ーー初めての入居者から数年が経ちましたが、5階は空室がでれば入居という状態だと聞きました。これまで、セルフリノベーション物件であるロッコーハイツを運営してみて苦労したことはありますか? 

僕はやはり細かい専門知識を持っていないので、入居者に専門的なことを聞かれてもわからないことが多々あります。どうにか力になりたいと思いますが、すべての要望に対応できるわけではないので、歯痒く感じるときがあります。また、季節により左右されますが、昼間は農業がベースにあるので、ロッコーハイツに全ての力を注ぐことはできません。早い時には、朝3時に起床し果樹園へ。果樹園の作業を終えた夕方から、ロッコーハイツの作業。そして音楽。これらを平行していくことは今でも大変です。

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ーー思い出や、印象に残っている入居者さんはいますか? 

現在も住んでいる方で、ゆっくりとしたペースでリノベーションをしていますが、とてつもない力の入れ具合の住人さんがいます。窓枠を丸ごと交換したり、バランス釜を給湯器に変更したり、部屋で使用しているパーツをそれぞれ海外から仕入れていたり。また、それに対して使う工具も海外から輸入したりしているんですよ。
ロッコーハイツは家賃を安く設定していて、ひと部屋4万から5万程度ですが、この方はリノベーションの素材からパーツ、工具など、色々含めると相当な金額がかかっていると思います。近く完成を目指しているようですが、この部屋はこの建物内でも別世界ですね。

ーーその入居者の方は、ライフスタイルに合わせて生活空間をプロデュースできるセルフリノベーションを最大限に楽しんでいるんですね。

ロッコーハイツでは内装のリノベーションに関して制限を設けていません。自分で自分の生活空間を作りこむことができます。それぞれの感覚があると思いますが、やり込む人はとことんやりこんでいる印象がありますね。それに、リノベーションの様子を公開していくと自然と独創的な人が集まってきます。

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ーーロッコーハイツ、そしてセルフリノベーションの魅力とはなんでしょうか?

先ほど少し触れましたが、自分の過ごしやすい部屋を自分自身で造り上げていくことですよね。これは生活する上で、とても大切なことだと思います。友達が沢山集まる部屋にしたいなら、カウンターを作って、バーみたいにするのも良いですよね。音楽をする人なら、防音に重点をおいた部屋作りをして、好きな音楽に思いきり触れ合う。本が好きなら本棚を沢山置いて図書館みたいにしても面白いと思います。恋人と意見を分かち合いながら、互いの理想に向けて共同作業というのも夢がありますよね。壁を抜いて巨大な1ルームにするのも、壁を作って小さな小部屋を作るのも、本当に思うがまま。自分がやりたいように、過ごしやすい環境を見つけて、居住空間と共に変化できることにも楽しみがあると思います。


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ーー初心者や未体験の人でもできるちょっとしたリノベーション、賃貸の場合で退去時に大家さんへ迷惑のかからないプチセルフリノベーションがあったら教えてください。



考え方ひとつで、できることは沢山ありますよ。まずホームセンターを散歩してみるのはどうでしょうか。沢山の工具や資材を見ると、「これは自分の部屋のどこかに使えそうだ」そんな風に直感が働いたりしますよ。気になる工具や資材を見つけたら、スマホで使い方を調べてみる。大きい木材などを購入すると車の貸し出しをしているお店もありますし、配送をしてくれるお店もあります。ホームセンターはとても便利ですよ。

ーーホームセンターは工具や資材がそろっているだけではなくて、配送までしてくれるんですね。

それと、リノベーションというよりDIYになりますが、自分が住んでいる部屋の面積にあった家具を作るだけでも印象はとても変わりますし、それだけでもとても過ごしやすくなると思います。後は、資材を支えるものを使って壁を作ってしまえば、自分好みの部屋が作れます。考え方と、やり方次第で生活空間はどうにでもなるはずです。

―現在、広く認知されているリノベーションカルチャーについて、山口さんが思うことや考えることはありますか? 

人からの影響ではじめた口なので、僕が言うのもおこがましいと思いますが、リノベーションという言葉は、本当によく知られるようになったと思います。この流れの中で、まれにリノベーション物件といわれる賃貸情報を見ていると、「家賃が高いのでは?」そう感じるときがあるんです。古い物件を解体し、改装に手が入っていることは理解できますが、改装前と比較すると、家賃がとても高く設定してある物件が増えていることを知って、少し驚いています。僕がアパート運営をするようになってからの4年で、リノベーションという言葉や内容にも、変化が起きていることを感じます。リフォームとリノベーションの境は、ほぼなくなったような印象を受けていますが、言葉が独り歩きしているようで……このまま一過性のブームで終わらないで欲しいなと思いますね。

ーーリノベーションやDIYはブームですよね。私は専門家ではありませんが、リノベーションという言葉は以前より広義に捉えられ、より曖昧になっている感覚がします。

僕はこの業界やリノベーションカルチャーに対して、常に最先端の情報をキャッチしているわけではないですし、他の運営者さんのことをよく知らないんです。僕はまわりのことは気にせず、ロッコーハイツで地道に面白そうなことはやってみる。入居者さんにやってもらう。そうゆう風に生活していきたいですね。やはり、セルフ(自分自身で)リノベーション(性能を向上させて付加価値を与える)がいいなって思います。

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ーー山口さんが感じるセルフリノベーション物件の運営や楽しさとはなんでしょうか?



主観となりますが、自分自身で憧れた部屋を造ること、そこで生活をしている人を想像すること。大きなプラモデルや、小さい女の子が好きな、なんとかちゃんハウスとかありますよね。そういったものの等身大版という感覚でしょうか。そんな風に、ひとつひとつ自身の手で組み上げていく楽しさや魅力があると思います。地味かもしれないですし、少しずつしか進歩はしないかもしれません。それでも自身に合った空間を、自身のペースで変わらずに楽しみながらやっていきたいです。僕自身も常に変化していくので、その中でまた新しいペースを掴んで、賃貸や住居以外にも、お店など色々できたらいいなと思っていますが、それはきっとまだまだずっと先の話になると思います。それでも、夢のように目標を持つと、アパート運営も楽しいですよね。

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山口稔史(NEN)オフィシャルサイト ロッコーハイツ山口農園 公式サイト