3月7日(土)から3月29日(日)にかけて開催中のアートイベント<Pureism国際展 阿佐ヶ谷アートストリート2015>の会期中、TAV GALLERYにて展開されているD[diː](ディー)の個展<The Pretty ASCENSION “S”>。。

タイトルに掲げられた「ASCENSION(アセンション)」とは、“キリスト教ではキリストの昇天、または天国へ行くこと、ニューエイジ用語では惑星地球の次元上昇”の意。このワードにまつわる想像力をかき立てるスピリチュアルな説話のアレコレは、創作イマジネーションを刺激するものだったという。

前回の個展<Harmony/my melody , your melody(ハーモニー/私とあなたのための旋律)>でも登場した草花モチーフの作品群は、「愛情に満ちあふれた人間のみで構成されるアセンション後の世界」と「悪だって必要な現実の世界」=理想と現実の両面をはらんだ、ただただ美しいという感想では収めきれないほどのシニカルさを帯びたものとなっている。また、テーマそのものの神秘性をシニカルにユーモア溢れる方法で昇華した点も本展のコアといえるだろう。

今回は、作品ごとに落とし込まれた説話とモチーフの解説、創作に向かう姿勢とD[diː]のこれからについて話を聞く。

★D[diː]インタビュー(前編)はこちら

Interview:D[diː](後編)

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――前回は「The Pretty ASCENSION “S”」というテーマ全体の趣旨とその深層部に込められたアイロニーについてうかがいましたが、各作品のモチーフについても解説していただけますか?

調べれば調べるほど、いろいろおもしろい話が出てくるんですよ。たとえば『WHERE IS MY NEPHILIM?』で描いた巨人というモチーフについて。太古に生きていた“ネフィリム”と呼ばれる全長が3mから15m、場合によっては1350mって身長の幅ありすぎなんですけど、とにかく巨大な巨人の骨が世界各国で発掘されているんですね。そのネフィリムというのは、地球よりもずっと重力の弱い火星で巨大に育った人と地球人のハーフという説があって。ちなみに、壊滅的戦争か洪水かで火星を追われた彼らは、のちに“神様”と呼ばれる存在になったそうです。彼らが地球上にいたのが、ノアの箱舟の大洪水が起こるもっともっと前。

――なんだかジブリで描かれている世界に通ずるものがありますね。

そうなの。ナウシカに登場する巨神兵が大好きなので、このネフィリム存在説を知った時は大興奮しました。もしこの説が本当だとすると、人類の進化論を完全に覆しちゃうってことで、20世紀初頭にスミソニアン博物館が発掘した骨を破棄したそうなんです。そのときの資料が、2015年に公開されるっていわれていて、ほんとに今年公開されたらわくわくどころの騒ぎじゃないです。その、ノアの箱船の大洪水以降に築かれたとされるのが、このバベル(『The Babel;It was City』)。これを作った人たちはアセンションしていた宇宙人=神様のマネをしようとして怒りにふれて、結果破壊されたっていう。

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――そういった伝説的な存在を描くと同時に、本展示のアイコンとして登場しているのが……。

これですね(『(The most famous ascended aliens)』)。いわゆる“世界で一番有名な宇宙人”(笑)。アセンションしてる一番有名な宇宙人って誰だろう? って考えたら、この人たちだなって。有名な宇宙人は他にもいるけど、ほら、魂どおしで会話したりとか、超能力的な力で武器を生成したりとか、アセンションした状態になると、見えない力を使えるようになるんだそうです。そう考えると、彼らなんですよ。そういう意味では、自転車の籠に乗せられたエイリアンとかじゃダメなんです。特別な力が使えなくちゃ。

――なるほど。

SFとして考えると、アセンションってすごいいろいろなところで当たり前のように設定で組み込まれてるし、普通におもしろいと思うんですよね。真面目に語れば語る程、あやしい〜って顔みんなするんだけど、ある意味これは、ギャグっていうか。それは、いつもどの作品もそうなんだけど、大マジメに語りたいと思っていて、同時にパロディとかギャグ的に捉えてもらいたいっていう気持ちはいつもある。

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――その部分は、作品と併せて展示されている手書のテーマ資料にも表れていますよね。純粋に作品だけを見るとテーマの奥深さとスケールに圧倒されるのに、この資料の脱力感は絶妙ですね。

これは、15年前くらいに買った自由帳を使わないで置いておいたら、いい色になってたから手書きで書いてみました。昔の資料みたいでしょ。誰かが夏休みとかの課題研究で提出したものが出てきた、みたいなイメージ。その中で考えた“アセンションズ・ガール”っていうガールズヒーローが乗っているのが、このスケートボード。Push&Coとのコラボレーションデッキです。これに乗ると光速や音速で移動できるっていう設定。ちなみにアセンションズ・ガールズは、絶賛募集中です! 彼女たちが身につけてるケルト模様とか縄文模様って渦巻きがモチーフなんですけど、渦巻きってすごくパワーが宿りやすいんですよ。で、渦巻きといえば、このカイラス山(『The HOLY MOUNTAIN』)。ここは、世界で一番のパワースポットと言われています。

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——チベットにある独立峰ですね。

2億年くらいまえ、地球に落ちた彗星がこのあたりの地上にねじ込むように入っていったらしいんですけど、そのときに生まれた水素爆弾何兆個分に匹敵する渦巻き状のエネルギーが2億年経った今でも残っているそうなんです。あのへんに流れている川の水には未だにすごいパワーが宿っているって。インド人が沐浴するガンジス川はこれの支流にあたるそうです。核爆弾が落ちたあとって、熱で地中のケイ素とかがガラス化しちゃうんですね。で、この山はほぼ石英でできていると言われていて、須弥山っていう仏教でいうところの森羅万象の象徴とされる山のモデルになっているとも言われてます。御聖山だから、普通の人は登頂できないんだそうです。

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