ヨーロッパ発日本人レーベル＜Sound Of Vast＞に注目！！

「こちらの展望や方向性を理解してもらった上でリリースしています。1回出して”ハイ、終わり”というより、何回も継続してリリース出来るようなファミリーになれる信頼出来るアーティストと良い物を作りたいんですよね。Egal 3は最近2枚目のEP『Altfelnu EP』をリリースしましたし、2016年には、Egal 3のデビューアルバム、SOV005でリミキサーとして参加してくれたSan ProperのEP、 そしてThe People In Fog（DJ SODEYAMAの別名義）が2枚目のEPをリリース予定です。現在は、世界中からフィードバックをもらえることがとてもやりがいになっています。広がっているという実感が持てるのがとても嬉しいですね。」

Knock氏のこだわりはこれだけではない。レーベルをやる上でディストリビューターは絶対に＜Rush Hour＞と決めていたという。そのために、綿密なビジネスプランを練り、アプローチして取引に至った経緯を持つ。＜Rush Hour＞だからこそ日本を含む世界中に発信が出来、＜Hard Wax＞をはじめとする有数店で展開がされている。アムステルダムというダンスミュージックカルチャーに前衛的な街に身を置き、理想とするアーティストやディストリビューターに導かれていったのかもしれない。

「良いディストリビューターと良いアーティストと良いマスタリングエンジニアに囲まれたとても恵まれている環境だと思っています。特に、ディストリビューターとはこまめに連絡を取ってアイディアを出し合っていますよ。その一つが、〈Sound Of Vast〉のヴァイナルオンリー100枚限定『Ｘ』シリーズです。リリースするか悩んでいるデモ、レーベルの本筋とは少しずれた楽曲を、アーティスト名非公開、ホワイト盤にロゴのスタンプだけ押してリリースしています。匿名にすることでリスナーは先入観なく楽曲を聴けるので、偏見の少ないフィードバックをもらうことが目的です。11月にリリースした“Higher”という楽曲は、有難いことに良いフィードバックをもらえたので、別の形でもリリースできないか検討中です。

Unknown Artist – Higher

アムステルダムは、レコードショップ、アーティスト、ディストリビューター、エージェント、ラジオがとてもうまく回っていて、良い関係が築かれているんです。近隣諸国との連携プレイもうまく出来ていますよね。日本にはそれがない。島国で孤立してしまっているせいもあるとは思いますが、みんな個人で動いていて、海外と太いパイプを持っている海外在住の日本人エージェントが少ない気がします。アーティスト本人がプロモーターと直接話をしないといけないという体制を止めた方がいいと思っています。才能溢れるアーティストが多いのに本当にもったいないです。」

日本の体制も変わりつつあるが、才能あるアーティストが自ら売り込まないといけない状況はまだまだ続いているのが現状だ。オランダ人が持っている音楽の輸出力を多くの日本人が持ってなくて、日本人が持っている職人気質を多くのオランダ人は持っていないとKnock氏は言う。

〈Sound Of Vast〉は現在、＜Rush Hour＞と70年代後期〜80年代初期にリリースされた日本人アーティストの楽曲を、7インチで再発するプロジェクト＜Japanese Groove＞を計画中。また、Knock氏は12月22日（火・祝前日）に代官山AIRにて開催される＜Rush Hour Label Night＞に出演する。

日本とオランダ、〈Sound Of Vast〉の活動を通じて、文化と気質の違いがうまく混じり合い、更なるディープな掛け橋となってくれることを願う。

Photo by Atsushi Harada
Thanks to Rush Hour, Redlight Records