オランダのKing’s Day(キングスデー)を知っているだろうか? 現国王であるウィレム=アレクサンダー王の誕生日である4月27日のことを指し、国を挙げて盛大にお祝いする日である。
アレクサンダー王といえば、2013年の国王即位式でトランスの世界的DJ・アーミン・ヴァン・ブーレンがプレイし、その横で踊ったことが記憶に新しいが、ダンスミュージック産業が世界トップクラスのオランダの国王のバースデーとは一体どれほどクレイジーなのだろうか? 首都アムステルダムから現地レポートをお届けしたい。
ダンスミュージック大国オランダの首都アムステルダムのキングスデーが自由過ぎる
国王の誕生日を国民全員で祝うなんてやっぱりオランダはステキな国だなあと思っていたら、豪華な式典やお祝いパレードが催されるわけではなく、国民が街中で“好きなことをして良い日”というから驚きである。
誤解がないように言っておくが、当然のことながら犯罪を犯して良いわけではもちろんない。“常識の範囲で自分がやりたいことを自由にやって良い日”ということである。ちなみに、2013年までは女王が統治していたため“Queen’s Day(クイーンズ・デー)”とされており、アレクサンダー王の祖母に当たるユリアナ女王の誕生日である4月30日が祝日となっていた。
キングスデーで最も有名なのは、ナショナルカラーであるオレンジの”何か”を身に付けること。なぜオレンジなのかというと、初代君主のオラニエ公ウィレム1世の正式名である”Willem Frederik Prins van Oranje-Nassau”が起源。Oranje(オラニエ)はオレンジという意味であり、代々受け継がれてきた背景を持つ。アレクサンダー国王の正式名も”Willem-Alexander Claus George Ferdinand van Oranje-Nassau”と長くてとても覚えられないが、Oranje=オレンジが入っている。
アムステルダムのキングスデーといえば、ボートにサウンドシステムを積み込んで爆音パーティーをしながら運河を渡るのが名物となっているが、そのボート数と乗客数は毎年すごいことになっている。その様子を映した動画がYouTubeにも多数アップされているが、個人的には2007年頃のビキニで踊り狂うレイブ感満載の時代に是非とも参加してみたかった。近年は気温が低いせいか露出度も低く、学生がメインになっており真のパーティーピープルによるボートパーティーといった様子はあまり感じられず残念な点でもあった。
Queensday in Amsterdam(2007年のクイーンズデーの様子)
むしろ運河沿いの通りごとに設置されたステージやDJブースの方が本格的で、テクノ、ハウス、フォークロック、ジャズ、レゲエなど、ブロックごと違うジャンルに分かれていておもしろかった。他にもフリーマーケットや飲食出店、子供たちが一生懸命演奏したり、売り子に徹するなどかわいらしい姿で街中の路上は埋め尽くされ、ストリートは歩けないほどの人集りになっていた。同じくパーティーが大好物なベルリンのメーデーにも似ているが、キングスデーは前々日からクラブイベントがスタートし、クラブもバーも大盛況。フリーマーケットも飲食ブースも路上パフォーマンスも全て個人主催なため、どこの許可も必要なく誰でも自由に出店出来るのだ。警備隊が張り付いていることもなく、どんなコスプレに扮そうが、道端で寝転がろうが、若者たちが風船の二酸化炭素を吸ってぶっ飛ぶ儀式が行われてようが誰も気にしない。
クレイジー・シティー世界選手権を行ったら確実に上位にランクインしてくるであろうアムステルダムのキングスデーは一年で最も盛大でハッピーな日であるとともに想像以上に楽しませてもらった。来年もまた参加出来るとしたら音好きによる音好きのためのボートパーティーを是非とも主催してみたい。
ここからは、個性あふれるダッチオレンジファッションとキングスデー参加者たちのスナップをお届けしたい。
Photo by Atsushi Harada、Kana Miyazawa