Qetic編集部 そもそも今回のこの対談は、僕も以前から宣伝を色々見てて、「これは最後泣けるやつだろうなー良さそうー」って妄想してて、レイチェルとも話をしてたら、レイチェルが「いやいやいや、いい映画なんだけど、もっとこう、想像よりもすごいよ」と。どういうことなんだと思って、話聞いてたら、レイチェルが聞きたいことが100個あると(笑)。

奥村さん (笑)。

Qetic編集部 それで僕もレイチェルに観た方が良いって言われて、拝見させていただいたんですけど、これがまた本当にノッケからびっくりの連続で(笑)。 しかも結構容赦無くいきなり死体がオナラしまくったと思ったら……みたいな(笑)。

【対談】話題の映画『スイス・アーミー・マン』はどこかおかしい!?chelmico・MC RACHELが宣伝プロデューサーに突撃! swiss4-700x466
©2016 Ironworks Productions, LLC.

全員 ははははは!

RACHEL ちげえじゃんってね! こんな優しそうな映画だったのに! フライヤーと全然ちげえ
じゃん!!!!って(笑)!

Qetic編集部 でも、観終わった後にしばらく放心状態で、資料見たら嘘とかではないんだけど……。

RACHEL 本当なんだよ! 事実ではあるんだよ! 何がダメなのこれ。

全員 ははははは!

RACHEL ダメっていうか、何が違かったんだって。

奥村さん お二人はどういうところが面白いと思ったのか聞きたいです。

映画『スイス・アーミー・マン』の感想

映画『スイス・アーミー・マン』特別映像[ダニエル・ラドクリフ&ポール・ダノ インタビュー]

RACHEL 私はこういう映画が個人的に好きなんですよ。基本的にバカ映画というか。でもあんまりそういうところが目立ってなくて、このシーンとか(パンフレットを見ながら)あるじゃないですか、食卓のシーンとかバスに揺られてるシーンとか、あの辺の印象がすごく強くて。すっごい嫌な夢を三本立てくらいで見てきた時のびっしょり感というか(笑)。ファァって(笑)。

奥村さん それはギャップがそうさせたってこと?

RACHEL 元々、あんまり予告編とかを見ないで映画を観るんですよ。先入観が欲しくないから。でもこれだけは一緒に同封されてたから見たんですね。「爽やか〜〜」みたいな。それで本編も観たら違かったから。こう、「いきたいのにいけない」みたいな夢見たいなの、あるじゃないですか(笑)。追いかけられる夢みたいな感じだったから。デヴィッド・リンチとかが好きなので、そういうやつは好きなんですよ。意外とそっち側だったみたいなのが。予期せぬという。

Qetic編集部 最初のおならが結構、最初からくるので、これはメッセージだと思ったんですよ。この映画は「俺らはこれだから」って言われてるんだと思って、タイトルがパーン出てきて「これ絶対面白いな」って思ったんですけど……。そのあとも全く一筋縄じゃいかないっていうか。

RACHEL いってくれないんだよね。こうくるだろうと思いきゃ、全然超えてくるみたいな。

Qetic編集部 ずっと転がされっぱなしなのがすごいなって思って。ブラックジョークでずっと行くのかなと思いきやふと切ない話になったり。かといって、ふと単純にエグいっていうか。

RACHEL グロいみたいな。

Qetic編集部 そのジェットコースター感がすごいなと思って。

奥村さん 揺さぶられるのはすごいですよね。

Qetic編集部 これは確かに、宣伝するってなった時にどう、配給の内容とかがわからないのもあるんですけど、皆さんで観て「この映画を配給するぞ」ってなって、どういう風に感じ取って決まっていったのかが気になりますね。どうにでもできそうな。

RACHEL どの部分を切り取るのかで全然変わりそうだし。

Qetic編集部 そういうのを知りたいねって話してたんですよ。

どうやって宣伝したの?

奥村さん その作品の強さを洗い出しするんですよ。なので、その作品を見た上で、ストロング・ポイントとウィーク・ポイントの二つ分けて出す。観た後のみんなの感想とかもそうなんですけど、あとは概要というか外枠の部分。例えばこれ受賞してますよねとか、ハリーポッターのダニエル・ラドクリフが出てますよと。この辺がストロング・ポイントになっているっていう外枠の部分と、内容を見た時にどこが強いのかっていうのを分析して、打ち出しをして行くという感じなんです。

この映画では、まず画が何よりも強い。死体でジェットスキーするって映画は今までに絶対にない映画なんですよ。っていう部分もありつつも、これは意外とウィーク・ポイントにもなりうるんですよ。要するに観客の幅がぐっと減ると。こういうことを考えた時に、この映画を観終わった時に僕は勿体無いと思ったんですね。それで終わるのが。ただのガジェットムービーで終わるのは絶対にもったいないと思ってて。なので、この画プラス(フライヤーを差しながら)こことここの部分でドラマ感を出すっていうことに、考えを持っていったっていう感じなんですよ。なので、入り口としては死体でジェットスキーなんですけど、観終わった後は「あれ、孤独な男が生きることを見つける映画じゃん」っていうちょっと心にグッとくる映画だった、というポイントを出したいなと。

入り口 → 死体でジェットスキー
出口 → 心にグッとくる

その二つの柱をがっちゃんこしたのが、このクリエイティブになってるっていう状態なんですね。

RACHEL 嘘つき!!!

全員 ははははは!

奥村さん レイチェルさんが嘘だって言ってるのは、どこの部分なのかなって……(笑)。

RACHEL なんかね……。嘘つきっていうか。。。ほんとなんだよな! それがまたちょっとな……。「世界が絶賛した」って、これ本当じゃん。「奇想天外な」って、これも本当じゃん。「青春」って、本当じゃん。「サバイバルストーリー」って、これもね……。そうじゃんって(笑)。でも違うの!!!!!だって、記事(レイチェルの全然ファイトクラブ)にもちょっと書いたんですけど、本当に付き合いたてのカップルが間違えて、「あ、ハリーポッターの人出てるよ。2人で観るには良さそう」みたいな感じなって、観たら間違うじゃないですか。

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Qetic編集部 (笑)。

RACHEL その後の空気どうするんですかっていうのは、ちょっと思いました。こんな……。

奥村さん 可愛いじゃないですか。可愛い!

RACHEL ふざけてる(笑)! 可愛いんだけど、めちゃくちゃ気持ち悪かったじゃないですか(笑)。これ何やってんのさって(笑)。

奥村さん そうですね。でもこれって、見方として、レイチェルさんはこの2人はなんだと思いました? どういった関係性だと思いました?

RACHEL 友情が芽生えているというか……。

奥村さん ラブの方向も若干入っててという話だったんですけど……。

RACHEL 最後の方は、かけがえのない存在みたいになってましたもんね。

奥村さん そうですね。でもこれって、そもそもこの2人が鏡になってるってことに気づきました?

RACHEL あー、そうですね!

奥村さん ハンクはメニーと同じ状態になってて、メニーは完全に死んでる死体、ハンクは外と遮断されて生きてきた男なので生きる意味を知らない、ほぼ死んだも同然の2人が出会って生きる意味を探して行くという話になっていて、そんな中で自分の受けていた幼少期のこととが全部ここに反映されてきてる。そういう話の中、二人が鏡であるという部分と、後はハンクが内向的な人間であるというところから、もしかしたらこれはもう無人島から始まっていない。見た目はそうなっているけども、本当に家の周りでやってただけかもしれない。ハンクの頭の中で、全部作ってる。だからこれも死体じゃないかもしれない。そういう見方が最終的にできる。だから本当にいろんな角度から見ることができるんですよ。だから、僕が打ち出してることも嘘ではない。

RACHEL 嘘ではないですよ。

奥村さん (笑)。

RACHEL それはそうなんですよ。

映画『スイス・アーミー・マン』特別映像[ACTORS]

Qetic編集部 この物語をどう捉えるかはこっち次第っていうような余白もすごいなと思ったんですよ。いっぱい描写してるけど、最終的な落とし所は本当に人によってどうにでもできるなと。屁で始まって、屁で終わったなのに。

RACHEL 屁のことあんまりバレてないじゃんだって(笑)。

奥村さん (笑)。それはね、隠してる。隠してるというか、宣伝のウィーク・ポイントにしてたんですよ。おならは。

RACHEL 屁がウィークポイント(笑)。

Qetic編集部 CMでぶくぶくやっても、よし観に行こうとはなりづらいですもんね(笑)。

RACHEL いろんな人に見て欲しいから、屁がウィーク・ポイント(笑)。

奥村さん ウィーク・ポイントとしてはいっぱい入ってて。おなら、死体……。

RACHEL 世間の人がオエってなるような。

Qetic編集部 ダニエルの動き周りは全部ウィーク・ポイントっぽそうですね。

RACHEL 基本的に気持ち悪いからね。汚れNGの人とかもいるからね。お水とかね出てきてね。

奥村さん そこをオブラートに包んで。結構下ネタも満載。配給会社の女性の方も、一箇所だけ、どうしても許せないっていうところがあったんですよ。下半身が○○になるっていう、あそこだけはちょっとダメだと。

RACHEL 書いてないよね(笑)。

Qetic編集部 あれ確かに、根拠なかったもんね。急に。

RACHEL 急にね(笑)。

奥村さん あっちに帰れるんだって(笑)。

RACHEL 納得しちゃう(笑)。あれ面白かったな(笑)。

奥村さん ダメだった(笑)。

RACHEL あれが一番ポップだったと思ったけどね。

Qetic編集部 あんなにポップな○○は見たことない。

RACHEL 超ポップじゃんあのシーン(笑)。屁とかゲロっぽい水よりは、ポップですよね。あれはダメなんだ(笑)。

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奥村さん 下品で、カルト的にしないような売り方をしないと、お客さんの層が狭まっちゃう。なので、狭まらないように、広いお客さんが見た中で、この映画が確かにダメだっていう人は絶対いると思うんですよ。でもそれはダメだって言う権利はもちろんあるじゃないですか。お金払って観にきてもらってるんで。それはそのまま作品の評価として受け取るし……。

RACHEL なるほど。

奥村さん ただ、幅が広まった中で、観た人ですごい気にいる人も中にはいるんですよ。

RACHEL 私もすごい好きです。

奥村さん それをちゃんと、そういう人に届けてあげるっていうクリエイティブ作りっていうのを反映すると。

RACHEL じゃあ、宣伝としては100点満点っていうことですね。

奥村さん 僕が100点とは自分では言えないですけど(笑)。

RACHEL でも入り口はめちゃくちゃ広くなってると思います。

奥村さん 幅は広くなってますね。売り方としては、死体の機能全開という感じの、いわゆるドラえもんみたいな売り方もできるんです。でもそれは結構男性的な売り方になっちゃうので。そんな機能がついてる死体で遊ぶ映画みたいな、そういう風に見えちゃうと、お客さん、特に女性の層がさっと引いてしまうのが見て取れちゃうので……。

RACHEL 確かにねぇ。あるある。

奥村さん 実際はこの映画、すごく映像も写真も綺麗で、実際女性もちゃんと取りに行くよってことで作ったんですよね。嘘は、ついてないぞ(笑)。

RACHEL でも、騙されるよ〜!! 女は〜(笑)。これだったら「ウゥゥ! 楽しそう!」って観に行っちゃうよ(笑)。

奥村さん でもこれ「ウゥゥ!」ってなるのはレイチェルさんしかりですけど、ある程度耐性がある人だと思うんですよね。

Qetic編集部 うん〜〜。

RACHEL 「えっ」ってなっちゃうのかな。屁だしってなっちゃのかな。もう分かんない(笑)。

Qetic編集部 屁で彼らが突き進んでるとは思わないよね。

RACHEL 一瞬泳いでると思うよね。

奥村さん このビジュアル(フライヤー)とかも何パターンか……。

カメラマン・横山マサト え、これ屁で進んでんの!!!!

RACHEL そうだよ! 死体の腐敗ガスでジェット噴射(笑)。「漏れ続けると飛行も可能」って。可能じゃないですよ(笑)。

Qetic編集部 撮影の時にこれ本当にやってるらしいよ。屁じゃなくて。ラドクリフが。

奥村さん 結構ちゃんと、手作りでやってるんですよ。

RACHEL ウルトラハードじゃん。

奥村さん すごいハード。

RACHEL 頑張ったね。

Qetic編集部 これはでも、賛否両論というか。

RACHEL これ実際どうなんですか。公開されてるから、評判は?

奥村さん 評判はですね、ポジティブが8でネガティブが2ぐらい

RACHEL じゃあ良いじゃないですか!

奥村さん 感想はすごくいいです。でもやっぱり、食らっちゃう人もいて。

RACHEL 私は結構食らっちゃいました。好きなんだけど、「うわぁ」みたいな。

奥村さん あと結構これ、孤独な男の話にどうしてもなっちゃうので、そういう男の子たちがまざまざと現実を見せつけられちゃうっていう風な見方もされる部分があって。

RACHEL 胸につーんとくるシーンもいっぱいありますもんね。

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©2016 Ironworks Productions, LLC.

奥村さん どちらかというと切なくなちゃうというか。自分を投影しちゃう人も中にはいるんです。

RACHEL その気持ちは分かるなぁ。

奥村さん でもそれはすごい良い見方というか。映画に没入してくれているので。

RACHEL 良いことですよね。私、観てる時さ、本当にこんなグロいというか汚い感じと思わなかったからさ、心の中の外タレが発動して独り言で「Gross!」って言っちゃったよ。

奥村さん 心の中の外タレが(笑)。

Qetic編集部 観る前は意外とレイチェルも女の子なんだなと思ってたんですけど、観てみたら、あ、こりゃすごいわと思いました(笑)。

RACHEL Grossですよ(笑)。

奥村さん レイチェルさん、ホラー映画はあんまり観ない感じですか?

RACHEL 好きです! 

奥村さん じゃあ、グロ耐性はあるということで。

RACHEL あまりにも……、ウケちゃうんだよな。

奥村さん 笑っちゃう方!

RACHEL 「ギャ〜ハハ〜〜!!」みたいな(笑)。

Qetic編集部 (『スイス・アーミー・マン』は)だいぶ特殊な角度の……。

RACHEL グロさがねぇ。

Qetic編集部 妙にリアリティがあるというか。

奥村さん そうですね。今まで死体が主役って映画はほぼないですよね。あってもゾンビとか、幽霊とか、非人間的なものが出てくるものはあるんですよ。完全なる死体がほぼ全編出てくるものはない。

RACHEL (パンフレットを見ながら)「会話、意志を持って会話が可能。」じゃないですよ(笑)。いや〜。

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