——あなたはこれまで様々な音楽を取り入れて進化してきましたが、今回は自分のためだけではなく、「誰かのために作品を作りたい」という話をしています。これは音楽的な冒険よりもとても大きな変化だと思うのですが、どんな風に起こったことだったんですか?
アーティストって自分のことが大好きな人間でしょ? (笑)。(新作のジャケットを見せながら)この写真を見てよ。これは僕らが一番気に入った写真だけど、カメラマンにとってはそうじゃなかった。話を広げてみると、ルイ・アームストロングだってニーナ・シモンだって、一番好きな曲はキャリア最大のヒット曲じゃなかったと思う。アーティストってそういう人種だと思うんだ。でも、一体僕らは何のために音楽を作っているんだろう? そう考えたときに、僕にとっては決して「ホセ・ジェイムズはジャズの未来だ」と言われるようなことではなかった。じゃあ、本当に僕が音楽を通してやりたいことは何だろう。僕にできることは何なんだろう。そう考え始めたのが、ここ数年のことだったんだ。
そうしたらあるとき、ファンの人に「去年は父親が倒れて、散々な年だった。でも、君の曲を聴いてそれを乗り越えることができた。」と言われて、それは僕がマーヴィンやアレサ・フランクリンに感じたことと同じだった。つまり、それが僕自身がアーティストからもらった最高の宝物だったんだ。そう考えると、もう自分がどうという話じゃないと思ったんだよね。お客さんがハッピーになれるものを作ろう、そう感じるようになった。僕にとってはそれが一番大切なことだと改めて気づかされた。だから今回はアルバムを完成させる前にプレビュー・ツアーをやって、お客さんの反応を見て収録曲を決めた部分もあったよ。「ああ、“リヴ・ユア・ファンタジー”は女の人に人気があるんだな」ってね。