——スタッフの話をするのを忘れていましたが、マイケルがプロデュースし、リッチ・コスティがミックスを担当するというのは、今のミューにとって理想的チームと呼べるんでしょうか?

H 少なくとも彼らは、このバンドを100%理解してくれている人たちだよ。過去にコラボしたこともあるし、今作は多分バンド史上最も音質に優れたアルバムだと思う。本当にいい音なんだ。マイケルとリッチのコンビネーションでアルバムを作れるなんて、すごく恵まれているよ。

——彼らもコペンハーゲンに滞在したんですか?

J リッチはミックスだけだから来なかったけど、インターネット上でミックスのセッションをやったんだ。Skypeでつなげて。今はちゃんとしたクオリティの音源をその場でストリーミングできるから、みんなで聴きながら「ベースがデカ過ぎる」とか意見を挿みながら進めたんだよ。

H リッチがLAにいて、ヨーナスはサンクトペテルブルグにいて、ほかの3人はコペンハーゲンにいて、一緒にミックス作業ができるなんて、テクノロジーってすごいよね(笑)。

——ライヴ・パフォーマンスについても伺います。2013年の<サマーソニック・フェスティバル>での公演では、一切映像がなくビックリしましたが、今後はライティングで実験するそうですね。

H これまであまりにも長い間ヴィジュアルを使ってきたから、そろそろ新しいことをやるべきだと感じたんだよ。もちろんヴィジュアルは今も好きだから、いつかまた使うことになるだろうけど……って、バンドにいなかったくせに偉そうに言ってるよね(笑)。とにかく趣向を変えていいんじゃないかと思った。毎回ステージに立って、うしろを振り返るたびに同じヴィジュアルを眺めてきたわけだから。それにヴィジュアルをなくすことで、バンドそのものにオーディエンスの視線が集中するようになった。それもいいことだと思う。映像って素晴らしいし、僕らの場合は曲と密にシンクロしていて、ミューの世界の重要な一部でもあったんだけど、今後はヴィジュアルがあったりなかったり、色んな見せ方をミックスしてもいいんじゃないかな。

J ヨハンが言う通り、フォーカスがバンドに移ったことは間違いなくて、そもそもそれがイヤでヴィジュアルを用意したんだよね。視線を逸らすために。でもこうしてバンドとして成長して、ライヴ・パフォーマンスも今やオーディエンスとのコミュニケーションで成立するようになった。体験をみんなで分かち合っているという意識が強まったんだよ。だから興味深い体験になったよ。オーディエンスの反応はまた違うかもしれないけど、僕らがすごくヴィジュアル性の強いバンドであることに変わりはないし、いつかまたステージでヴィジュアルを使うだろうと思う。何しろあのアニメーションはもう12年くらい前に僕が作ったもので(笑)、ものすごく時間がかかったんだけど、そろそろもういいって感じだよね。

——今年はバンドの結成20周年ですよね。特別なライヴやリリースは予定しているんですか?

J 何か考えるべきだよね、きっと。

H うん。でもその一方で、今の時点でそういう風にノスタルジックな気分に耽るのはどうなんだろうって疑問もある。ローリング・ストーンズだったらいいかもしれないけど(笑)、今の僕らにとってそれは、最重要事項じゃないんじゃないかな。『+−』は久々のアルバムなわけで、すごく新鮮に感じられるし、バンド内のヴァイブもかつてなくいいし、人々もミューに関してすごくエキサイトしてくれているから、このタイミングで逆行するように過去を振り返るのは、間違っているように思うんだ。だから30周年に向けて何か考えて、その時にまた話をしよう。

——それにしても、デンマーク出身でこうして草の根的に世界的な成功を収めたインディロック・バンドはほかにいないですし、極めてユニークなポジションを確立したあなたたちは、地元の後続の世代にも大きな影響を与えているんじゃないでしょうか?

J そうだね。若いバンドはどこかスタンスが違うし、その点、僕らの影響もあるんじゃないかと思う。こういう音楽をやっているデンマークのアーティストで、世界に出ていって、海外のレーベルと契約するっていうのは前代未聞だったから。ただ、この20年に世界は随分変わったよね。今はインターネットを介した色んなアプローチがある。音楽活動そのものが全然変わった気がする。もしこれからバンドを始めるとしたら、全然違うやり方をするだろうし。

H デンマークの音楽業界では間違いなく、僕らはリスペクトされているよ。常に自分たちのやり方を貫いてきたし、商業志向にも走らなかった。頑固に自分たちのやり方にこだわってきた僕らを、最終的にみんな受け入れてくれたと思う。そして君が言う通り、草の根的に支持層を広げたわけだから、バンドとして最もオーガニックな方法で成長した。ヘンにハイプされたこともない。同業者に愛されていて、多くのバンドが僕らのファンだと言ってくれている。だからすごく健全に成長したと思うし、音楽的にはタイプじゃなくてもリスペクトしてくれるんだ。それってクールなんじゃないかな。

Mew – “Comforting Sounds”(Live at NorthSide 2014)

(interview by 新谷洋子)

Event Information

サマーソニック 2015
2015.08.15(土)@QVCマリンフィールド&幕張メッセ(東京会場)
OPEN 9:00/START 11:00
前売り1日券 ¥15,500
前売り2日券 ¥28,500
プラチナチケット ¥30,000(サマソニ1日券+プラチナ特典)

2015.08.16(日)@舞洲サマーソニック大阪特設会場(大阪会場)
OPEN 10:00/START 11:00
前売り 1日券 ¥13,000
前売り 2日券 ¥23,500
プラチナチケット ¥25,000(サマソニ1日券+プラチナ特典)
※どちらの日程にどの会場に出演するかは後日発表

Release Information

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