ルーマニアサウンドの特徴は、極限まで音数を減らしたミニマルでダビーなサウンドでありながら、ビーチにも合うドラマチックな展開で全く飽きがこない。Ricardo Villalobosに見出されたというエピソード以前に、ここ数年の異常なブレイク以前に、彼らには長い歴史と実力ととっくに根付いているシーンがあるのだ。それを目の当たりにしたフェスでもあった。
また、派手なプロモーションを一切しないことでも有名である。ギグの本数に比べ、リリース数は少なく、SoundCloudなどで聴けるミックスも最小限である。さらに、初期にリリースしたアナログレコードの枚数は非常に少なく、リプレスもほとんど行わないため、ラストコピーが非常に希少価値の高いものとなっている。そういったストイックさも真の音楽好きがリスペクトする理由の一つなのだろう。
残念ながらスケジュールの都合で、着いた時にはすでに2ステージしか見ることが出来なかったが、メインデーには4ステージ、オールナイトでパーティーが続いた。研ぎ澄まされた感性のもとに生まれた硬派なサウンドとはリンクしないひと時代前のトランスの名残を感じさせる派手な装飾のステージやバーは正直残念な部分ではあったが、砂浜に寝っ転がりなから、背後から伝わってくる良質な4つ打ちは何とも贅沢な気分にさせてくれた。
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