2016年

▼80KIDZが2016年にリリースした作品
『5』(2016.03.23)

▼80KIDZが選ぶ2016年を象徴する自分たちの楽曲
ALI&:J.M.F feat Maika Loubté
JUN:Doubt feat. OBKR

▼80KIDZが選ぶ2017年を象徴する他のアーティストの楽曲
ALI&:Terror Jr / Say Yo
JUN:Kaytranada / Track Uno

——2016年は、2015年に出した“Baby”、“Gone”も収録されたアルバム『5』をリリースしています。そういう意味では、問題意識は前年と繋がっていると考えていいのでしょうか?

ALI& そうですね。でも、出しているサウンドは、僕としては海外のトレンドをめっちゃ入れました。“J.M.F”は僕が作ったんですけど、かなり意識しています。“In My Place”もポップ感を強くしようと思ったんで、めっちゃ意識しましたね。

——具体的にどの辺りのサウンドを意識したんですか?

ALI& 前年の2015年を象徴する曲として挙げたチャーチズ(CHVRCHES)っぽさは“J.M.F”に入れたつもりです。でも、(“J.M.F”にフィーチャリングされている)マイカ・ルブテとは、「(2016年を象徴する曲としてALI&が選んでいる)テラー・ジュニア(Terror Jr)みたいな曲を作りたいね」って話していたんで、声ネタ系の感じも入れています。使っているシンセの音色もそういう感じにしましたね。トロピカル・ハウスでも使っていそうだけど、奇麗すぎない感じというか。

——チャーチズは具体的にどんなところに魅力を感じます?

ALI& ドンズバなんですよ。(バンドのシンガーである)ローレン・メイベリー(Lauren Mayberry)の顔が(笑)。

——そこですか(笑)。

ALI&
 いやいや、サウンドもすごくいいと思っていて。少し懐かしいところもあるじゃないですか。バンドの男二人は僕と同世代だと思うんです。だからか、共感できる音のチョイスが多いんですよね。ムーグとか、結構使っていますし。インディ的なやり方をしているのに、ちゃんとキャッチーなところに収めているのがいいですね。

CHVRCHES – Bury It ft. Hayley Williams

——JUNくんは、『5』ではどういったサウンドを狙っていましたか?

JUN 僕は、あんまりトレンドは意識していなかったですね。

ALI& いやー、“Doubt”とかトレンディじゃん。

JUN でも、僕としてはALI&くんが作るようなものは作れないから、エレクトロっぽいものを作っていたつもりです。

——実際、アルバムを聴いた印象としては、エレクトロ的なサウンドも復活したな、というのはありましたね。そういった意味でも振り切ったところを感じました。

JUN 一周してやりたくなったのかもしれないですね。

——あと、もうひとつ感じたのは、全般的にソングライティングのアルバムだなということです。アルバム全体で、ここまでソングライティングに重きを置いている作品はなかったんじゃないでしょうか。

ALI&
 ああー、そうですね。本当にそれです。この頃はプロデュースとか楽曲提供とか、裏方の仕事も結構やっていて。歌モノをすごく作っていたんですよ。それがあって、歌を作るのが上手くなっていたっていうのがあるかもしれないです。曲を作ろうとすると、自然と歌が連想されるようになったというか。

——80KIDZはトラックメイカーとしてスタートしたじゃないですか。でも、特に『5』では、プロデュースとソングライティングを両立させているわけですよね。そのようなスタイルにおいて、ロールモデルとなる存在はいたんですか?

ALI& 以前はソウルワックス(Soulwax)とかを意識していましたけど、この時点ではまったくないですね。むしろ、サブスクリプションで曲単位で聴いて、「これ、いいな」ってなっているので。

——アーティスト単位というより、曲単位でインスパイアされることの方が多いと。

ALI& そうですね。この曲この曲っていうつまみ方をしていると思います。それで、自分なりの消化の仕方をして。初期の頃はソウルワックスとか、ジャスティスとか、〈キツネ〉のアーティストとか、いろいろいたんですけど。クラブ・ミュージックも、どディープになっていましたし。

JUN 一方ではEDMもあって。対極化しましたよね。

——ディープなクラブ・ミュージックというのは、具体的にどの辺りの流れを指しているのでしょうか?

ALI& うーん、block FMで番組をやらせていただいていても、この頃は僕とJUNくんの間でも、かける曲がバラバラだったんですよ。それくらい、これっていう流れがなかった時期だと思います。

——2013年頃はディスクロージャー以降の大きな流れがクラブ・シーンに感じられたけれど、また細分化が進んでいるように感じられる時期だったと。だからこそ、ロールモデルを挙げるのが余計に難しい。

ALI& そうですね。

——もしかしたらそういった時勢も関係あるのかもしれないですけど、敢えて少し厳しい見方も提示させてください。『5』は、迷いが感じられるアルバムでもあったと思うんですよ。日本国内のまだ届いていない層に語りかけるんだという明確な目的意識はあったにしても、そこで日本のアーティストをフィーチャリングするという手法が正解なのか、確信が持てないまま作っているところがあったんじゃないかと。

JUN 個人的には、N.O.R.Kの頃から大好きだったOBKRくんと“Doubt”っていう曲を作れたのはすごくよかったと思っています。彼のことは本当に天才だと思っているので。ただ、今振り返ると、全体的にやり切れていない部分もあったかもしれません。作りたいもののイメージが固まりきらないまま作っていたっていうか。

ALI& まあ、それもあるかもね。もちろん、KenKenさんやHAPPYのファンからの好意的なリアクションがあって、そこに対する手応えはありました。ただ、フィーチャリングってどうなんだろう? っていう部分に答えが出せていないまま、アルバムを出しているんですよ。じゃあ、出すなよ、って話なんですが(笑)。

JUN でも、形にしたいっていう気持ちはありましたから。それが今後もっといいものを作りたいっていう気持ちに繋がりますし。

——そう思います。

ALI& あと、このアルバムが一番がっつり二人で制作をわけましたね。共同制作は一曲くらいしかしてないです。『FACE』は結構あったんですけど。

JUN 僕がそこまでポップなものを作りたい時期ではなかったから、作業を分け過ぎちゃって。そこでちょっと乖離があったのかも。

ALI& そうそう。お互いの曲は好きなんですけどね。今思えば、もうちょっと上手く落とし込めたのかな、っていうのは感じます。個人個人としては迷っていないんですけど。自分が作った曲に関しては、アップデートをすることで次のアルバムに繋がるような手応えを感じていますし。ただ、80KIDZとしての見せ方は迷っていたのかもしれません。

JUN 今思うと、ですけどね。当時は迷っていると思って出していませんけど(笑)。