——歌とコードだし、アコースティックギターがすごくよく聴こえるアルバムだと思います。その上でレニー・カストロさんのパーカッションに驚いたり(笑)。

NAOKI・KUMI (笑)。

——ラテンテイストや、KUMIさんの歌い回しにR&B的な要素を感じたのがすごく新鮮で。しかもそれが1曲目だったので。それはNAOKIさんがおっしゃった骨格がわかったからこそなんですか?

KUMI それと、ちょっと遊び心っていうのも持てたんじゃないかな。

LOVE PSYCHEDELICO – Might Fall In Love(Short ver.)

——同時に音がすごく近いなと思いました。

KUMI 音は近いよね、今回のアルバム。多分それはレコーディングの工程で、最後のミックスを二人だけでやったのが大きいんじゃないかな。最初に自分たちが音を思いついてから最後の表現まで、全部自分たちの感覚だけでやったっていうのは。だからすごい音が近いと思うし、ある意味、生々しいというか自然というか、そういうものになった気はしますね。

——本質みたいなものが音の大小関わらず伝わる気がします。

NAOKI そうね。どうしても90年代以降、低音のすごい低〜いところが増えて、ヒップホップの影響でロックもそうなってて。今度、さらに2010年ぐらいからハイレゾっていうこと意識して上のレンジも広がって、今、すごい額縁が広いじゃないですか? CDで聴いても。それはもちろん時代の音として大切で、そういうスピーカーで聴けば、そういう楽しみができるように、そういうところもミックスの段階で意識はしたんだけど。90年代って特殊だったんですよ。ヒップホップの人は大きなラジカセで聴こうぜとか(笑)、すごく低音がブーストされてるスピーカーを持ってて、クラブだったらこんぐらいのスピーカーがなきゃダメだよみたいな時代だったと思うんですよね。でも僕ら、いろんな時代の音楽聴いてて思うのは、そういうすごい低いとこの低音とか、ハイレゾのすごい高いところっていうのはやっぱりアクセサリーで、僕らはそのアクセサリーもちゃんとするけれども、実際にみんなの耳に届く帯域というか、中音域っていうところが、なんかみなさんの耳に心地いいアルバムにしたいなっていう意識はミックスの時あったよね? だからその大きなスピーカーでもチェックするけど、小さなスピーカーでも心地いいっていうのは大切ですよね。

——新しいことに挑戦してらっしゃるアルバムだけに、音像を二人のセンスでフィックスしたいのかな? と思いました。

NAOKI でもね、自分たちでミックスをやりたかったんじゃなくて、最後にこう、レコーディングしてきて歌詞書いてレコーディングして、最後のミックスでもう一回カッコよくするみたいな(笑)、そう言う作業あるじゃないですか? もうこの業界の工程みたいなのが。これだけちゃんとやってきて、最後にプロのエンジニアを入れて、もう一回お化粧し直す必要があるのかな? と思って。『サージェントペパーズ(ザ・ビートルズの1967年発売のアルバム)』の時代はそんなのなかったじゃないですか? ま、ミックスはしてるけども、そこでもう一回お化粧して全然サウンドを変えてとかじゃないじゃないですか。で、それがいつからか僕らの世代では当たり前になってて、最後に「さぁミックスどうする?」つって、「カッコよくしようよ!」みたいな、その作業に一回疑問を持とうよみたいなのがあって、そのままみんなに届けちゃえっていうような意識の方が強いよね? 多分。

——商品用にブーストするようなことはやめようと?

NAOKI そうそう、商品化するためにやってるような、それが嫌で。嫌って言うか、疑問を持って自分たちでやって自然にバランスとって鳴らせばいいんだよねって言うのが今回の作品だよね。

——いろんな感情になる楽曲が揃ってると思うので、それを聴き通せるのはある種、音の統一感なのかなと思います。実際2曲目の“Feel My Desire”のストリングスリフで驚いて。

NAOKI これ元々そのつもりなかったんだよね?(笑)。

KUMI 元々はベースラインで思いついて、この「ダダッ、ダッダダ」っていうリフを二人でセッションしてる時に、私がたまたま鍵盤で弾いてみて、そこにストリングスの音をあててみたら「これはリフにしたら面白いかもしれない」って言うのを思いついて、その時「ああ、この曲はいける」と思って(笑)。

【インタビュー】“音が鳴る根源的な喜び” LOVE PSYCHEDELICO、最新作『LOVE YOUR LOVE』で更新した音楽地図 interview_lovepsychedelico_2-700x466
photo by 上山陽介

——オーセンティックなものも入りつつ、部分部分にオルタナティヴなものが入っているアルバムなのかなと思います。

NAOKI ああ、そうかもしれないね。