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日食なつこ、9月16日(水)にタワーレコード限定でリリースされる1stシングル『ヒーロー失踪』について、そしてミュージシャンとしての来歴と目指す方向性について、彼女に話を聞いた。

ピアノとドラムの二人だけでステージに立ち、ピンと空気が張り詰めるような演奏を繰り広げる。弾き語りのスタイルで、静かな、しかしぐいと胸を掴まれるような歌を歌う。日食なつこは、そういうシンガーソングライターだ。今年の<フジロック・フェスティバル>でもアヴァロン・フィールドに出演し、通りがかりのお客さんも引き止めて大きな盛り上がりを作っていた。これまで数枚のミニアルバムをリリースし、箭内道彦などのクリエイター、赤い公園や小谷美紗子など対バン相手の実力派ミュージシャンを中心に高い評価を集める24歳の彼女。9月16日(水)にタワーレコード限定でリリースされる1stシングル『ヒーロー失踪』で、その評判はさらに広がっていくに違いない。

シングル曲について、そしてミュージシャンとしての来歴と目指す方向性について、彼女に話を聞いた。

日食なつこ『ヒーロー失踪』トレイラー

Interview:日食なつこ

——今年、初めて<フジロック・フェスティバル>(以下、フジロック)に出演されたんですよね? どうでしたか?

出る前から、すごく楽しみにしてました。やっぱりアーティストとして<フジロック>に出演できるというのは誇りだと思うし、自分にとってもすごく大きな価値になったと思います。

——かなり喝采を集めていましたよね。

みたいですね。出番が夕方から夜になる時間帯で、私からは暗くてどんな感じなのかわからなかったんですけど。でも、今回の『ヒーロー失踪』に参加してくれたギターの方が個人的に<フジロック>に遊びに来てて、私のステージを観にきてくれていて。「ほぼ毎年<フジロック>に来てるけど、あんなに盛り上がってるアヴァロンは初めて観たよ」って言われて、すごく嬉しかったです。

——ドラムとピアノの二人体制のステージで非常にスリリングなライブでしたが、あのスタイルでやるようになったのは最近のこと?

最近ですね。去年くらいからあのスタイルを始めたんです。ピアノにベースやギターを重ねると、音程がぶつかるところが多くて、格好よく仕上がるんですけれど「なんか違うな」と思うことが多くて。どうにかしてピアノを殺さず、勢いを増すだけのアレンジができないだろうかって考えて、削って削って残ったのがドラムだったんです。その形でライブをやってみたら、それまでにないくらい評判がよくて。そこからは「これでいこう」ってなったんです。

——最近は、赤い公園や小谷美紗子さんのような、実力もあるし個性も強い女性アーティストとの対バンの機会もあったと思います。こちらはどうでしたか?

第一線を走ってる経験豊富な方とのツーマンという形が多かったんで、胸を借りるようなところもあって。多少荒々しくなってもいいから、傷を残すつもりで攻めていこうっていう気持ちでした。実際、自分がアウェイだと思うときほど「攻め」のスタンスになるんです。安心できるホームな環境よりも、むしろそっちのほうが得意かもしれない。お客さんがお金を払って生で見にきてくれるんだったら、単に綺麗なだけじゃなくて、どこか抉るような印象を与えて帰ってもらいたいと思うんで。

——抉るような感覚というのは、演奏だけではなく曲の印象にも共通しますよね。1stシングルの『ヒーロー失踪』も、聴いた人の耳に強く印象が残るような楽曲になっている。この曲はどういうところからできたんですか?

最初に作ったのは違うものだったんです。“ヒーロー失踪”という曲名はまだなかったんですけれど、ヒーローが登場する曲で。聴き手をめった打ちにしながらも最後は優しく救ってくれるという内容だった。でも、いざ完成して周りのみんなに聴かせても「なんかピンとこないなぁ……」という感じで。傷がなかったんですよね。綺麗にまとまっちゃっている。だから、全部散らかしたままにして、聴いた人を全く救わない方向で書き直してみたんです。それで最終的にはヒーローも出てこないし、誰も救いに来ない結末を叩きつけるような形にした。そうしたら曲に強みが出た。

次世代SSW・日食なつこ、新作や目指す方向性について語る 260-LDKCD_s

『ヒーロー失踪』ジャケット

——最初とは逆の形になったんですね。

そうですね。自分でもびっくりしました。救いたい気持ち、聴いてくれる人に優しくしてあげたい気持ちはあるんですけれど、でも本当に救われたい人って傷をなでてほしいんじゃなくて、その傷のさらに奥を抉ってほしいんだろうなあって考えて。それで書き直してこういう曲になったという。

——“ヒーロー失踪”っていう曲も、最初は救われる対象がいた?

そうですね。私が曲の中で「ヒーロー」という言葉を使う時は、必ずボロボロで救いようのないような存在、救われる対象がいますね。

——で、最初はその人が救われるというストーリーだったけど、そしてそれがしっくりこなかった。リアルに感じられなかったからということでしょうか?

はい。その通りです。小説や映画を見ていても、なんだかんだで主人公が救われて終わるんですよね。そういうのを見ていると、やっぱりフィクションなんだなって思っちゃう自分がいて。リアルは……どんなに酷い状況になっても救われない時は絶対に救われないし、結局そういう方が話を聴いていて身をつまされるし、そういう存在の曲があってもいいんじゃないかって思って。

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次ページ:自分ではEXILEと同じことをやってたつもりだったんですけど、気づいたらこんな感じになっちゃったんです(笑)。

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柴 那典/しば・とものり

柴 那典/しば・とものり

ライター

1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、WEB、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA」「MUSICA」「リアルサウンド」「NEXUS」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。「cakes」にてダイノジ・大谷ノブ彦との対談連載「心のベストテン」、「リアルサウンド」にて「フェス文化論」、「ORIGINAL CONFIDENCE」にて「ポップミュージック未来論」連載中。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)がある。

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