【インタビュー】若きミュージシャンたちの視点が交錯。ザ・ビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』50周年記念座談会

——もし『サージェント・ペパーズ〜』から1曲カヴァーするとしたら、皆さんなら何をチョイスします？

森山　僕がバンドでカヴァーするなら“A Day In The Life”ですね。セクションの変わり目の音響的な部分を、他のメンバーがどう解釈するか聴いてみたい。僕らもビートルズと同じように、「これは無理だろ」ってことにもどんどん挑戦していきたいと思っているので。もしくは、“She’s Leaving Home”のようなバンドアンサンブルじゃない曲を、もしodolでやったらどうなるかも試してみたいですね。実は最近、弦のカルテットをモチーフに、そこからバンドアンサンブルへ落とし込んだ楽曲をレコーディングしたんですけど、それに近いことが出来そうな気がします。

橋本　僕は大学の時にビートルズのコピーバンドをやっていたし、弾き語りでカヴァーをすることもあるんですけど、やってみると難しさが分かるんですよね。もしライブ前提でなくレコーディングするんだったら僕も“A Day In The Life”に挑戦してみたい。というのも、僕も含めてメンバー全員、理論とかわからない奴しかいないので（笑）、きっとメチャクチャいびつなカヴァーになりそうな気がするんですよね。泣きながら作りたいです（笑）。ライブ前提なら“Lovely Rita”とかやったら気分が上がりそう。

——考えてみれば、ヴォーカル＆ギターが2人、キーボードとドラムもいますし、僕もベースが弾けるので（笑）、今すぐバンドが組めそうですよね。もし架空のバンドをやるとしたら、どんな音楽になりますかね？

森山　本当ですね。男女混成ヴォーカルだしオリジナルを作ってみたい。

大井　最強じゃん！（笑）

Rei　きっと、皆さん聴いてきた音楽が違うからか、同じビートルズのアルバムについて語っても、こんなに捉え方が違うから、バンドを組んだら面白いことになりそうですよね。

——では最後に、みなさんと同じ若い世代の音楽ファンに向けて、ビートルズの魅力をお願いします。

大井　ビートルズって古参のファンが多いし、ビギナーはとっつきにくいイメージってあると思うんですけど、聞けばすごいって分かるし、実は全然とっつきにくい音楽ではないので、まずは聴いてみてほしいです。

森山　試しにこの「ディスク1」をiTunesに放り込んで、いつも聴いている音楽とシャッフルして聴いてみてほしい。そうやってフラットな耳で、お気に入りの曲を1曲見つけることから始めてみるのをオススメします。もちろんコンセプトアルバムなので、通して聴く醍醐味も味わって欲しいですよね。このアルバムの流れが、まず歓声があってライブが始まり、中盤からはどんどん内的世界に入り込んでいって、最後にまたアンコールで現実に戻ってくるっていう。それって、ライブをやらなくなって自分たちの音楽に没入していくビートルズの姿ともダブって見えてくるというか。

——ああ、なるほど。それは面白い視点ですね。

Rei　私は今回、『サージェント・ペパーズ〜』を改めて聴いて、変わることを恐れない勇気を教えてくれるバンドだなと再確認しました。これだけ初期の頃から不動の人気を築きながら、そこに安住せず新しいことをどんどんやっていく勇気ある姿勢は是非見習いたいなと思います。そして、彼らが活動した9年間に作った音楽は本当に幅が広いので、きっとみんながお気に入りの1曲を見つけられるんじゃないかなって思います。

橋本　ビートルズは色んなところで元ネタとして使われているので、知っているとさらに色んな音楽が楽しめると思います。音楽だけじゃなく、映画やアートなど他のカルチャーにも元ネタとして使われていることが結構あるし、逆にビートルズの中にも様々な要素が詰まっている。そうやって、自分の世界がどんどん広がっていく楽しさを味わってもらえたら嬉しいですね。

text by 黒田隆憲
photo by 大石隼土