今春のドラマーのメンバーチェンジを経て、新体制にて活動中のFEELFLIP。Skhaotic(SKA+chaotic)を標榜し、5人組というホーン隊を有したスカパンク・バンドとしては必要最小限の編成ながら、5人だけとは思えぬ曲構成やサウンドの厚さ、各人の技巧の高さは高く評価されている。
そんな彼らが前回のインタビューの際にも公約していたライブレコーディングによる新作制作を敢行。それが完成し、このたび届けられた。
「新曲をライブの雰囲気と共にパッケージしたい……」、そんな多くのライブバンドの夢を見事に実現した彼ら。バンドの多くがその方法論に憧れながらも実現に至らないのにはわけがある。熟考すると、これはとてもリスキーな行為であるから。既発曲のライブ録りと違い、新曲だから当然集まったお客さんもその曲たちを初体験→ノりに難あり、を始め、直しの効かない一発録音、その重圧や緊張感、自身の新曲の体得具合等々、そのリスクや懸念を挙げるときりがない。
ところが彼らは、それらを全て想定内とし、対策を練り、工夫を凝らし、今回実現に至らしめた。結果、彼らの信条であるライブハウスでのライブならではの雰囲気や勢い、熱量や臨場感を擁しながらも、作品としてもクオリティの高い1枚を完成させた。
今回、その誰もが理想に思うが実現に至らなかった弊害をクリアし、リリースにまで至らしめた彼らの、その道筋とノウハウを伝えたい。
FEELFLIP / “Recording Now!!!” Trailer
Interview:FEELFLIP
——今春から新ドラマーとしてSteveさんが新加入しましたが、わりと早く後任が見つかりましたね。
TOMOYA そうなんです。前回の取材時には、既に何人か候補はいたものの、絞り切れてなくて。技術面のみならず、人間として一緒にやっていけるかもけっこう重要でしたからね。なので、このSteveとも、まずは呑みから始めました。
——恒例の(笑)。
TOMOYA そうそう(笑)。このバンドもIKKEと俺が飲みの席で、「一緒にバンドを組もう!!」って話から始まったし、今のメジャー契約も、お酒を飲んで、「じゃあ、入ろうか」でしたから (笑)。まずは、PONとIKKEが先陣として3から4件ハシゴして様子を見てもらいました。
——3から4件(笑)!?
TOMOYA で、「良さそうだ」との報告を受け、我々も交え再度呑みに行き、そこで人となりを知った感じです。その後ですね、一緒にスタジオに入ったのは(笑)。
——まずは面接を終えて、続いて実技試験に進んだと。
IKKE とは言え、以前対バンしたことはありましたからね。だいたいの技量は知っていました。自分は同じリズム隊なので、下手なヤツと一緒にまたやり直すのはキツいなと思っていたんで。なので、人選は慎重に行いました。いい奴で、楽しい奴で、演奏技術もある奴……そんなちょっと高いハードルをクリアしたのが、このSteveだったんです(笑)。
——FEELFLIPはメンバー各人の演奏スキルも高いので、技術的にも最初からかなり高度なものを求められそうですもんね。ちなみにSteveさんも加入前はパンク系のバンドを?
Steve いや、エレクトロニカのバンドをやってました。電子音楽や同期をバンドや楽器隊と融合させたグループに居たんです。
——FELLFLIPのような音楽性とはある種正反対なグループじゃないですか。
Steve 真逆ですね。そのグループはかなりかっちりとした構成だったこともあり、自分の性に合わないところがあって。「いつか自由にドラムを叩きたいな……」と考えていたところに、この話をもらったんです。
——転向にはかなり勇気を有したのでは?
Steve 元々色々な音楽が好きだし、影響を受けてきましたからね。それはあまり無かったですね。
——逆にFEELFLIP側には、違った畑からのドラマーを迎えることへの抵抗等は?
IKKE 無かったです。むしろドラムの安定感が欲しかったので。最初に合わせた時も非常にやりやすかったし。テクニックはしっかりとあるので、逆にグルーヴは一緒にやっていくうちに高めていけばいいかなって。
PON 元々色々な音楽を聴いてきたヤツだし、俺らも好きな音楽が全員全く違いますからね。
TOMOYA 色々なことをやってきたぶん、様々なリクエストにも即時順応してもらえるんです。一度聴いてもらえば、2度目からはスムーズに叩けちゃう。そんな技量と起用さを持っているヤツで。俺らの昔の曲も2回ぐらい聴けば叩けちゃうんですよね。今後、色々と贅沢なこともリクエストできそうなので、こちらとしても音楽性や表現の幅を広げていく為にもいいドラマーと出会えたと喜んでます。
Steve 自分らしさを尊重してもらって、自由に叩かせてもらってます。僕自身、このグループには毎度かなり刺激を受けていて。叩いていても都度新鮮だし。自身を更に成長させてくれるんじゃないかなって。Skhaoticという、いわゆる楽曲構成の概念をあまり考えず、捉われずにオリジナルな音楽を作っていく。それを単にトレースするのではなく、自分で思う、「こう叩いたら楽曲が更に面白くなりそうだ」、「ここでこう叩けば楽曲がこうなっていくんじゃないか」を入れ込んでいけたらなと思っています。
——Steveさんの加入以降、どうバンドが変わりましたか?
TOMOYA 演奏も安定しているし、正確だし、臨機応変なので、とてもやりやすいです。以前の暴れるドラミングからちょっとクールな感じに映るので、その辺りは従来のファンは多少物足りないかもしれないけど、まっ、その辺りもおいおいでしょう。
IKKE 既に10回近く一緒にライブをやってきて、グルーヴもかなり高まってきだしましたからね。これからです!
——では今後は、Steveさんの得意分野のシンコペーションやポリリズム、変拍子も取り入れられたりして?
IKKE 早速今回、変拍子を取り入れさせてもらってます(笑)。ギター、ベース、ドラムに2管というスカバンドでは最小限のスタイルなので、この5人で何を表現できるかは常に課題の一つなので、ひとパートひとパートの結びつきをより深いものにしていくのが、今後の目標に加わりそうです。これからはそれらの結びつきも更に強いものになっていくことでしょう。