――本格的なスタートは情報解禁後からだったんですね。制作はどのように進めていったのでしょうか?
亀本 最後に完成したタイトルトラックの“ワイルド・サイドを行け”、先に出来あがっていた“NEXT ONE”、 学生時代に作った“夜明けのフォーク”。そこから3曲デモを作って提案をしましたが、その中から1曲は流して5曲でミニアルバムを作ろうと考えました。そのデモにレミさんが歌詞とアレンジを加えていく。この作業はツアーの最中でしたね。
松尾 亀からギターコードをもらったら、すぐに弾き語りで作る。時間が限られていたので、宿泊したホテルの地下駐車場に止めたハイエースの中で、深夜に曲を作って、ワンコーラスできたら亀に渡して、車の中でレコーディングもしました。それでも、タイトな時間だからこそ、最初に歌詞や音の部分は、何を伝えていきたいのか明確にしていたので、煮詰まることなく、しっかりとした楽曲が生まれました。
――車でレコーディング……とてもタイトな時間の中での制作だったんですね。その音や歌詞の部分についてお伺いさせてください。
松尾 「次に出す音は、『今までにやってきてないリズムはなんだろう?』ということを考えて、やったことのないリズムをやってみる。」というキーワードがありました。“BOYS&GIRLS”はシャッフルの曲なので、「シャッフルはやったことがないよね?」ということで、最初にビートから作りました。“太陽を目指せ”という曲は“褒めろよ(メジャー1stシングル)”を出した時に一緒に作った曲でしたが、この盤に入れたいと思っていたので、ブラッシュアップをして、“夜明けのフォーク”も練り直して、ブラッシュアップをしていきました。
亀本 実は、曲の基となるものはありましたが、それでも新しく作っているんです。それは歌詞です。歌詞は簡単に生まれてくるものではないのですし、出しすぎたら枯れていってしまうものなので、レミさんは特に苦労したと思います。
GLIM SPANKY – 褒めろよ
――ミニアルバムを通して「自分が正しいと決断したら」、「たとえ世間と違う方向であっても進んで」、「そこでしか決して見られないような絶景を観よう」など、強いメッセージ性を感じました。
松尾 「頑張れ!」ではなくて、「滅茶苦茶頑張れ!」という想いです。それでも、ただ一方的にリスナーに対して、「頑張れ!」というだけではなくて、私たちも頑張らないといけないんです。「私たちも頑張っているから一緒に頑張ろう!」ということを共有したいと思いました。だからこそ、“ワイルド・サイドを行け”という曲が出来たんです。「みんなで見る景色は絶景」。このキーワードは、「私たちも、みんなも一緒に!」という想いを込めて書きました。みんなで突き進むことで、成功した時の快感は何よりも耐え難いものだと思うんです。
――何ごとでも誰かと何かをなし遂げることや、挑戦することは何事にも代え難いことですよね。
松尾 やっている音楽や思考は違っているかもしれませんが、多くのバンドが出てくる中で、やっぱりみんな、「大きな世界を見たいんだ!」と、感じることがとても多いんです。それならば、私たちだけが一匹オオカミで突き進んでいくのではなくて、視野を広く持って、何もない場所にある、舗装されていない細い道からでも、デカい道を開拓して、「一緒に絶景を見よう!」という音楽面でのメッセージもあります。
――“ワイルド・サイドを行け”では、ルー・リードの”ワイルド・サイドを歩け”のパロディとなっていると伺いましたが、GLIM SPANKYのルーツにもあると感じるルー・リードを、フューチャーした理由はありますか?
松尾 もともと、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(ルー・リードを中心としたバンド)のアート感や、ロック感が好きでしたが、“ワイルド・サイドを行け”の歌詞を書いている時に、ほぼ書き終わっているのに、「後ひと言!」という、キャッチーなワードが浮かんでこなかったんです。そんな時に、(いしわたり)淳治さんに相談をしたら、「ルー・リードやヴェルヴェット・アンダーグラウンドはどうだろう?」という風に提案をしてくれました。その言葉を聞いた時には、「最高!」と思いましたね。
――“ワイルド・サイドを行け”の作詞クレジットには、松尾さんといしわたりさんの両名になっていますよね。
松尾 提案していただいて、そこから歌詞も書きかえましたね。この曲はあらゆる部分にルーツを垣間見ることができます。《ワイルド・サイド》はルー・リードにヴェルヴェット・アンダーグラウンド。歌詞の冒頭のフレーズ、《ダイス投げて》はローリング・ストーンズ。サウンドのサイケデリック感の部分では、<マジカル・ミステリー・ツアー>の時のビートルズに、クーラーシェイカーやテーム・インパラ。声のキーワードではジャニス・ジョップリン。今あげただけでも、6つのルーツが見えるんです。他にも、日本語のロックを感じることもできますし、ルーツが沢山浮かぶ、いい感じの曲が出来あがったと思いますね。色々なルーツがちりばめられているので、その部分を探すだけでも何回でも聴けるのではないでしょうか。
――“ワイルド・サイドを行け”の歌詞では、いしわたりさんのお話が出ましたが、サウンドの面では亀田さんが参加なさっていますね。
亀本 “褒めろよ”、“リアル鬼ごっこ”、“大人になったら”は、亀田さんにサウンドプロデュースをしていただきましたが、今回の“ワイルド・サイドを行け”では、その流れを汲みつつも、さらにビビットなものにしようというテーマがありました。“ワイルド・サイドを行け”の最後では、シンセを強くのせていますが、その部分は自分たちでやるものに、亀田さんに入れてもらったものを足していく。その作業をメールで何度もやり取りを重ねて、詰めていきました。
GLIM SPANKY ‐ 「リアル鬼ごっこ」MV -2015.5.17東京キネマ倶楽部Live –
次ページ:松尾「今歌うべきことが歌えたなという感覚はあります」