――コンピューターでの録音が一般的な21世紀において、アナログ録音にこだわる理由は何ですか?

うーん、なんというか、それも私達の父親から始まった、みたいな。っていうのも彼はさっきも話したようにマスタリング・スタジオを持っていて、だからああいう古い機材etc…にも入れ込んでいたのね。で、その興味が弟にも伝播していったっていう。いまやアナログ機材は弟が情熱を傾ける大きな対象になっているし、彼はアナログ経験のある年上の人達から色々と学んでもいてね。どうやって機材を修理すればいいかとか、部品が必要だったら誰に頼めばいいかとか、そういったコネもしっかり確保していて。それにアナログ機材を他のマニアと交換したりもしているし……。

――(笑)。

でも、私達自身、ああいうスタイルで録音するのが好きなのよね。というのも、私達の演奏するスタイル、あるいは私達がプレイするタイプの音楽から、ああいう機材が一種の「マジック」を引き出してくれるっていうか。生々しさとでもいうのかな、ああいう録音の仕方は音楽の中からある種のフィーリングを引き出してくれるっていう。で、それってデジタルで録音した場合はたまに失われてしまうこともある、そういうフィーリングなのよね。だからまあ……うん、とにかく便利だってことでもあるのよね、ああして自分達でスタジオを作れて、しかもメンバーであるルイスにはスタジオをどう操ればいいかの知識がある、扱いを承知してるっていうのは。でも、私達は実はレコーディング技術って意味では常に前進しているのよ。っていうのも、最初の2枚のアルバムは8トラックのマシーンで録音したわけで、ある意味私達には「何をやれて/やれないか」の制約があった。もちろん、それはそれで良かったんだけどね、っていうのもあの時点で私達がやっていたのは、どっちにせよそういうことだったんだし。だけど、今の私達には前よりも広いスタジオ、しかも16トラック録音のテープ•マシーンがあって。だから、以前よりももっと色んなものを持ち込むことができるっていうのかな、もっといいバッキング•コーラスをやれるし、ストリングス•セクションも入れられて……だから、今回のアルバムで遂げたような進化を私達が達成できたのは、うん、ベターなスタジオ空間を使えるようになった、そしてもっと進んだ機材を手にした、最終的にはそこに尽きるんだと思う。

――分かりました。前作と同様に多種多様な音楽が混在してますが、それはアルバムのトータルなイメージを意図して取り入れている事なのですか? それともそれぞれの楽曲が導いてくれるのですか?

うん、私達には今までも常にそういう多様さがあったと思うけど、レコーディングを始める前に自分達で話すのは、とにかく「いいプロダクションの作品にしよう」っていう、そこだけでね。ただ、多種多様なスタイル/音楽が私達の作品に出て来るっていうのは、そこはとにかく私達がそれぞれ別個に曲を書いている、そこだと思うな。私は私でひとりで曲を書くって感じだし、書いたものをリハーサルに持ち込む。で、そこからとにかく3人でジャムを始めていって、一体最終的にはどういう曲に仕上がるか分からない、そういう状態のままでやってみるわけ。だからまあ、そうやって自然になんらかの形になっていくっていうことだし……うん、「この曲はファンキィにしないと」云々って具合に前もって考えたり意図するってことはなくて、とにかく何かが自然に起きるっていう。で、それが私達のフォローしていく道筋になるっていうね。

――今作は前作以上に各楽器の音がクリアーに聞こえます。そのせいもあるのかもしれませんが、それ以上に演奏家としてのスキルが上がった気がします。兄弟それぞれにおいて以前と変わった事などあったら教えて下さい。

そうねぇ……それもまあ、ごく自然にそうなったんだと思うけど? ライヴ•ショウをたくさんやるとか、そういった経験を通じてね。もっとも、私達は以前ほどしょっちゅう集まってジャムをやるってことはなくなってきたわけで……うん、純粋に楽曲をみっちりリハーサルした、そこに尽きるんじゃないかな? というのも、今回の私達はスタジオに移ってレコーディングを開始する前に、自分達の自宅でミックと長い間リハーサルに取り組んだのよね。そうやってなんというか、スタジオに入る準備はばっちりだ、確実に自分達をそういう状態に持っていこうとしたっていう。とは言っても、間違いなく自分達の演奏は上達したと思っているけどね。っていうのも、ファースト•アルバムから数えてももうずいぶん経ったわけだし。うん、だから、とにかくたくさんプレイしてきたことで上手くなったんだと思うし……それにサウンドの面にしても、以前の作品よりクリアーに聞こえるっていうのは、私達が昔よりも使用機材の扱いに関してプロになったってことだと思う。かつ、サウンドそのものが以前よりも分離が良い状態でレコーディングできるようになったっていうの? というのも私達の以前の作品では、その多くがなんというか、同時にレコーディングされていてね。そのぶんちょっとドロドロしたサウンドになっていたっていう。でも、今はすべての楽器を別個に録れるようになったわけよね? ってのも今の私達にはそれをやるだけの数のトラックがあるし(笑)。だから……うん、そういうことだと思う。

――今回のアルバムの楽曲で、すでにライブなどで演奏しなれている曲や、逆に録音を通じてようやく完成にこぎ着けた曲などありますか?

ああ。そうね、何曲かはライヴでもプレイし始めていて、そうやってレコーディングする前に慣れようとしたっていう楽曲はあるわね。そういう曲と言えば、そうだな……”Whenever You SeeMe”に、”Baby Bye Bye”に……”Whiskey”、”Turkish Delight”。うん、ライヴでプレイしてきた曲は大体そんなところだと思う。まだこの他にも、プレイしてきたのは2、3曲あるかもしれないけどね。でも、そうは言ったって、リハーサルが始まってそこでプレイしてみて、そして最終的にレコーディングしていく過程で、結局はライヴでプレイしていた頃からはずいぶん楽曲も変化したんだけどね。

――今作ではかなり楽曲の構成が複雑になっているものも多いですが、プリプロダクションにはどれくらい時間をかけましたか? その際には、やはりミックの存在が作用しましたか?

まあ、色んな要素が関わっているんだけどね。というのも、私達は以前よりもプリプロやプロダクションで色んなことがやれるようになったし、たとえばもっと色んな音を重ねることができるようになったわけよね。クールなギター•パートをここでちょっと、とかフィドルっぽい音をここに混ぜよう、みたいな調子で。それもあったし……ああ、あと、私達のプレイする音楽のスタイルが前とは少し違うものになった、そこもあるんじゃないかな。だからまあ――もちろんブルースってのは私達の音楽的な影響として常にあるわけだけど、以前の私達はもっとこう、よりブルースをベースにした音楽から始まっていたわけよね。っていうのも、ブルースは当時の私達にとってはやりやすく、かつ自分達でもよく知っている音楽だったわけで。でまあ、思うに、時間が経つにつれて自分達も気づいたってことなんじゃないかな、「私達には他にも色んな音楽ができるじゃないか」って。で、「ひとつやってみよう、そういう音楽もレコーディングしてみよう」と(笑)。

――音楽的にもっとハングリーになってきた、ということですね。

うん。それにまあ、いつまでも同じ3コードに留まっていたくはないわけで。フフフフフッ!

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