——それにしても、エレクトロ・ポップみたいな曲もありますし、ブレイクビーツが聴こえたり、R&B調の曲もあって、かつてないスタイルを取り入れていますよね。単純に普段聴いている音楽が反映されているんですか?
J そういうところもあるよ。僕らはそれぞれに色んな音楽を聴くからね。例えば“Water Slides”なんかは確かに「これってほとんどR&Bじゃん」って思ったし、“Making Friends”はヒップホップみたいだ。もちろんどれもミューの曲に聴こえるんだけど、これまでに取り入れたことがない要素を用いている。ヴォーカルについても“Water Slides”でかつてない歌い方を試してみたし、「こんなことやっていいんだっけ?」と自問することもあったけど、何かやってみたいと興味を引かれたら、抵抗せずにやるべきなんだよ。このアルバムではそうやって自分たちを解放して、色んな試みを取り入れられたと思う。
H そうだね。音楽的な可能性を積極的に追求して、バンドのキャラをキープしながらどこまで広げられるか試してみたんだ。今振り返ってみると、“Water Slides”や“Making Friends”は一番実験性が強いかもしれない。でもこういう新しい路線はクールだと思う。これがミューで、僕らはこういう音を鳴らすわけだけど、ミューらしいまま世界を広げることが可能だったわけだからね。だからこそ、こうしてバンド活動を続けるのが楽しくて仕方ないんだ。6枚目のアルバムに至っても、まだ新しい形で自分たちを表現できるなんて、本当にエキサイティングだよ。
——新しい試みと言えば、メンバー以外のミュージシャンが曲作りに参加したのも初めてです。
J 以前も検討してはいたんだけど、これもやっぱり、ヨハンが戻ってきてくれたことの安心感みたいなものが、可能にしたんだと思う。ニックと一緒に書いた曲“Cross the River on Your Own”は彼なしには書けなかった曲だよ。ニックがプレイするキーボードが中心的な役割を果たしているからね。ラッセル・リサックが参加した“My Complications”然りで、あのリフはラッセルだからこそ鳴らせた。そういう意味では非常にポジティヴな展開だと思うし、友達と一緒に曲を書くのは楽しくい、音楽のスケールが大きくなるんじゃないかな。
H それにミューの場合、共作すると言っても、ヒット・シングルが欲しいからってわけじゃない。ほら、外部からソングライターを招く時って通常は、派手なシングル曲が必要な時だろう?
——確かに。「マックス・マーティンを呼んでこい!」って感じですよね。
J そうそう(笑)。
H うん! マックス・マーティンがいてくれたら、僕らもヒット・シングルが書けるかもしれない(笑)。でも今回の共作はそうじゃなくて、僕らが尊敬している人たちと曲を書いたまでで、「ヒット曲を書こうぜ!」ってノリじゃなかったからね。こういうやり方なら、ミューでも共作は可能だと思う。自然に感じられるんじゃないかな。もちろんマックス・マーティンとコラボしたら、それはそれで色々学べることがあると思うけど(笑)。
J “The Night Believer”にしても、参考までに僕がひと通り歌ったものをキンブラに送ったんだけど、彼女はそれを受けて、完全に自分の表現に落とし込んでくれた。当初のヴァージョンとは全然違うし、ずっと良くなったし、面白い曲になっていて……
H 「うわー、いきなりフリートウッド・マックになっちゃったよ!」って(笑)。
——去年キンブラにインタヴューした時、ミューの大ファンだと興奮気味に話していましたよ。
H そうなんだ。彼女は本当にステキな女性だよね。
Mew – “Water Slides”