ボンバイエインタビューVol.27／スタン・ハンセン

プロレスには数々の「必殺技」と呼ばれるものがありますが、僕は子供の頃に友達と「どの必殺技が1番最強か」という話題で何時間でも語っていた記憶があります。

「橋本真也の垂直落下式DDTでしょ！」「いやベイダーのムーンサルトだね！」「それなら三沢光晴のタイガードライバーだよ！」なんて事を言いながら熱くなっていたのですが、その時に僕がいつも最終的に言っていたのが「でもやっぱり、最強なのはハンセンのウエスタン・ラリアットだよね」というひと言でした。

アメフト仕込みの突進力に体重を乗せて一気に左腕を振りかぶるウエスタン・ラリアットは、相手の首が吹っ飛ぶのではないかという程の破壊力で、まさに「一撃必殺」という表現がぴったりで説得力抜群の一発でした。

前回のインタビューでは天龍源一郎さんに「ジャイアント馬場」「アントニオ猪木」について色々とお話を伺いましたが、今回は敢えて前回の天龍さんと同じ質問をハンセンさんに伺ってみました。

全日本プロレスでも新日本プロレスでも暴れまくって、当時はよく「ブレーキの壊れたダンプカー」とまで呼ばれていたハンセン選手。馬場さん猪木さんの宿敵として、外国人レスラーとして、天龍さんとはまた違った視点でのお話が伺えたので、すごく興味深かったです。それではいってみましょう！

Interview：スタン・ハンセン

━━最初に、ジャイアント馬場さんの第一印象をお伺いしたいと思います。馬場さんと初めて会われた時の印象はいかがでしたか？

やはり最初は馬場さんの身長に1番驚いたね。アメリカ人でも体の大きい人はいるけど、あそこまで大きい人はなかなかいないからね。

━━やはり、ハンセンさんでも見上げるくらいの身長ですもんね。

もうあり得ないくらい大きかったから（笑）そんなに大きな人ってなかなかいないし、とにかく最初はびっくりしたね。

━━それでは、猪木さんの第一印象はいかがでしたか？

猪木さんは体中からみなぎるオーラが印象的だった。馬場さんほど体は大きくないけど、同じくらい大きく見えてしまうほどの強いオーラを感じたよ。

もちろん猪木さんも身長190cmくらいあるので大きいし、でもどうしても馬場さんと比較されると馬場さんよりは小さいけど、2人が同じくらいの大きさに見えてしまうほど、猪木さんからは強いインパクトを受けたね。

━━驚くほど大きなジャイアント馬場さんと実際に闘ってみていかがでしたか？

他の選手も最初にリングで闘ったときに同じ理由で驚いていると思うけど、馬場さんは関節や腱の力がとても強いんだ。見た目はそんなにマッスルマンのように筋肉も分厚くないから力があるようには見えなかったけど、実際に闘ってみるとものすごく力が強かったから驚いたし、僕以外にも同じように驚いたという話をよく聞いていたよ。

━━猪木さんと最初に対戦された時は、第一印象と変わった部分はありましたか？

馬場さんとは全然違ったタイプだよね。彼はディフェンスを大切にしていたし、テクニックが本当に豊富なんだよ。だから、僕が何かしようとしてもすぐにカウンターを取られたりして。そして、その流れもとてもスムーズなんだ。全く馬場さんとは違ったけど、猪木さんの方も強い印象を受けたね。

━━猪木さんはテクニシャンというイメージだったんですね。

そうだね。テクニシャンでディフェンスを大切にしつつ、何をされてもスムーズに返すことができる人だった。

━━馬場さんとも猪木さんとも何試合も闘われていますが、特に印象に残っている試合はありますか？

特にこの1試合というのは無いけど、実は猪木さんとはタッグを組んだことが無いんだよね。猪木さんはあくまでも僕を対戦相手として見ていたみたいで。

でも馬場さんとは何度か闘った後にタッグも組むことになったから、対戦相手としてもタッグパートナーとしても試合ができて、それは自分自身の範囲を広げられたというか。そのおかげでジャンボ鶴田みたいな他の選手ともタッグ戦で闘えたし良かったと思う。

━━それでは最後の質問になりますが、最近また日本ではプロレスファンが増えてきて盛り上がっていますが、新しいプロレスファンに伝えたい、ハンセンさんが思われる「プロレスの魅力」とはどんなものでしょうか？

何十年も見ていると、プロレスの人気っていうのはどうしても波があると思う。僕らの時はすごく人気があったし、今また人気が上がっているように見えるけど、やっぱりプロレスを盛り上げる上では「対戦相手に恵まれる」っていうのがすごく大切なんだよね。

ただ殴ったり蹴ったりするラフファイトだけじゃなくて、技をかけあったり返しあったり、そういった攻防が色々とあって。

いつの時代もしっかりと「プロレス」をしているんだけど、対戦カードが良い時代、つまり各選手が自分にふさわしい相手と闘えている時代は、お客さんにもそれが伝わって人気が上がっていると思う。だから、人気が下がった時代というのはそういったマッチメイクが上手くできてなかったんじゃないかな。

━━そういう意味では、最近また人気が上がってきたのは、良い選手が増えてきたからかもしれないですね。

そうだと思うよ。新時代到来といった感じで、それもまたプロレスの素晴らしさだよね。

他のエンターテインメントや娯楽に流れてしまった昔のファンもいるかもしれないけど、今も素晴らしい新人がどんどん出てきているから、このまま良い試合をたくさん見せることができればプロレスの人気はまだまだ上がっていくんじゃないかな。

━━貴重なお話、本当にありがとうございます。憧れのハンセンさんにインタビューできて光栄でした。

ありがとう、楽しかったよ。

（最後は日本語で）アリガトウ（笑）

試合中はもちろん、トーナメントやリーグ戦の開会式など試合以外でも沢山暴れまくっていたハンセンさんが、最後はすごく満面の笑顔で笑いかけてくれたので、昔からのファンとしては本当に感無量のあっという間の時間でした。

次またお話できる機会があれば、アンドレやブロディとの話やオフの裏話など、もっと色々なお話を伺ってみたいですね。

そしてここで告知です！馬場さんと猪木さんのタッグ「BI砲」を復活させようという思いから生まれた＜みんなのプロレスマーケット＞というイベントが3月から西日本エリアで開催されていましたが、関東での開催も決定したそうです。沢山のプロレスグッズの販売や展示が行われていますので、コロナウィルスの感染対策に注意しつつ、機会があればぜひ足を運んでみてくださいね。

次回のみちくさボンバイエもお楽しみに、それでは。