RACHEL ちなみに素朴な疑問なのですが、忙しいですか?

奥村さん:そうですね(笑)。でも、結局、レイチェルさんとかもそうだと思うんですけど、一つのものを作るっていのは際限がなくってずっとやってられる状態になると思うんですよね。宣伝もそれと一緒でやろうと思ったらずっとやり続けることができちゃうので、自分の中でコントロールしながら仕事をしていかないと、廃人になっちゃう(笑)。

Qetic編集部 休みの日はどういう風に過ごしているんですか?

奥村さん 映画観たいんですよ。映画が好きなんですよ。

【対談】話題の映画『スイス・アーミー・マン』はどこかおかしい!?chelmico・MC RACHELが宣伝プロデューサーに突撃! swiss-army-man-9-700x467

RACHEL 本当に映画が好きで今の職業についたんですね。どうやったらなれるんですか?

奥村さん そうですね〜。

RACHEL 普通に就活?

Qetic編集部 (笑)。

奥村さん 僕は就活では入れなかったんですよね。でもその映画の宣伝を教えてる専門学校みたいなのがいくつかあって。

RACHEL へー! どこにあるんですか?

奥村さん 早稲田にあるんですよ。

RACHEL 早稲田にあるんだ(笑)!

奥村さん そこに。加勢もそうなんですよね。

加勢さん ワークショップがあって。

奥村さん ニューシネマ・ワークショップっていう学校じゃないんですけど、宣伝とか映画を作ることとかを教えてる学校があるんですよ。

RACHEL どのくらい通うんですか?

奥村さん それは1年ぐらいです

加勢さん ベーシックが半年、アドバンスが半年っていう。

RACHEL 最初に基礎を学んでから、応用を……。

奥村さん そうそう。そこで学んでから、求人の紹介とかあったりして。実際にはオンラインとかで募集したりはしてるんですけど、ニッチな感じなので、本当にやりたい人じゃないとなかなか見つからないんですよ。

RACHEL すごい能動的にやらないとね。

奥村さん そうなんですよ。

Qetic編集部 それでSkipさんの求人広告が出てて……。

奥村さん はい。応募して、その時は男手がいなかったんで、採用ということに(笑)。

RACHEL (笑)。

奥村さんについて(宣伝プロデューサーとして)

【対談】話題の映画『スイス・アーミー・マン』はどこかおかしい!?chelmico・MC RACHELが宣伝プロデューサーに突撃! swiss-army-man-24-700x467

Qetic編集部 元バンドマンとかじゃないですよね?(奥村さんはシド・ヴィシャスの顔が大きくプリントされたTシャツを着用)

奥村さん 全然(笑)。

RACHEL 違うんですか(笑)。

奥村さん 全く音楽できないですね(笑)。しかも高円寺に住んでるんですよ(笑)。

Qetic編集部 バンドマンっぽいですね!(笑)。

奥村さん 違うんですよ(笑)。かたや、加勢は阿佐ヶ谷に住んでるんですよね。

Qetic編集部 近い(笑)。

奥村さん 近いんですけど、どっちも全く音楽はやってなくて。

Qetic編集部 それでも映画が好きでお二人とも配給会社に入って。

奥村さん そうですね。配給と宣伝会社っていうふうに分かれてて、うちは宣伝会社の方になるんです。なので、予算を配給会社から「これじゃあいくらの予算で宣伝してください」って言われるんですね。その金額の中で、どこにお金を使っていこうと。そういうやりとりをしていくという仕事なんですね。

RACHEL 難しそう。入ってどれくらい経つんですか?

奥村さん 僕はでも、10年くらいです。宣伝プロデューサーをやり始めたのは4〜5年くらい前です。それまではパブリシティという仕事で。パブリシティは、宣伝プロデューサーが作品のコンセプトを決めたらそれにならって媒体の人に売り込みに行くチームです。こういう切り口があるので紹介してくださいとか。それで世の中に出して行く人たち。例えば王様のブランチの映画紹介とか。あれも番組のプロデューサーのところに行って、「この作品めっちゃ面白いんで!」って映画を観させて、LiLiCoさんにも映画を観てもらって……。

RACHEL LiLiCoさん! だって結局は色々ある中で目的は売る、広めるってことですもんね。

奥村さん そうなんですよ。宣伝のチームは宣伝プロデューサーとパブリシティチームで一丸となって、この作品を世に出して行くぞという。そういう下積みを経てきました。

RACHEL みんなでやってるのに、1人だけ全然好きじゃねぇわっていうやついませんか???

奥村さん ははははは!

Qetic編集部 いると思う! 絶対いる!

奥村さん いますよ。いますいます。

Qetic編集部 「俺もうこれいいわ。早く次のやつ行こうぜ」みたいな。

奥村さん そういうやつはお仕置きですね。

Qetic編集部 ええーーーー!

RACHEL お仕置きされるのーー!

奥村さん お仕置きですよ。お仕事としてこの作品をいただいていて、ビジネスとして日本で成功するという想いを持って買ってきた人たちがいるので、そこには僕たちはしっかりパフォーマンスをしていかなきゃいけません。

RACHEL さすが……。

奥村さん そうなんですよ。だから例えどんなにつまらない映画でも、なんか良い部分を掘り出すっていう作業をしなきゃ(笑)。そうしないと仕事にならない。

RACHEL 恋愛みたいな感じですね(笑)。嫌なところを見つけるんじゃなくて、良いところを見つけて行く。

奥村さん そうです。

RACHEL きっと保育士とか向いてると思う。

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奥村さん もしかしたらそうですね(笑)。この子、ここはダメだけど、ここは良いからって。

RACHEL 伸ばして行こう〜。

奥村さん まさにその通りですね。伸ばしていく。

Qetic編集部 じゃあ、「やっぱりこの映画微妙だよな」って思ってることもいっぱいあるんですよね。

奥村さん 僕の好みとはもちろん合わない作品があったりしますね。

RACHEL それはどれですか(笑)?

Qetic編集部 僕もそこが気になりました(笑)。本当に、個人的な話で良いので(笑)。

————以下、盛り上がったものの割愛します。

RACHEL じゃあ自分がやったとか関係なしにこれまで手掛けて単純に好きだった作品とかはありますか?

奥村さん 僕が好きな映画は……。えっと、難しいところだなぁ……。

Qetic編集部 難しいですよね(笑)。何本でも!

『キック・アス』

奥村さん 僕がやって一番面白かったのは『キック・アス』っていう映画です。

映画『キック・アス』予告編

RACHEL ああ!! そうなんだーー!! 面白いよねぇ、あれねぇ。

Qetic編集部 『キック・アス』は奥村さんだったんですね!

奥村さん 『キック・アス』は本当に超インディペンデントじゃないですか。 スーパーヒーローだけど、誰も知らない。「『キック・アス』ってなんだよ!」ってところから、日本で宣伝が始まって……。

RACHEL 既存のヒーローだと思ってました! こういうの海外でやってんだって(笑)。

奥村さん なんかぽいなっていう。バッドマンぽいとか。そういうキャラクターがいっぱいいて。ただ日本では知名度はほぼなくて、でも海外ではバカあたりしてて、日本でも評判は聞こえていると。それはもう自分ではやりたいと思ってて、配給会社探したら是非どうぞと言われて。でも作品の力もすごいあったんですけど、当時はSNSがすごい発達してきた時代で、特にTwitterが盛り上がっていて、その時に全員コスプレしようってなり、僕はキック・アスの緑色のコスチューム着て中央線乗ったりして。

RACHEL えーーーー!! そうなんだ(笑)。広めるために! 周りからしたらただのヤベぇやつだ! 「いるんですけど笑」みたいな感じで(笑)。

Qetic編集部 それでツイートされて……。

奥村さん 「今中央線乗ってます」みたいな感じでやったりとか。

Qetic編集部 そういうことも自ら!

RACHEL 頭良い〜。すごい良いプランだね。

奥村さん 電車乗った瞬間に、こう、空間ができるんですよ。みんなサササッて(笑)。

RACHEL 私も絶対車両移動する(笑)。

『ストレイト・アウタ・コンプトン』

奥村さん ただあの映画はすごい面白かったから。あとレイチェルさん観てるかわからないですけど、『ストレイト・アウタ・コンプトン』って映画も僕がやりました。

映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』予告編

RACHEL えええ!!! もちろん観たよ!! 観るに決まってんじゃ〜ん! マミ(chelmico・MC Mamico)ちゃんと観に行って、超感動して、そのあとアイス・キューブ(Ice Cube:N.W.A.の主要メンバー)のCD借りた(笑)。

奥村さん 僕はヒップホップはほぼ知らない人だったんですよ。エミネムしか聴いたことないですよって言って。でも配給会社の人に「知らなくていいです。映画として売ってください。」って言われて。映画を観たら、ドラマもすごいじゃないですか。

RACHEL タワレコで『ストレイト・アウタ・コンプトン』の画面で記念写真撮りましたよ。

奥村さん あれも僕が発注したんですよ。

RACHEL 上にイージー・イーがいるやつ。やりましたよ(笑)。

奥村さん あー! ほんとですか(笑)。

Qetic編集部 そういうのも発注するんですね。

奥村さん お金をそこに出して、タワレコの前だったらみんな見てくれるからって。

RACHEL タワレコなら音楽と近いからね。

奥村さん 全然知らないヒップホップの世界で、しかもN.W.A.ってみんなが神と崇めるというか、子孫みたいな感じじゃないですか。それを全然知らない人がやってるっていう面白さというか。

RACHEL でもそういうのって知らない人の方が多いじゃないですか。観る人って。だからその方がうまくいたりもしますよね。知ってる人がやると、知ってる人にしか届かなかったり。

奥村さん そうなんですよ。僕の知らない部分は他の人が補完してくれるんで。プロがいるじゃないですか。ラップのプロが。