貧しさの幸せが、豊かさの幸せを教えてくれる
清野 さっき話した貧しいから幸せは僕たちの過去のこと。昔は映画ばかり見た生活だったけど、今三人とも別な生活で、選択肢が増えているから幸せだと思うけど。
有坂 結果、もしその時お金持っていたとしても、他のものに興味持たないくらい気持ちが映画に向かってて、それが行くとこまでいった。今、初めて地に足がついて、本当に周りが見えることになったと思う。誰かと飲みに行くとか、ごく当たり前のことが当たり前のようにできるようになった。旅行に行く楽しさや、おいしいものを食べるとか、その楽しみが30代の半ばくらいから分かるようになってきた。
清野 20代の時、映画のことしか考えてなかったから、大学の飲み会とか全部断ってて。その時の幸せが映画観ることだったから。今それが変わって、映画を多く観なくなったけど、ほかの物が見えるようになってきている。こういうお店に行きたいとか、美味しいもの食べたいとか、友達と他愛のない会話したりとか、そういうことが面白くなってきた。お金ができたこともあるし、他のものが見えてきた幸せ。視野が広がったのかな。
ポール お金が人を豊かにすると。
清野 それは正しいと思うけど、当時の貧しさから頑張った経験や幸せが、他のものの面白さや幸せを教えてくれるように思う。
ポール なるほど
有坂 前やらなかったことをしていくと、それも今の仕事に全部繋がっているんだよね。軸の映画は変わらないわけ。それと全く関係ないものとして、おいしいものを食べたり、高級ホテルに泊まったり、そういう体験が全て繋がっていく。だから、買ったり食べたりしたものがすべて自分の身になっていく。そこに幸せを感じる。清野さんはそこらへんどう?
清野 今ある程度、美味しいもの食べたりすることで、いろんなものが見えるようになってきた。それが、映画を書く仕事に繋がっている。映画の見方もより豊かになったと思う。映画を否定することはなくなって、全部肯定できるようになった。どんなにダメでも頑張れって応援したい! ポールさんはどうなの? 奨学金の話があったけど、貧しかったけど、幸せだった。今はどうなの?
ノクスとキュリオを行ったり来たり
ポール 今も幸せじゃないですよ! いっつも不幸ですよ(笑)! いっつも辛いっすよ! 瞬間では楽しいとか、人と会って嬉しいとか、美味しいなとか当然思うけど。性格の問題かもしれないけど、基本生きているの辛いっすね。
清野 大学の時と比べて映画観なくなったでしょ。その時幸せだった映画を観ることが、何に変わったの? 昔はこの映画を、「今」観ないとっていう焦燥感があったけど、今そういう焦燥感がないってことは、心の中は豊かになっているってことなんじゃない。心持ちは。
ポール 「観る」っていう所から「作る」っていう所に変わって。だから、作るために、もっと面白いもの作りたいって思うし、撮ってない時は「なんで撮れないんだよー、ばかやろー」って思うし。映画観ている時も「あーすげー面白いなー。果たしてこれが俺にできるのかなー」って焦燥感もあるし。だからそんな感じですよ。
有坂 生きていて辛いってどういうことなの?
ポール 足りない感じっていうか
清野 ノクスとキュリオを行ったり来たり笑
3人 (笑)。
清野 作品撮っている時はノクスだけど、撮ってない時はキュリオかな。
3人 (笑)。
次ページ:ノクスとキュリオどちらを選ぶ?