BPMで発声し続けなければダメで、参加した人のハードコアバンドのボーカリストばりの絶叫が響く。また、声に反応して土俵が光ったりして、大声を出すというアナログなパワーでデジタルな演出効果まで生まれることに、おかしみを感じる部分も。
「声出すと戦ってくれるので声出しました!久々にお腹から声出して腹筋痛いです。」(モコ:19歳)
「ストレス発散になりますね。案外、体力使いますよ。」(ムー・19歳)
ちなみに家庭用に『さけべ!トントンボイス相撲』として商品化され、7月に全国の玩具取扱店で発売予定。アナログなのにデジタルが結果を出すユニークなゆるスポを家庭でも楽しめる。
ポンタおへそサッカー
雷様に取られたおへそを取り戻す設定のサッカーゲーム。ポンタチームと雷様チーム5対5で、目隠しをしたポンタチームは、音のなる“おへそボール”を取り戻すのと同時に、鈴の音を鳴らす雷様チームのメンバーをつかまえることで、雷様を戦力から外せるという、なかなか集中力の入りそうなゲーム。
雷様チームはおへそボールをパスし続け、こちらもなかなか大変そう。
ボールを奪われてはだめだけれど、目隠しをしているポンタさんたちを気遣う必要もあるし、目隠ししている人たちも普段と違う状態を実感できる仕組みになっている。
ハンぎょボール
富山県氷見市役所と共同開発したこの競技。ハンドボールとブリが有名なこの町ならではの内容とルールがユニークです。競技者はコズクラを片方の脇に挟み、ゴールキーパーは浮きを両脇に挟むという、かなり動きに制限のある状態でハンドボールを行うので、体の使い方が難しそう。
ただ、ゴールを決めるたびに脇に挟む魚がブリならでは!出世していくのが面白い。一方、ボールを落としちゃった人は一旦「冷蔵庫」に待機させられるという設定も面白い。
両脇に浮きを挟んだキーパーは、ヘディングや足技でうまいこと失点を防ぐと、ゴールを決めた人より不思議とヒーロー感があったりして、やっても見てもよくできている!ゲームが終わり、魚を並べて数と大きさで得点を数える光景はちょっと魚市場のようでもあり……そもそもサバを小脇に抱えているだけで皆さん、可愛さ3割増。
○×スペース
ルールは縦横斜めのいずれか3つを並べる○×ゲームと同じ。が、マスに触れられるのは右手・左手・右足・左足のいずれかで、決めるのはルーレット。自ずとめっちゃ体制を維持するのが大変なポーズになることも。しかもAGC旭硝子との共同開発されたこの用具、ガラス製透明スクリーン“Glascene®」を採用。空生身の人間の超プリミティヴなアクションで様々なグラフィックや演出が現れるのも見どころ。変な体勢で我慢しながら未来的な効果を楽しむという不思議な体験を得られる。
だれでも楽しめるスポーツ
今回投入されたゆるスポを主に紹介してきたが、競技種目が多いのであまり待たずにテンポよく多くのゲームに参加している人が多かった印象が残った。意外と体力は使いながら、ルール自体はスポーツが得意な人もそうでもない人も初めてのものばかりなので、限りなくスタート地点は近くなり、思い通りに行かないのが当たり前だったり、その様子をお互いに見て大笑いする場面がとにかく多かった。
特に誰が上手いわけでもなく、勝敗にこだわる前にまずルールを把握しなければいけないので、自ずと知らない人同士も協力的になっている。
そしてなんと言ってもこれはゆるスポなんだという大前提が、上手い下手は関係なく、体を動かすのって楽しい、とりあえず参加しちゃえ!というカジュアルさにつながっているように感じられた。
願わくばこの規模感でまた開催されたら、今度は本気で参加できるウェアを持参します!
photo by 越智貴雄