––––(笑)。アルバム・タイトルの『ソル・インヴィクタス』とは、ローマの太陽神だそうですが。
そう、そのとおり。
––––イタリアというとマイク・パットンと縁の深い場所ですが、それも関係あるのでしょうかね?
それもあるかな。ひとつには、あいつとの繋がりもあるかもしれないし、俺たちの中にはローマン・カトリックで育ったやつも何人かいるんで(苦笑)、そういう繋がりもある。アルバムのアートワークは見た?
––––いや、まだ見ていないです。
タイトルはアートワークとも関連性がある。合わせてみると、すべての辻褄が合うよ。自分なりに、これが合っているように思う理由をかいつまんで言うならば……今作はある意味、非常にダークなアルバムで、暗い色合いが多用されているけれども、同時にとても明るい閃きをも内包しているんだよね。ほら、部族の仮面を被って邪悪なものを退けて自衛する、というのがあるだろう? 今度のアルバムのジャケットは、ナイフを持った7才ぐらいの少年が、ハロウィンの仮面を被っているんだけど、それがある意味、アルバムのスピリットを表しているんだ。
3月3日に公開された『ソル・インヴィクタス』ジャケ写
––––アルバム全体で何かコンセプトのようなものはあるのでしょうか?
あるよ。ただ、これはとても興味深いことで、俺たちの場合毎回そうなんだけど、作業中にはバンドの全員が同じことを同時に感じているんだよね。それぞれは違う人間なのに、何かを一緒に感じて、そこへ向かっている。その多くは無意識のことで、なぜそこへ向かっているのかわからないことも多い。で、作品が完成してから振り返って、ようやく繋がりが見えてくるんだ。俺も今ちょうどその繋がりが見え始めたところで、このレコードにテーマがあることは間違いないと思う。それはつまり、アルバムを作りながら、なぜ自分たちがそこまで強力な感覚を共有していたのかを理解する過程でもあるんだ。人の無意識は時として、意識以上に物事をわきまえていたりする。幅を利かせていた無意識が今、姿を現しつつあるということだよ。
––––では、時間がきてしまったので最後の質問です。フェイス・ノー・モアの今後の活動について、あなたはどんなヴィジョンを思い描いていますか?
向こう4ヵ月の、その先かい? せっかく新しいアルバムが出来たんだから、このアルバムが新鮮なうちに、できるだけ多くの場所へ行けるようでありたいね。それは非常に重要なことだと俺は思う。ヨーロッパを回るのが2016年以降になって、現地にたどり着く頃にはアルバムが出て2年も経っていたというのは、俺には理屈が合わないんだ。だから今年はできるだけたくさんの場所をツアーすることになるだろう。で、その後ということになると、特に何も無いよ。その頃にはもう、みんな俺たちが作った新しい音楽を聴いているだろうし、あとは音楽が勝手に生命を帯びていけばいい。自分たちがどうしたいかは、そこでゆっくり考えればいいさ。それは例えば、子育てのようなものだ。学校へ通わせて、大きくなったら自立させる。そんな感じで、今度の音楽がどうなっていくかを 俺たちは見守ることになる。
––––わかりました。今夜のライヴも楽しみにしています。
機材の調子にもよるけど、まだセットリストを決めてないんだ(笑)。昨日も観てくれたんだよね? どうだった? かなり変なショウだったよな。
––––ちょっと珍しいものを見せていただきました(笑)。
確かに、とても「人間的な」ものだったことは間違いないね(笑)。
text&interview by 玄田輝
translation by 染谷和美
photo by 古溪一道