今年はスーパーグラスとしてのデビュー作『アイ・シュド・ココ』の発売から20年を迎えるメモリアル・イヤー。そして気付けば、近年UKの音楽シーンでグランジ的な音を再解釈したウルフ・アリスなども加えたブリットポップ~90年代リバイバルが、ピースやスウィム・ディープらを筆頭にしたバーミンガムの若手バンドたちを中心に進行している。そこで今回はギャズ・クームスに、その時代の生き証人として過去から現在までをインタビュー! ブリットポップ時代から現在まで、歳を重ねることへの思いも交えてしてくれた話からは、「彼がなぜ今も多くの人に慕われ続けるのか」という理由が、きっと伝わるんじゃないだろうか。
Gaz Coombes – The Making Of 『Matador』
Interview:Gaz Coombes
――前作『ヒア・カム・ザ・ボムズ』はジェイムス・ブレイクに通じる音楽性を追究していたり、打ち込みを導入したりして、スーパーグラスとはまったく異なる音楽性を追究した作品になりました。あの時点で、新しいことに挑戦しようと思ったのはなぜだったんですか?
「バンドがいない」「1人で作品を作る」っていうことから、必然的にそういう形になっていったんだと思う。バンドで作品を作る時というのは、みんなで集まって楽器を弾いて、その中でアイディアを見つけていくっていうのが出発点だよね。でも1人の場合は、アプローチの方法として色んな可能性を試すことが出来る。だったら、とにかくそれを探ってみようと思ったんだ。そうすることで、自分がどういう風に進化していくのか、ということを考えてみたかったんだと思う。
――実際にやってみて、何か気づいたことはありましたか。
もちろん。1人でやるということは、新しい発見の連続だったよ。中でも『ヒア・カム・ザ・ボムズ』では初めてドラムをプログラミングして、エレクトロニックなビートを使ったりして、それ自体が自分にとっては新しい発見だった。それから、特にここ3~4年は、以前よりもいい歌詞が書けるようになってきていると思うんだ。スーパーグラスの時はその役割を3人で分担していたというか、分け合うような感じだったけど、ソロでは1人で全部書かなきゃいけないということが影響してるんだと思う。そうやって新しい発見や進化を楽しむような作業だったね。
――では、その作品と比べて今回の『マタドール』はどんな作品になったと思いますか? 聴かせてもらった限り、よりナチュラルでシンプルな雰囲気が魅力の作品のように思えますね。
今回はシンプルに、より直接的にしようと思った。「思いついたことを素直に形にしていく」、そして「あまり考え過ぎない」ということを心掛けたよ。もともと、『ヒア・カム・ザ・ボムズ』はスーパーグラスからソロ名義への移行期だったから、そこにはまだスーパーグラスの名残も多少あったと思うんだ。けれど、そこから活動を続けてきて、この『マタドール』では自分のやっていることに少し確信を持てるようになってきた感じ。「自分のサウンドはどういうものか」「自分の声はどういうものか」ということを追究する面白さを感じながら作業していった。
『マタドール』アルバムジャケット