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廃墟が作り出す芸術に魅了されるようになったのはベルリンに住みだしてからだ。

古城の美しさに見惚れるのとはまた違う。朽ち果てたビルの至るところに描かれたグラフィティーはかつての時代には存在していなかった。

歴史の産物と現在のストリートアートが共鳴し合う圧巻の世界。その世界を撮り続けている一人の写真家がいる。

ベルリン在住の日本人フォトグラファー山田悠人が撮る廃墟は非現実的であり、静寂の中に何とも言えない美を感じさせる。

その集大成として写真集『SILENT WORLD-消えゆく世界の美しい廃墟-』が初出版される。その発売を前にスペシャルインタビューを行った。

廃墟を撮り続けたベルリンの写真家にインタビュー。消えゆく世界の美しい廃墟に迫る! km-post72_8430mono-1200x801
photo by Tokio Okada

Interview:写真家・山田悠人

「美しいものや珍しいものを人とシェアしたくて写真を撮り始めた」

インタビュアー宮沢香奈(以下、Kana) 悠人さんは日本ではデザイナーとして活動されてたんですよね?フォトグラファーとして活動を始めたきっかけは何だったんですか?

山田悠人(以下、Yuto) 僕は生まれも育ちも東京なんですけど、留学していたのもNYでいわゆる都会にしか住んだことがなかったんです。ベルリンには2013年に移住してきたんですが、いきなりテーゲル湖(Tegeler See)の森の中で暮らし始めたんですよ。そこで今まで見たことない自然の美しさに圧倒されたんです。夕陽もめちゃくちゃキレイだし、キツネとか鳥とか野生動物も普通にいるんですよね。そんな素晴らしくて美しいものを記録して友人やいろんな人と共有したいと思ったのがきっかけですね。

Kana 大都会からのいきなりジャングル生活になったわけですね(笑)環境の変化がきっかけで写真家になった人は珍しいと思いますが、元から写真の知識や興味はあったんですか?

Yuto 学校で専攻してたぐらいで全部独学です。デザイナーなのでレタッチとか加工するのは得意だし、元から好きだったんですよね。そういった技術は活かされてると思いますが、きちんとしたカメラもベルリンに来てから買いましたからね。

Kana 全部独学ってすごいですね。初めてお会いしたのは確か”URBAN SPREE”での展示会の時だったかと思いますが、その時にすでに”廃墟を撮ってる写真家”という印象がありました。廃墟を撮り始めたきっかけは何だったんですか?

Yuto スプレーでグラフィティーも描いていたから元々廃墟には興味があったんですよね。それで友人のアーティストが絵を描きに行くから一緒に行かないか? と誘ってもらったのが最初の廃墟体験です。ベルリンには第二次大戦後に残された廃墟が沢山あるんです。旧ソ連時代に作られた巨大な建物がそのまま放置されていて、誰もいなくてすごい静かで、でも存在感がすごい。とにかくそういった非現実な空間に衝撃を受けたんです。やっぱりビルに囲まれた大都会で育った影響が大きいのかもしれないですが、森の中の自然と同じように廃墟も記録してシェアしたいと思ったんです。そこから廃墟の情報を集めて毎週のように廃墟に行っては撮影してということを繰り返すようになりました。僕はゾンビ映画とかゲームとかが好きなんですよ。だから廃墟に対するイメージって怖いとかでは全くなくてワクワク感しかなかったんですよね。

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photo by Yuto Yamada

Kana なるほど。悠人さんにとっての廃墟撮影はアドベンチャーだったんですね。私も廃墟に対して恐怖心は特にないですね。病院はちょっと怖いですが、むしろ芸術性を感じさせてくれるものだと思っています。歴史が残した巨大な産物が荒れ果ててゆく中に好き勝手に描かれていくグラフィティーやメッセージがたまらないアート性を生み出してると思ったんです。残されたままの錆びて埃まみれの機械とか崩れかけている階段まで作品に見えます。特に旧ソ連時代の建築が好きなので初めて見た時は悠人さんと同じように、おおっ!!!と衝撃を受けて大興奮でしたね。それほどまでに魅了する何かがありますよね、廃墟には。

Yuto そうですね。まさに冒険ですね。廃墟には何があるか分からないし、何が起きるかも分からない、でもそういった非現実的な世界を撮ることにどんどんのめり込んでいきました。それに日本にいたら絶対見れないじゃないですか。しかも今は都市開発が進んで撤去されてしまったり、新たな建物が建設され出したりしてどんどん見れなくなってきてるんです。この世から消えてしまう前に残しておきたい。そういった思いもありましたね。

Kana その時代背景の分かるものや美しい産物を記録として残すってとても大切ですよね。そうやって追い続けた結果が写真集『SILENT WORLD-消えゆく世界の美しい廃墟-』として出版されることになったんですね。ベルリンや東京で個展をやられてましたが出版に至った経緯はそういったところからですか?

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photo by Tokio Okada

Yuto いえ、多分インスタグラムです(笑)。

Kana え? インスタ?? (笑)。

Yuto 2年前ぐらいだったかな?

Kana 元から繋がりのある出版社とかではなかったんですね。

Yuto 違いますね。実は話をもらってから1年ぐらい音沙汰がなかったんですよ。担当の方が身体を壊してしまったり会社も変わられたりという事情があったんですが、それでも変わらず出版したいと言ってくれて、時間は掛かりましたがこうやって実現出来ることになりました。

Kana 改めておめでとうございます!! 誰かの目に止まって写真集を出すまでになるってすごいことだと思うんですが、相当の努力もされてきたと思います。デザイナーから転身してプロの写真家としてやってこうと思ったきっかけは何だったんですか?

Yuto プロになろうとは思ってなかったですよね。食べていくならデザイナーの仕事がありましたから。写真でお金が欲しいというよりはさっきも言いましたが、キレイなものや珍しいものを人とシェアしたいって気持ちで始めたので最初は本当にそれだけでしたね。写真に対してものすごく情熱を持っていますが、プロとしてはまだまだ発展している最中ですから。

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photo by Tokio Okada

Kana 随分謙虚ですね(笑)。

Yuto いや、本当に(笑)未だに自分から写真家ですって言わないですよね。”インスタグラムやってます。”ぐらい(笑)写真を撮るのが本当に楽しいし、自信もついてきましたが、まだまだ成長途中だし、探してる最中なんですよね。

Kana ”探してる最中”って良いですね。冒険家な感じがします。

Yuto 僕は廃墟だけでなく、東京の夜景も撮っているんですが、実はこの写真集も廃墟と夜景の両方でお話を頂いたんですよ。でも東京の出版社から出すならまずは廃墟だなと思ったんですよね。

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photo by Yuto Yamada

Kana それはなぜですか?

Yuto 2015年の最初のURBAN SPREEでの展示の時は廃墟の作品は1点も売れなくて、翌年に渋谷のヒカリエで個展をやった時はほとんど全部の作品が売れたんです。その後にまたベルリンで個展した時には東京の夜景の写真を入れたら売れるんですよね。ベルリンの人は廃墟を知っているし珍しくないんですよ。でも東京の夜景は珍しいし見れないじゃないですか。その逆で東京の場合はベルリンの廃墟を見る機会なんてないから興味を持ってくれた人は一人で数点買ってくれたりするんです。だから一人でも多くの人に見てもらいたいと思って廃墟にしました。

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*2016年11月「Berlin/TokyoⅡ」@URBAN SPREE

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*2016年7月「ART without BORDERS」@渋谷ヒカリエ

Kana なるほどですね。悠人さんが写真を始めたきっかけである美しいものや珍しいものを人とシェアしたいという意思が写真集という形で実現したんですね。廃墟で特に思い出に残ってる場所はありますか?

Yuto 日本になっちゃうんですけど、奈良のドリームランドが一番ですね。まさに”サイレント・ワールド”だったんです。もうすでにないし、2度と見れないから余計に思い出深いです。

Kana 最初見た時は海外の映画村か何かの跡地かと思いました!あれは実際に行ってみたくなりますね。
最後になりますが、日本で写真家を目指してる人や海外で活躍したいと思っている人に何かアドバイスがあったらお願いします。

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photo by Tokio Okada

Yuto うーん、とにかく日本以外を見ないとダメですよね。僕はどこの国でもいいから一度は絶対住んだ方がいいと思います。なぜなら自分自身が成長出来るし、写真に関して言えば、廃墟の撮影って釘が刺さったりとか野犬がいたりとかとにかくいろんな危険が伴うんですよね。でもリスクを負わないと良い写真は撮れないと思うんです。だから人生も同じなんじゃないですかね。

Kana 海外に住んでいるからこそ分かることや苦労って想像を超えるものがありますよね。その分経験や得れるものも想像を超えるから”苦労は買ってでもしろ”ということですよね。本日は貴重なお話をありがとうございました!!

山田 悠人 Yuto Yamada

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東京都出身。日本デザイナー学院グラフィックデザイン科卒業、広告制作会社 勤務を経て、ニューヨークに渡米。帰国後、フリーランスデザイナーとして活動。 2013年より、ドイツの首都ベルリンに活動拠点を移し、写真家としても活動を 開始する。デザイナーとしてのスキルを生かしたグラフィカルな写真表現を得 意とし、近未来的な夜景、歴史的背景とストーリーを持つ廃墟を撮影。近年で は拠点であるベルリン、出身地である東京を中心に、国内外で作品展示を行っ ている。

オフィシャルサイト

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RELEASE INFORMATION

『SILENT WORLD-消えゆく世界の美しい廃墟-』

2018.05.21(月)

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EVENT INFORMATION

Yuto Yamada 『SILENT WORLD』

2018.05.25(金)~06.10(日)
オープニングレセプション 05.25(金)19:00~21:00
平日13時~19時、土日13時~20時
表参道ROJI
〒107-0062 東京都港区南青山3-18-4-103
TEL 03-6804-1714

2018.06.01(金)~06.07日(木)
オープニングレセプション 06.01(金)18:00~20:00
11時~20時
SPACE
〒040-061 東京都 中央区銀座7-7-4 B1
TEL 03-6264-6569

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト

Published on

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