2017年

▼80KIDZが2017年にリリースした作品
『80:XX – 05060708』(2017.05.24)

▼80KIDZが選ぶ2017年を象徴する自分たちの楽曲
ALI&:Reversed Note
JUN:Reversed Note

▼80KIDZが選ぶ2017年を象徴する他のアーティストの楽曲
ALI&:Zoology / 100°
JUN:Phoenix / J-Boy | Bruno Mars / Finesse feat. Cardi B (Remix)

——2017年は、再び『80』シリーズの年です。

JUN この年は、前年に『5』を出していますから、フル・アルバムを出すタイミングではなかったんですよ。で、『5』のツアーをしていたら、「またDJで使える曲を増やしたいよね」っていうことになって。もう年初にそういう話で決まっていて、月一ペースでリリースしていきました。

ALI& 僕の方は『80』シリーズでどういうことをやろうか、あんまり思いつかなかったんですよ。だって、この年を象徴する他のアーティストの曲として挙げたズーロジー(zoology)みたいに、歌モノばっかり聴いているんですから(笑)。

——なるほど(笑)。

ALI& もちろん作りたいっていう気持ちはあったんですけど、結構苦戦しましたね。代わりにJUNくんが上手いことやってくれました。

——この年の曲として二人が挙げている“Reversed Note”はJUNくんの曲ですよね?

JUN そうですね。

——JUNくんっぽい曲ですよね。ちょっとフレンチで、洒落た空気のあるハウス・ミュージックというか。

ALI& JUNくんっぽさ、ありますよね。“Miss Mars”も僕が触る前はこんな感じでしたから。この曲も今っぽいフレンチで。ディスクロージャーが出してもおかしくない感じ。

JUN そこまでベース寄りの感じではないけどね。

——プロダクションもかなり端正になっていると思いました。

JUN この頃になると、曲作りとかミックスも上手くなってきていると思うんですよ。80KIDZとしては荒さがなくなるのはどうなんだろう? っていうところもあるんですけど。

ALI& いいんじゃない?

——僕もそこはいいと思います。その時期その時期のよさを出す方が大事ですから。

JUN もし今、あの時の荒さを出そうとしたら、むしろ器用に粗さを作り込む感じになってしまいますね。Albeltonの5とか6(最新ヴァージョンは10)で作った方が80KIDZっぽい音になりそう(笑)。どんどん機材がよくなって、音もよくなっているので。

ALI& キックとかスネアの音選びにしても、今だったら絶対、初期みたいな音は選べないですから。何をいいと思ってこれを選んでいたんだろう?っていうレベルなんで(笑)。『WEEKEND WARRIOR』以降だったら理解できるんですよ。『THIS IS MY SHIT』もギリギリわかるかな? でも、最初の『LIFE BEGINS AT EIGHTY』とか『DISDRIVE EP』に関しては、無理ですね(笑)。

JUN 理論がない状態でやっていたので。当時のファイルを見ても、どうしてこうやっていたんだろう? っていうのが謎過ぎて(笑)。コード進行がなんでこうなっているの? って。そこがむしろ面白いんですけどね。

80KIDZ「Reversed Note」

——2017年は80KIDZとしてダンス・トラックをリリースする年でしたけど、この年を象徴する他のアーティストの曲では、ALI&くんもJUNくんも、むしろ歌モノのポップ・ソングを選んでいますね。

JUN ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)もフェニックス(Phoenix)も、90年代感が出ているかな、っていうので象徴的に選んでみました。フェニックスの“J-BOY”はむしろ80年代かもしれないですけど(笑)。クラブ・シーンで流行っているロウ・ハウスも、音的には90年代じゃないですか。そういうのも踏まえて、90年代回帰はいまだに強いかなと感じていますね。

——アンダーグラウンドからメインストリームまで、90年代というキーワードで繋がっていると。

ALI& でも、Beatportのチャート、JUNOのチャート、サブスクリプションのチャート、どれもバラバラじゃないですか。同じ曲が全然なくて。すごいことになっているなと思いますけど。

——ALI&くんとしては、むしろクラスタごとに流行がバラバラなんじゃないかと感じているということですね。矛盾しているようですけど、どちらの感覚も理解できます。

JUN 確かにチャートを見ると、偏っているなとは感じますね。リスナーが自分の使うメディアを限定しているじゃないですか。Spotifyを使う人はSpotifyだけで完結しているでしょうし、YouTubeやBeatportも、それぞれそうだと思うんですけど。僕はDJをやっているんで、Beatportをメインにして買っているんです。それがいいのか悪いのかはわからないですけど。

80KIDZデビュー10周年インタビュー。彼らと世界の音楽シーンの10年史(後編/2013〜2018年) 80kidz_ten_latter_pickup_000332750046-1200x1702

——確かにそういったセグメント化はあると思います。ただ、やっぱり海外ではSpotifyが圧倒的に強いので、大きなマーケットの流行はSpotifyと直結している気がしますね。

ALI& 僕もSpotifyしか聴いていないですから。ズーロジーもSpotifyで知ったんですよ。

——最近はSpotifyを軸とした音楽の掘り方をしているんですか?

ALI& Spotifyが日本に上陸してから、ずっとそうですね。プレイリストがものすごくあるじゃないですか。そこから探しています。めちゃくちゃ聴いていますよ。

——クラブ・ミュージックだったらBeatportの方が強いと思いますけど、Spotify中心の生活になることで、聴く音楽も変わってきませんか?

ALI& 変わりますね。まさにズーロジーみたいな歌モノを聴いているんで(笑)。Spotifyを使っていると、プレイリストを通して、普段だったら自分が触れないような音楽にも簡単にアクセスできるじゃないですか。

——そうですね。

ALI& 例えばピッチフォーク(Pitchfork)やデイズド(Dazed)みたいなメディアのプレイリストもありますけど、わざわざサイトを毎日チェックしなくても、プレイリストだと簡単に聴けるので。自分で曲を選んで聴くよりも、もっと幅広い視野で新しい音楽に触れられますよね。世界的なトレンドにフラットに触れられるから、めっちゃいいなと。

——それは大きいですよね。

ALI& ミュージシャンとしても、これはチャンスじゃないですか。何かのきっかけで、これまでとは違う人にまで届く回路が開けたっていうことですから。影響力のあるプレイリストに自分たちの曲が入ったら、大変なことになるわけですよ。で、そこからシングル単位でいい曲を続けて出していたら、どんどん輪が広がりますし。可能性がめちゃくちゃありますよね。日本もそこに早く加わっていけばいいのに、って思います。

——そう、僕も本当にそう思っています。

ALI& 海外からも、日本はCDの売上はあるけど、マーケットとして別世界なんだと思われている節があるじゃないですか。

——そうですね。アジアの中でも日本のマーケットは孤立している感じがします。以前は東南アジアではCDと言えば海賊盤が中心で、フィジカル文化が希薄だったぶん、ストリーミングが抵抗なく受け入れられているみたいで。それで若い子たちがガンガン海外の音楽を聴いているから、欧米のアーティストはそちらの方に力を入れるようになっているみたいですね。実際、海外のビッグ・アクトが日本ではなかなか興行を打てないけど、東南アジアではアリーナ、スタジアム・クラスでライブができるというケースも少なくないと聞いています。

ALI& そうそう、日本が孤立しているのはよくない傾向ですよね。日本のレーベルは若い人を青田買いして、出しまくって、っていうのをやっていますけど、それより先にやることがあるんじゃないの? っていう気がします。

80KIDZデビュー10周年インタビュー。彼らと世界の音楽シーンの10年史(後編/2013〜2018年) 80kidz_ten_latter_pickup_000332750050-1200x1702

2018年〜

——ここからは、2018年、これからの80KIDZの話をしたいと思います。先ほどのSpotifyの話を踏まえて考えると、日本が世界から置いていかれているという危機感があるのならば、やっぱり80KIDZにはもう一度世界へのドアを開いてもらいたいですね。

ALI& 僕は本当にそういう意識で曲を作ろうとしています。サブスクリプションで世界に発信したいですね。今はもう完全にそういう状況になっていますし。常に世界に向けて挑戦できるじゃないですか。そっちの方が自分たちには向いていますね。

——うん、そう思います。

ALI& サブスクリプションで聴いて、いいなと思って自分のプレイリストに入れてくれたら、そこからファンが広がっていくと思いますし。海外にも僕らのファンはいるんですけど、ここ数年は、彼らにまで届けられていなかったんですよ。だから、インストをやるにしても何にしても、一回すべてをフラットに考えていきたいなと思っています。日本とか海外とか関係なく、全世界の人に聴いてもらえるプラットフォームがあるんだから、使わない手はないですよ。むしろ、「使わせてくれ、お願いします!」っていうくらい(笑)。

——JUNくんはどうですか? 今後の80KIDZに関しては。

JUN 僕はまた別のベクトルで考えていますね。ダンス・ミュージックが軸にありながらも、幅広い層に届くアーティストっていうのは、一定の周期で出てくるものじゃないですか。

——そうですね。ダスト・パンク然り、ディスクロージャー然り。

JUN 自分たちの軸はそのスタンスだと思うので。そこを見失わずに、よりよい形の80KIDZを見せていきたいなと思っています。

ALI& そこは一緒ですよ。僕もそういう風に考えています。

JUN 僕はピュアにそういう部分を追求したいというか。このスタンスで、よりみんなに伝わるものを作っていきたいなと。

ALI& 大人だね。JUNくんの言っていることに比べたら、僕の言っていることって中2っぽいですよね(笑)。「新しいことやりたいー!」みたいな(笑)。

——(笑)でも、80KIDZはそのバランスがいいんじゃないですかね。二人はそれぞれ、今話してもらったヴィジョンを具体化する上で、どんなサウンドを打ち出していきたいというアイデアはもうあるんですか?

ALI&
 JUNくんに聴かせたデモみたいな感じなんですけど。サウンドとしてはそんなに変わらないよね?

JUN うん、たぶんポップだと思います。

ALI& キャッチーでね。“Reversed Note”はストリーミングを意識した曲ではないですけど、結果的にかなり再生回数がありますし。だから、もっと意識したらどうなるのか、逆にまったく意識しなかったらどうなるのか、っていうのを試してみたいと考えています。

JUN 僕はちょっと実験的なサウンドになるかもしれないですけど、多くの人に届いてほしいなと。シンセとか、いろいろ機材面で遊んでいるところです。

——では最後に、80KIDZとして2018年の公約をひとつずつ挙げて終わりにしましょう。

ALI& いっぱい曲を作ります。いつ出すかまではわかりませんけど。2019年はめちゃめちゃ面白くなると思うので。もうヤバいです、家が建つかもしれない(笑)。

JUN 僕はALI&くんに家を建ててもらいます(笑)。

ALI& めっちゃ山奥の家かもしれないけどね(笑)。

——(笑)とにかく、それくらい、やる気と希望に満ちているということですね。

JUN 僕はALI&くんみたいに大きな野望はないんですけど、音の探究者として——。

ALI& 昔からそうだよね。

JUN 面白い音を作りたいと思いますね。なんかALI&くんと較べると、めっちゃハードル低いみたいですけど(笑)。

80KIDZデビュー10周年インタビュー。彼らと世界の音楽シーンの10年史(後編/2013〜2018年) 80kidz_ten_latter_pickup_000332750040-1200x1702

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RELEASE INFORMATION

BEST KIDZ 2008-2017

2018.09.12(水)
80KIDZ

EVENT INFORMATION

80KIDZ 10TH ANNIVERSARY LIVE

2018.09.08(土)
OPEN 18:00
渋谷 WWWX
ADV ¥3,500/DOOR ¥4,000
チケットプレイガイド 7/7(土)~一般発売開始
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text by Yoshiharu Kobayashi