「今いちばん“脱げる”シンガーソングライター」というキャッチフレーズはもちろん、実際に脱衣でも着衣でも毎回、ギリギリのビジュアルで攻めてくる藤田恵名。
これは彼女がグラビアとシンガーソングライター、どちらにも全力で賭けているからに他ならない。だが、彼女自身が歌を作って歌っているのに過激なビジュアルを売りにしているとか、逆に何度も脱ぐ事でむしろ飽きられるのではないか? というネガティブなリアクションも冷静に自覚しているところこそが、藤田恵名というアーティストとしての戦闘力の高さだ。
今回は特異なシンガーソングライター藤田恵名がなぜ歌を作り歌うのか? 彼女を理解する一助になりそうな歌詞が印象的なニューシングル“言えない事は歌の中”リリース後に、この楽曲やアーティスト・イメージが定着してきた今について、彼女のスタンスを聞くと同時に、彼女いわく「芸能の世界」でサバイブするための戦闘力や、元来、資質として持っている勝負師の側面についても話してもらった。たくましいが実にチャーミングな人間味に溢れる女性であることは実際、対話した者の印象としてお伝えしておきたい。
Interview:藤田恵名
——今回のシングル“言えない事は歌の中”は昨年のアルバム『強めの心臓』でいろんな面が表現できた上でのシングルという感じですか?
そうですね。アルバムは保険まで行かないけど、何曲も聴いて「これいいな」って思ってもらえる曲があるけど、シングルってすごくプレッシャーというか。この表題曲で全部判断されるってなった時に、ちょっと歌詞を書き直したりとか、カップリングとバランスをとって似ないようにするのが最初、「大丈夫かな?」と思ったんですけど、自分の中ではキラーチューンになる曲が表題曲になった思いで、ちょっとホッとしました。
——“言いたい事は歌の中”というタイトル通り、藤田さんにまつわるイメージが曲で答えになっていて、代表曲ですって言えるような?
言えないことが書いてあるのか? っていうとそうでもなくて、歌ってたりとか、日常では消化できないことを歌の中では許されるという、どこかそういう思いがありまして、それで反骨精神じゃないけど、これを聴いた人が自分も頑張ろうと思えたりだとか、歌ってる自分が報われればいいなと思って書きました。言えないことを書くというよりは言えない感情を歌える曲になりました。
——この曲の中では何かを告白しているのではなくて、藤田恵名ってシンガーソングライターというか、歌の中に本当の私がいるよってことを表明しているんでしょうか?
いろんな私をパッと見た印象でいろんな意見を持つ人が多いのは自覚があるんで、この歌を盾に活動ができるという感じですかね。「身代わりの歌ばかり歌ってる」って歌詞に書いてるんですけど、そんな感じ。
藤田恵名「言えない事は歌の中」(未検閲 ver.)
——限りなく全裸に近くてギターを持っているかっこいいこのビジュアルも、ギターを持っているだけだとカッコ悪いから、すごく練習したそうですね。
はい(笑)。弾けないのにアー写でギターを持ってる人とか見ると自分が「ええ?」って思っちゃうタイプだから。だからそう思われないように、反面教師じゃないけど、そうやらなきゃという、危機というか、それで必死に独学だったり(アレンジャーの)田渕ガー子さんに教えてもらいながら。そんなに達者ではないけど、様になるかな? ぐらいは弾けるようになりましたね。
——必要性があって、どんどん武器を増やしているようにも思えるけど、実際の作品はどんどん核心に近づいている印象です。
そうですね。10代で自分で作った曲とかは、すごく当たり障りのないというか、なるべく多くの人に共感してほしいという気持ちで作って歌ってたんですけど、どんどん歳を重ねてくうちに考え方も変わってきて。みんなに好かれるなんて無理だと思うようになってからは、何通りの考えがある中で、私はこの考えだとか、この表現方法だ、私は私だっていうのをちゃんと発信できるようになったんで、それからはラクです。気持ちが落ち込んでるときに明るい歌が歌えないような感覚なので。私はこういう人間ですっていうのを言っちゃえてる今がすごくラクですね。
——以前はグラビアアイドルやっている人が歌う歌はこんな感じだっていうイメージがあったんでしょうね。
うん、パターンとか。でも私がこの活動をしてなくてそういう人が出ましたってなっても、どうせ誰かが作って、きゃっきゃ歌ってる曲なんだろうなって先入観を持っちゃうと思うんですけど、それを払拭したいって気持ちはすごく強いですね、今となっては。
——ビジュアルは前作もかなり際どかったんで、今作はどうするのかな? と思ったんですけど、やっぱり引き続き攻めていますね。
引き続きで(笑)。ジャケットを撮るってなった時に、アイデア出しの打ち合わせの時に、「やっぱ今回も脱ぎで」ってなった時、清々しい気持ちで、なんのためらいもなくて(笑)。でも、3度目の正直っていうぐらいだから、今度どうなるんだろ? って不安はありますけど。でも、出す度にまたこういう子が出たか、っていうコメントとかを目にすると、「あ、まだ全然届いてないんだな」と思う気持ちもあるというか、良くも悪くも悪目立ちしてる実感はあるので、飽きられるまでやってもいいのかなとも思いつつ。この一貫性が逆にかっこいいみたいな(笑)。「藤田、ちょっと丸くなったな」とか「歳とって安パイに行ったな」と思われるのも嫌だから。それは会社とか大人の意見もありつつなんですけど、ここまできたら生涯全裸みたいな(笑)。人の20代からずーっと年老いて行く……多分見苦しいとは思うんですけど(笑)。そういうのがあっても面白いんじゃないかなと。別の意見が出たら出たで、その意見を「なるほど」と思えると思うんですけど、もしまた次もってなったら、それはそれでいいと思います(笑)。
——そうなってくると、そのために努力するのか、いや、ありのままでいいじゃないかってなるのか、どっちでしょうね?
いろんな場末感のある場所に行っても「味がある」って思えちゃうから、変に作り込むとか、今回のジャケも本来膝とかレタッチしてもいいはずを割とそのままにしてるとか。脱衣バージョンの方も、腰の影とかももっとグラビアのジャケットみたいにできたと思うんですけど、これはこれで人間らしいというか。それなりにフォトショップの力を借りてると思うけど、生身のライブをやってる者としては、味があるなぁっていうのは好きなので。なので無理くり努力をするというよりは、「ありのまま」みたいな感じでいたいとは思いますね。
——グラビアのプロの意見とシンガーソングライターとしての意見が融合されていますね。
そうかもしれないですね。需要がある限りやりたいっていうのは思ってたんですけど、外野の意見は気にしてられないので、王道どころじゃない人間って自覚はあるから、なんていえばいいのか難しいけど、細く長くいて、面白がってもらえればいいかなとも思うんですよね。
——だって「今一番“脱げる”シンガーソングライター」ってキャッチコピーがついていること自体、ハードル上がりますよね。
そうですよね(笑)。次のジャケットで脱いでなかったらそのキャッチコピーも説得力なくなっちゃうのかな? と思ったり。でもこの先がワクワクしてるから、それはそれで面白いなって。その時に直面した悩みがきっと、絶対面白いんだろうな、面白い悩みに直面するんだろうなと思えます。
——面白い悩みというか節目が今までもいっぱいあったから、そう思えるようになったんですか?
悩みやすい性格ではあるんですけど、それを絶望的に思うか楽観的に思うかで、全然、自分の体調だとか、対人への影響が出たりするじゃないですか。もともと悩みやすくて、浮き沈みのある人間だったので、それこそ例えばいじめにあったらとか、親がいないとか。絶望的になっても、今となっては親がいない強みというか、親の目を気にせず脱げるみたいな風に思えたりとか、楽観的に考えた方が絶対にいいだろうなと思っています。
——じゃあシンガーソングライターとして納得のいくものを作ることの方がハードル高かったりしますか?
女性だったら可愛いとか綺麗とか言われることって、かっこいいって言われることに比べて簡単だと思ってて。かっこいいって思われたくなって、シンガーソングライターとか、ライブやってる様とか、もっとかっこいいものをやるにはどうしたらいいんだろう? っていう風な思いはありますね。ハードル上がってますね。
——それは人と比べるんじゃなくて、藤田さんの歩みの中でのかっこよさ?
そうですね。お手本は特になくて我流なんですけど、自分が思うかっこいいは多分、かっこいいはずと思ってやってるんで、難しいですね。
——でも楽曲が昔とは全然違いますし。
全然違いますね(笑)。昔はオリコン上位に入ってるような、売れてる曲しか知らない感じだったんですけど、上京して自分の耳に届いてなかった音楽の量にびっくりして。それこそガー子さんが教えてくれたバンドとかに結構影響受けてる部分はありますね。こういうかっこよさってあるんだ、みたいな。やってる人がとにかく一生懸命とかじゃなくて必死になってこの1曲を演奏するみたいなのにすごく胸を打たれて。自分はペース配分とか考えちゃってたのかなと思うと、1曲に対して必死になろうってすごく思えましたね。
——1曲に賭けていると感じたんですね。
NUMBER GIRLさんだったり、インディーズのアーティストですけど、サナダヒデト(真田暎人)さんという、すごく尊敬してるシンガーソングライターの人がいて。その人のライブを結構見にいくんですけど、もう、「スッゲーな」っていつも感心して。自分が音楽に対して不真面目に向き合ってたつもりはなくても向き合い方が変わりました。そういう知らなかった音楽に出会って。