夏には<サマーソニック2015>で来日も決定しているデンマーク出身の4人組オルタナティヴ・ロックバンド、MEW(ミュー)。先日4月2日(木)、Apple Store表参道店にて開催されたアコースティック・ライブも大盛況のうちに幕を閉じた。

来る4月22日(水)には、約5年半振りとなるニュー・アルバム『+-(プラス・マイナス)』をリリースする。今作は、ロックからプログレまでを自由に彷徨う美しく大胆な音楽性で知られる彼らのクリエイティヴなDNAが最大限に発揮された、ミューらしいダイナミックなポップ・サウンド全開な作品に仕上がっている。

ハービー・ハンコック、サウンドガーデンからレッチリまで数多くの作品を手がけたアメリカ人プロデューサーのマイケル・ バインホーンとバンド自らによってプロデュース。ミックスはマーズ・ヴォルタやフィオナ・アップル、アッシュらとの仕事で知られるリッチ・コスティが担当。コペンハーゲンでレコーディングされ、収録曲“My Complications”には数年前アメリカ・ツアーで出会ったというブロック・パーティのギタリストラッセル・リサックもゲスト参加している。

そして、ミューのメンバー、ヨーナスとヨハンが前回4月2日(木)に来日した際のインタビューが到着した。最新作『+-』のことや、ライブパフォーマンスについて語っているインタビューは必見だ。

★ミュー『プラス・マイナス』期間限定アルバム全曲試聴はこちら!

Interview:Mew[Jonas Bjerre(Vo,Gt)、Johan Wohlert(Ba)]

——6年前にインタヴューした際、今後はもっとスピーディーにアルバムを作って行きたいと話していたんですが、結果的にはどんどん制作期間が延びていますよね。

ヨーナス(以下J) うん。そのことはよく話題に上るよ(笑)。でも今回のアルバムを作ってみてたくさん学んだことがあって、まずひとつは、4ピース・バンドとして音楽作りをするほうが遥かに楽で、かつ出来もいいってこと。前作は本当に苦労したからね。そして確かに僕らは、やたらディテールにこだわってしまうわけなんだけど、それがまさにこういうサウンドを鳴らせる所以でもあるんだよ。ほら、僕らが画家だとして、森を描こうとしているとする。で、まず木を描き始めるわけだけど、「あ、木にはリスがいたりするほうがいいんじゃないかな」って思ってリスを加えて、次は「何か実がなっていたりするといいかも」……なんて調子で作業をしているうちに数カ月が経って、ふと、森を描かなくちゃいけないのに木が1本しかないってことに気付く。「大変だぞ!」って(笑)。

ヨハン(以下H) そりゃうってつけの比喩だね(笑)。

J うん。だからこれも、ミューをミューたらしめるプロセスの一部なんだよ。

——じゃあ一応、もっと速く作ろうと意識はしていたんですね。

J そうだね。少なくとも、まさかこんなに時間がかかるとは思ってなかった(笑)。でも色々あったんだよ。最初は前作と同じく3ピースで曲作りを始めたんだけど、なんだかパターンに陥ってしまったみたいで、前作と似たノリの曲ばかり生まれてしまった。それは望んでいなかった。どのアルバムにもそれぞれに異なる、独自のサウンドを与えたかった。それからプロデューサーのマイケル・バインホーンが合流して、彼が「ヨハンを呼び戻さないとダメだよ。バンドの核を成す存在が必要だ。またちゃんとした4ピースのバンドに戻るんだよ」と諭されたのさ。そんなわけで僕らはヨハンと話して、最初は試しに曲作りをちょっとやってみた。正式にバンドのメンバーになるってことは、単純なことじゃないからね。たくさんの責任が伴う。だから、やってみて様子を見ようって感じだった。でもすぐにまた、昔に戻った気分になれたんだよ。そして音楽作りもずっと楽になったし、楽しくなった。ま、それでもやっぱり時間はかかったんだけど(笑)。マイケルも細部までこだわり抜く人で、何もかも完璧じゃないと気が済まないから、うん、時間がかかるもんなんだよ。

——マイケルはセカンド『And the Glass Handed Kites』もプロデュースしたわけですから、何かが足りないとすぐ気付いたんでしょうね。

J うん。

H マイケルは当然前作『No More Stories…』も聴いていて、多分4ピースとしての僕らのアプローチを好んだってことなんだと思う。それに4人で作ればおのずと、前作とは違う音になるわけで、新しいことをするには彼にとって自然な選択だったんじゃないかな。「4ピースに戻って君らのエッセンスに立ち返るんだ」ってね。つまりバンドらしい音を鳴らそうってこと。

——これ以前もバンドに戻る話はあったんですか?

H 2回くらいあったかな。でもタイミングが合わなくて、一旦もう諦めていたようなところもあった。まだ状況が整っていないような気がしたんだ。そういう意味で、マイケルが果たした役割は大きい。マイケルが僕ら全員に、機が熟したってことを説得してくれたようなものだから、彼に感謝しないとね。

——それに、なんだかんだ言ってヨハンの代役は探さずにトリオとして活動を続けて、彼が戻れるように席を空けておいたようなところもありますよね。

J うん。これまでずっとベースはバスティアンっていう素晴らしいミュージシャンに担当してもらっていて、実はヨハンが自ら、辞めた時に彼を見つけてくれたんだよ。ちょうど全米ツアーを始めようって時だったからね。ほかにもニック・ワッツがキーボードを長年プレイしてくれているんだけど、このバンドの成り立ちを考えると、代わりは見つけようがなかった。僕らは6歳の時に出会って、同じ学校に通って、音楽的にも一緒に育ったようなものだ。ほかのミュージシャンたちとプレイするのも楽しいし、新作では積極的にそれを実践したんだけど、僕ら4人のケミストリーは何ものにも代えがたいし、ほかの人で置き換えようとしても無理なんだよ。今こうして4ピースに戻ってみて改めて感じるんだけど、4人とも全く違うタイプの人間だし、音楽的なヴィジョンもそれぞれ違うのに、なぜかバンドとして成立する。その音楽的ヴィジョンのどこかに、ぴったり重なる部分があって、そこにバンドが成り立っているのさ。

Mew – Satellites(Official Video)

次ページ:それぞれの曲が、その曲にとって自然な形でポテンシャルを全うできるよう心掛けた