れぞれに孤軍奮闘するバンドはいたものの、全体としては長らく「冬の時代」と言われていたUKのロック・シーン。けれども、その状況に、少しずつ変化が起こりつつあるようだ。14年には、テンプルズやロイヤル・ブラッド、キャットフィッシュ・アンド・ザ・ボトルメンといった新人バンドたちが、デビュー・アルバムを全英チャートのトップ10内へ。また、デビュー前の新鋭に目を向けても、ウルフ・アリスを筆頭に才能溢れる若手バンドが続々登場。徐々にではあるものの、若手ギター・バンドがまたチャートの上位に入るような状況が、確かに生まれつつある。

中でも、このリヴァプールの4人組サーカ・ウェーヴスが鳴らすのは、疾走感溢れるギター・サウンドに一度聴いたら忘れられないメロディやアンセミックなコーラスが乗った、王道中の王道と言えるもの。実際、BBCレディオ1の人気DJゼイン・ロウは早くから彼らを猛プッシュし、13年には「NME」が“今惑星で最もホットなバンド”と彼らを紹介。エネルギッシュなライヴの評判も手伝って、彼らへの注目は本国で加速度的に膨れ上がっていく。その後は14年に『サーカ・ウェーヴスEP』をリリースすると、アルバム・デビュー前にして<サマーソニック 2014>にも初出演。15年1月には単独での来日公演も行なうなど、日本でも着実に知名度を上げていった。

そうして完成させた今回のデビュー作『ヤング・チェイサーズ』には、「みんなで歌える、いい曲を作る」ということに一切の妥協なく向かっていく、市井のUKインディ・ヒーローとしての魅力がいっぱいに詰まっている。捨て曲は一切なし。ヴァセリンズやラナ・デル・レイの作品にも関わったダン・グレックによるプロダクションが彼らの持ち味であるライヴ感を丁寧に閉じ込め、ポップなメロディと疾走感でぐいぐい引っ張っていく彼ららしいキラー・チューンが、次々に飛び出してくる全13曲だ。本作はきっと、今年のUKの若手ロック・シーンの中でも、重要な作品のひとつになっていくはず。Qetic初登場となる今回は、フェスであのバンドを観ていた時だったという、バンド結成の瞬間の話から!

Circa Waves – Album Preview

Interview:Circa Waves
[Kieran Shuddall(Vo/G)、Joe Falconer(G)、Sam Rourke(B)]

――こんにちは。Qeticでは今回が初めてのインタビューです。そこでまずは、このバンド結成以前にどんなことをしていた、どんなメンバーが集まったバンドなのかを教えてもらえますか?

キエラン・シュッダル(以下、キエラン) みんな音楽をやっていたんだけど、僕は庭師と清掃員の仕事で生計を立ててたよ。

サム・ローク(以下、サム) 僕はカフェの店員だった。同じ仕事を4回ぐらいクビになったりして(笑)。

ジョー・ファルコナー(以下、ジョー) (笑)で、僕は映画館で働いていたんだ。それぞれに音楽活動を続けながらね。

――全員が会ったのは13年のフェス、<リヴァプール・サウンド・シティ>ですよね。

キエラン ああ。僕はそのフェスでステージ・マネージャーとして働いてた。当日は色んなバンドがステージに出演していてね。で、そこでジョーが当時やっていたバンドでプレイしていて、彼にビールをおごってもらったんだ。

ジョー うん。ちょうどそこに、観客として来ていたサムもやってきて会話に加わった。というのも、僕らはもともとリヴァプールの音楽シーンの中でお互いのことを既に少し知っていたんだ。サーカ・ウェーヴスを結成する最初のきっかけは、そこで「バンドをやらない?」って話になったこと。その時、すっかり酔っ払っていたのも手伝ってね(笑)。

キエラン みんなでBo Ningenのステージを観てたんだ。それで「自分たちも一緒にバンドをやろうか」という話をしたのを覚えているよ。

――それがどうやら、BBCレディオ1のゼイン・ロウの番組で、キエランが1人で作ったヴァージョンの“ヤング・チェイサーズ”が流れた頃だったそうですね?

キエラン そうなんだ。ゼイン・ロウが最初に“ヤング・チェイサーズ”を流してくれたのが、確かちょうどその夜とか、それぐらいの出来事だったと思う。だから、僕自身は「この曲をバンドでやりたい」って気持ちがあった。

Circa Waves – “Young Chasers”(rehearsal tape)

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