––––『Bedroom Orchestra』や1000回youtubeで更新を続けた「Neat’s TV」を含め、リスナーからも“見えた”ところが多いと思います。
たしかに以前は何をやっても「何やっちゃってんだろ? この人」って。機材がいっぱいあって、ライブでも現地のPAの方にちょっと迷惑かけちゃったりとか。わたしが何者なのかわからない状態過ぎて、何をしでかすのかわかんない、“不思議さん”みたいだったけど、今はそういうのやっても「ああ、Neat’sさんだったら」って言ってもらえるようになりました(笑)。
Neat’sTV vol.1000
––––この1年のファンの反応はいかがでしたか?
わたしはグライムスとか好きだし、海外の女の子が自分で全部やっちゃうっていうのにすごいワクワクしてたんですけど、ファンの人にとっては「え? 自分でやっちゃうってどういうこと? Neat’sひとりで?」っていろいろハテナが浮かんでるところに、「こういうことなんだよ」って見せ続けて、今は何をやっても「Neat’sは毎回、驚かせてくれる」っていう反応に変わってきましたね。
––––Neat’sさんの影響で、自分で始めた人とかいないんですか?
あー、いますよ! 機材のこととか聞かれます。「何使ってるんですか?」とか。
––––どうやるのかわかると自分でも作りたい人も出てくるでしょうし。
うん。そうでしょうね。サンレコの企画(※「サウンド&レコーディング・マガジン」の企画でNeat’sの“よるのいろ”を砂原良徳ら4人が編曲)で載せてもらって。ああいう企画もすごく後押ししてくれたし、「宅録女子Neat’s」の看板が背負えた事柄でもあったし。
––––正直、掲載には驚きましたか?
あ、わたしでいいんだ? って(笑)。そんなに知識ないから、いいなって思うものをコレクションするみたいな感じでLogicの内蔵音源いっぱい使うし。それでも取り上げてもらえるんだと思って、すごくうれしかったです。
––––自分の音楽の目標がなんなのか? ですもんね。
そうですね。前は妙に知識つけようとしたりして、電源までこだわってる人がいるとか聞くと「やっぱプロはそこなんだ!」と思って、いろいろ調べてみたりしたけど、それで音が違うのかもよくわかんなかったから、「わたしがワクワクするのはここじゃないな」と思って。わからないことは人に任して、自分がわかるところを突き詰めるっていうやり方に変えました。
––––それでもやっぱり機材や楽器は増えたのでは?
そうですね。おもちゃっぽいピアノとか、鈴とか。オムニコード(弦楽器のような演奏方法の電子楽器)は面白いです。
––––やたらに増えてるわけじゃないんですね。
やっぱり好きなモノは並べてみるとつながってるんですよね。集めてみて「あ、わたし、こういうのが好きなんだな」と。ちょっと古いものとか、ちょっと壊れてるものとか(笑)、好きですね。ちゃんとしたチューニングよりちょっと外れてる音とかにキュンとしたりとかしますね。なんかあどけないというか、子どもの心に自分の音楽としてのあこがれというか、輝きがあるから、拙かったりするものは愛しいですね。
––––逆に今のNeat’sさんにはいらなかったものって?
サイバーなもの? 宅録だからけっこうデジタルな音って思われがちだし、グライムスとかもかっこいい感じだけど、わたし尖った音っていうのは、本質的には好きじゃないので。宅録だけど今回もバンドサウンドだし、あったかい鉄琴とか、それこそティンパニみたいなぼわっぼわしたおっきい音が大好きなので、そこは違いますよね。
––––シンセも限られたものになる?
そうです。アナログっぽいシンセのほうが好きなんだと気づきました。
––––Neat’sの世界観に共感して参加してくれる各々のジャンルのプロの手も入ってきてますね。
そうですね。アイデアはものを知らない柔らかい頭で発想して、それをプロのクオリティで出すっていうのが目標だったから。今回は今まででいちばんそれが磨かれてるなと思いますね。
––––今回のメインビジュアルですが、これヘッドドレスの域を越えて、髪の毛と同化してますよね。
ヘアメイクの子と1年前ぐらいに知り合って。1年ぐらいかけて、ライブとかツアーとかいろいろ話ししながらNeat’sのビジュアルをもんでいって、ここに辿り着いたんですけど、やっぱり彼女が作るものは私とはレベルが違うし、表現したいことがちゃんと人に伝わる形で出せるから、今、すごく心強いパートナーですね。
––––ちゃんと伝わってないと形にならないし。
彼女はNeat’sの音楽のファンなんですよ。音源もいち早く聴いてもらうと、「今、この曲を聴いて泣いています」ってメールが来る(笑)。それぐらい理解者なんです。
––––わかります。清々しいまでに孤独な曲が多いから。
ははは。最近、仲間増えてるんですけどね。
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