全てのDATSのクリエイティヴィティがそこから生まれてる
杉本亘(Vo)
キーワード:地元/本
——杉本さんはどちらがご出身ですか?
杉本 東京の大田区久が原ってとこですね。でも、ロサンゼルスで産まれました。
大井 ロサンゼルスの大田区(笑)。
杉本 ロサンゼルスと久が原っていう、その両極端を対比させることで、俺の人間性をより際立たせる。
伊原 それDATSの狙撃なんだろうな。
杉本 そういうハイブリットな要素でもあるっていう。
——LAはどのくらいいたんですか?
杉本 ロサンゼルスは産まれただけなので、1年くらいですね。
——じゃあ育ちは東京?
杉本 その後アトランタで2年過ごして、東京に戻って来て、また小学校でワシントンD.Cで3年滞在してました。
——海外での生活で何か影響を受けてたりしますか?
杉本 無意識に影響されてるのは多分あると思うんですよね。やっぱり最初は、言葉が分からない状態で向こうのコミュニティに放り込まれたので、その中でいかに自分を出すというか、キャラクターとしてのアイデンティティをどう確立していくかっていう所ですごく悩みました。最初の壁がそこであって、そうなると結局自己を内面化せざるおえなくなって。そのステップを終えて、じゃあその反省を踏まえて次はどういう風にしていけば、このコミュニティに馴染めるのかっていう事をやっぱり考えてきました。そういうのは自分が音楽を作る上で、表現作品をとしてアウトプットする上で、影響している部分なんじゃないかと思います。
——DATSの地元を決めるとしたらどこだと思いますか?
杉本 DATSの地元はそれはもう、久が原です。僕の家が本当にスタジオみたいになってるので。全員、僕の家に集まってミーティングもするし、ライブ前だったらしょっちゅう泊まるし。全てのDATSのクリエイティヴィティがそこから生まれてるっていっても過言ではないです。
——久が原が新作に影響を与えている所はありますか?
杉本 全然ないですね(笑)。でも、しいて言えるなら全部自分たちの手で完結させる、自分達の環境でどこまで表現できるかっていう所に凄くこだわってますね。
大井 そう。自分たちの環境をすごくアルバムに還元してるしね。
杉本 そうそう。家で遊んでたノリでここまでできちゃうんだよって。やっぱり、SNSやネットを通じて出すっていうのも、ひとつの僕らとしての表現だし。影響っていうよりかはこだわりですね。
——次は本について。本や雑誌は読まれますか? 影響された本はありますか?
杉本 雑誌は読みますね、たまに。けど、小説とかは全く読まないです。
——影響もあまり受けないですか?
杉本 僕は本当に本とかに影響受けてないっていうか。小説からの影響を拒んでる部分も多分あると思います。結局、オチがあるストーリーっていうのをあんまり受け付けない身体に出来上がってて。それはなんでかと言うと、そのオチはどこにでもあるから。特に本は人に凄い時間を拘束させてまでもそのオチを伝えたかったのかって、俺は怒っちゃうんです。だから音楽をやってるのかもしれない。芸術媒体の中で、たぶん音楽が一番手軽に、身軽に何か物事を伝えられるっていうのはあると思うので。映画もそうなんだよね。
伊原 映画どういうの好きなの?
杉本 オチがあるのはいやだ。本でも文章でも、映像でも、その人の中にちゃんと印象を残せるものかどうかっていうのが僕にとってのポイント。雑誌とか、エッセイとか、論説文とかそういうものくらいしかたぶん読まないかな。
——じゃあもし今回のアルバムを本や雑誌に例えると?
杉本 作品に多分、本は還元されてないと思います。
——他のメンバーはどうですか?
大井 僕は本を読みます。むしろ小説を読む人なので。でも今回のアルバムは小説ではないですね。(テーマが)リアルなので、フィクションとは全く違います。ノンフィクションで、生々しいくらいリアル。杉本は雑誌とかじゃないの?
杉本 エロ本で!
伊原 その心は?
杉本 エロ本の中に出てきているストーリーって、全部虚構な世界。中に出てきてる女性はカメラに向って笑みを浮かべているけど、それは本物の笑みじゃない。もしかしたらそこには本当の笑みがあるかも知れないし、どっちかは分からない。そういう意味で僕らの『Application』は、それが良いのか悪いのか分からないけど、現実をアルバム作品というフィルターを通して描写していると思う。
大井 うん、いいね。
伊原 めっちゃいい。