――レコーディングはもちろんのことリハーサルもできる、あなた達の自宅とはちょっと離れた別の、自分達の空間を持つことができた、と。

ええ、その通りね。だからレコーディングをやっている間も、あそこは家の他にあるもうひとつの自宅、みたいな感じだった。

――(笑)。飼い犬も連れて行けるスタジオっていう?

うんうん。でも啼いたりしてうるさいから、レコーディング中は2階に閉じ込めておかなくちゃいけなくて。それでも、犬達がウロウロ歩き回ってる様子は天井越しに聞こえたけどね(笑)。

――(笑)。今回は初の外部プロデューサーとしてミック・ジョーンズが起用されましたが、以前から彼の音楽は聴いていましたか?

うん、まあ私と、私の母親ってところになるかな。要するに、うちの家族の中で比較的ザ・クラッシュに入れ込んでるのは私と母っていう。母は当時のクラッシュのライヴを観たこともあるし……だから、彼女はパンクのもろもろにハマっていたのよね。それに、彼女(※イングリッド・ワイス)はザ・レインコーツってバンドでドラムをプレイしたこともあったわけで。

――ええ。

そうやって実際にあの場にいたってことだし……私もクラッシュは大好きで。だから、彼と一緒に仕事できることになってすごい! と思ってる。それに……ああして彼としばらく過ごしてみて慣れたから、今となっては「あのザ・クラッシュのミック・ジョーンズ」っていうんじゃなく、ミックを彼自身として彼を見ることができるようになったっていう。

――雑誌やレコードで見かける「セレブ」ではなくて、「生身の人間」になったっていう。

(笑)。そうそう!

――また彼とのスタジオでの印象的な出来事があったらぜひ教えて下さい。

んー……特に「これ」といったことはとっさに思い浮かばないけども……とにかく彼がそばにいてくれる、それだけでポジティヴなエネルギーをもらうことができたな。それと、彼はブルーベリーをスタジオに持参してきてね。

――(笑)。

で、彼いわく「ブルーベリーは脳に良いんだよ!」って。

――(笑)。

(笑)。うん……えーと、あ、そうだ! これはまあ、単なる偶然なんだけど、ミックが話してくれたことのひとつに……私が産まれた日に、私の父(※グレアム・ダーラム。カムデンにあるマスタリング・スタジオ:The Exchangeの共同設立者のひとりでもある)はマスタリング・スタジオに詰めていたんですって。そこで父は、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトのシングルB面を切っていたっていう。

――へえ!

でまあ、もちろん私が産まれたのとまったく同時刻だったわけじゃないでしょうけど、父が”BAD”のトラックに取り組んでいる最中に母が破水してね。

――ひえー!

で、母は父に「病院に来てちょうだい!」って電話したんだけど、父は「まずこのB面を仕上げさせてくれ」って応えたっていう。

――嘘でしょー(笑)。

(笑)。ああ、それに、あの当時のミック・ジョーンズのガールフレンドの名前がデイジーだったって話もあったな。

――それまた面白い偶然ですね。

エヘヘッ! うん。

Big audio dynamite -”Bad”

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