ーー絵にかいたような団地風の建物だったんですね。山口さんは運営をはじめた当初より、セルフリノベーションを提唱していますが、リノベーションとセルフリノベーションの違いとはなんでしょうか?

リノベーションは、ウェブで調べれば、すぐに答えが出てくると思います。セルフリノベーションと言うと、奥深い感じにとらわれてしまいそうですし、感覚的なものなので言葉に表すのは少し難しいですが……自身の言葉で表現するなら、「自分自身が生活をする場所を、想うように描いて、作り上げていくこと。」でしょうか。選択肢は人それぞれなので、セルフでなくても、業者さんに依頼して、住む人が生活しやすいように、家や部屋の造りを変えてもらう。それでもいいと感じます。

ーーリノベーションという言葉は頻繁に耳にしますが、リフォームと言い回しが変わらないものであったり……言葉で表現するのは難しいものだとも感じます。

あくまでも僕は”セルフ”です。僕自身があまり人に意思を伝えるのが得意ではないですし、性格が優柔不断なので、考え方もコロコロと変わります。こうゆう人間だからこそ、リノベーションをやっている最中にも「こうした方が快適になるんじゃないのかな?」という風に、作業の途中で内容を変えることもあります。そうすると、業者さんを通さずに、自分の腕一本で作り上げた方が気持ちも楽ですし、より自分自身が快適で過ごしやすい部屋や空間を作れるのでは。とういう気がしています。また、作業に慣れることや実際に生活をしてみてから、より自身の生活スタイルにあった空間へと変化させることもできるという部分も”セルフ”のいいところではないでしょうか。

ーー“セルフ”なら生活をはじめてからでもライフスタイルにあった空間をつくることができるんですね。

ロッコーハイツでは自身のライフスタイルに合うように、部屋や空間を自分の手でプロデュースすることで、生活を豊かにする楽しみがあると思います。それでも友達や知人に、大工さんや電気工、設備屋さんがいたら、そういったコネクションは絶対に頼るべきです。こだわりを追及し、より手の込んだリノベーションとなると、免許が必要なケースも多々あります。そういった場合に友人や知人に業者さんがいると、気持ちがとても楽になります。もちろん、親しき仲にも礼儀ありですけどね。

生活空間をプロデュース。セルフリノベーションというカルチャー rh_before780

ーーロッコーハイツをはじめるにあたり、どのような作業からスタートしたのでしょうか?

本当に無知の状態からのスタートでした。まずはウェブ上にある数少ない情報源から、いろいろなことを調べて、試行錯誤で作業をはじめました。しかし、壁の抜き方、木の壁を外すことさえもわからず……。バールで釘をひとつずつ抜いていけばすんなりと外せるのに、大ハンマーを振りぬいて、木の壁をぶち抜いたりしていました。さらにブレーカーを落とさずに配線切って感電しそうになるなど、本当に危険な体験もしましたよ。今では考えられないほど、スタートは滅茶苦茶でしたね……。

ーー現在のようにリノベーションやDIYの情報も多くなかったですし、当初はかなり苦労したんですね。

試行錯誤を重ねることで、少しずつ慣れて、成長をしたという感じでしょうか。はじめたころは考えている余裕なんてなかったですし、リノベーションをすることが楽しくて、苦労という感覚はありませんでしたよ。なにより「まず、ひと部屋を作らなくてはいけない。そこからが本当のスタート。」そう感じていました。

生活空間をプロデュース。セルフリノベーションというカルチャー rh_after780

ーーそして試行錯誤を重ねて完成したひと部屋目。初の住人はどのように入居してきたのでしょうか?

なんとか5階のひと部屋をきれいに完成させましたが、5階のほかの部屋はすべて空室で、昭和風ノスタルジックのままでした。ここからどうしたらよいものかと考えながらも、ひとまずは完成した部屋をモデルルームとして公開して、入居者を待ちながら半分自身の生活の拠点にしていました。そのような状況がしばらく続きましたが、当時お世話になっていた不動産屋さんの関係で、『ぶらり途中下車の旅』にロッコーハイツが紹介されることになりました。ロッコーハイツのほかの部屋は完全に手を付けておらず、ビフォア・アフターの状態を撮影することができたからだと思いますが、そこをディレクターさんが気に入ってくれたみたいです。その放送を見て問い合わせをくださった方が、最初の入居者となりました。その方の入居時には、僕も一緒にお手伝いもしましたね。

生活空間をプロデュース。セルフリノベーションというカルチャー rh_sagyou780

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