——そして今回、10周年を記念して様々な企画が用意されています。中でも『IN YA MELLOW TONE – GOON TRAX 10th Anniversary Best』の内容は、どんな風に考えていったんでしょう?

このコンピレーションは12曲入りのディスクが2枚で全24曲になっていますけど、もともとは16曲入りで、1枚にしようとも思ったんですよ。ただ、これまでイベントで話したリスナーの人たちの中でも、「インストを出してほしい」という声がすごく多くて。それはたぶん、エレクトロニック・ミュージックを聴いているお客さんや、もともとはジャズを聴いていた人たちが、「インストも欲しい」ということだと思うんですけど、それをふと思い出したんです。それで片方はインスト盤にしました。そうすれば、これまで刺さっていなかったお客さんが手に取ってくれる可能性もあるかな、と思ったんですよ。収録曲は、〈GOON TRAX〉の歴史が分かるように選んでいきました。1曲目のre:plusの“Time Goes By”はそれこそみんな知っているような曲ですけど、最後のHIDETAKE TAKAYAMAの曲はムームのヴォーカルが歌ってくれていて。ジャンルを超えてる曲ですよね。

re:plus – Time Goes By feat. Hydroponikz & Anika

——こうして楽曲を選んでいくと、過去を振り返って、色々なアーティストの出会いを思い出した部分もあったんじゃないですか?

それはありました。re:plusなんて、それこそ出会った時は何も出来なかったですし(笑)。「声をかけるのが早すぎ」って言われたのを覚えていますね。「まだそんな準備が出来ていない」と。関わってくれたアーティストはみんな重要ですよ。HIDETAKE TAKAYAMAの“Express feat. Silla(múm)”のMVを初めて観た時は、泣きましたしね。

HIDETAKE TAKAYAMA 「Express feat. Silla (múm) 」 Music Video

——自分が涙を流せる曲をアーティストが作ってくれるというのは幸せな環境ですね。

すごく嬉しいことですよね。『銀河鉄道の夜』の、書かれていない先の話が表現されているもので。これはいまだに、「このMVがいいね」と海外から評判をもらうこともあります。これから10年は、もっとそれぞれのアーティストがレーベルの顔役になってくれるような活躍をしていってほしいと思っているんですよ。Still Caravanの今度出すアルバムは、一緒に制作しながら久しぶりにドキドキしているんですよね。ジャジー・ヒップホップから出てきたアーティストですけど、ラッパーやシンガーのフィーチャリングが今回ぐっと減っていて、生音のインストの曲が中心になっていて。これは自分のただの予想ですけど、fox capture planのようなジャズとSuchmosの間を行きそうな感じで、お店の反応もよくて本当に楽しみです。他にも色んなアーティストがいますけど、『IN YA MELLOW TONE』以上に、アーティストの作品が売れてほしい。「コンピが一番売れているレーベル」ではなくて、それを抜いていってほしい。もともと『IN YA MELLOW TONE』というコンピレーションは、「これをきっかけにアーティストの作品がより広がってほしい」と思って始まったものなんで。そういえば、さっき取材現場に向かう途中、(〈GOON TRAX〉最初のリリース作品として知られるNYのヒップホップ・デュオ)ザ・グッド・ピープルから、「10周年らしいな? 俺たちのことも忘れんなよ。また作品出してくれよ」とメールが来たんですよ。

——ああ、それは本当にいい話ですね。過去にリリースしてきた人たちにも愛されながら、同時に新しい層へも広がっているというのは、レーベルとして理想的な在り方ですね。

それは本当に、周りのファンの方しかり、関わってくれたアーティストしかり、周りの人たちに恵まれているんだと思いますね。そういえば、この間も、ポーランドのアーティストが2人、日本のオフィスに勝手に来たことがあったんですよ。「寿福さん、海外の方が寿福さんとのメールのプリントアウトを持って来ているんですけど……。」と言われて、「あいつら本当に来たの!?」と(笑)。「アポ無しでポーランドから来るか!?」とも思いましたけど、宿も取らずに来ていたみたいで、自宅に泊めてあげて。

——(笑)。それは結局のところ、『IN YA MELLOW TONE』というコンピレーションや、〈GOON TRAX〉というレーベルを通して、ヒップホップの新しい聴き方を知った人が多いということなんだと思います。

そうだといいですね。でも、これが一過性のものとして消費されてしまうのは本当に嫌なので。たとえば今の(フリースタイル・バトルを中心とした)ヒップホップのブームの中でも、「こういうものもあるんだよ」ということを伝えていこうと思っています。

【インタビュー】累計売上35万枚超、モンスター・コンピ『IN YA MELLOW TONE』。代表が語る10年の軌跡と未来 with_Parrt-Time-Cook_inKorea-700x700
韓国でのPart Time Cookと寿福知之

RELEASE INFORMATION

IN YA MELLOW TONE GOON TRAX 10th Anniversary BEST

【インタビュー】累計売上35万枚超、モンスター・コンピ『IN YA MELLOW TONE』。代表が語る10年の軌跡と未来 mu161212_goontrax_1-700x621-1-700x621
2016.12.14(水)
V.A.
¥2,000(+tax)
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EVENT INFORMATION

IN YA MELLOW TONE TOUR with Stehph Pockets

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