ダンス・ミュージックから正統派R&Bまで才能の輩出が止まる気配を見せない街、ロンドン。ここからまた新たな才能が現れた。そしてこの二人は、奇をてらうことのないストレートなポップスでこの1年、ロンドンを震源地にじわりじわりと評価を固めつつある。それがジョセフィーンとアンソニーの男女エレクトロ・ポップデュオ=オー・ワンダー(以下、OW)だ。

二人はデビュー・アルバム『オー・ワンダー』を12月にリリースしたばかり。約1年前からサウンド・クラウドに毎月1曲ずつリリースしてきた曲をまとめたデビュー作は、お世辞抜きに全く捨て曲のない素晴らしい出来映え。ハイプ・マシーンやSpotifyを始めとしたストリーミング・サービスでの再生回数は数千万回を超えているのも、そのクオリティの証拠。そんなふたりのロンドンにあるスタジオにはこんな4つの決意を記した貼り紙がある。

「私たちは素晴らしい曲を書く故にパブリッシング契約を獲得する」
「私たちは私たちのアートによって評価される、引く手数多のソングライターである」
「私たちは全てのことが可能だと感じ、『イエス』に満ちた人生を送る」
「音楽が私たちに素晴らしい生活を与えてくれ、そのおかげで私たちは世界中を旅して回る」

驚くべきことにこれら全ての決意は既に現実になった。出会いから4年余り、二人がOWとなり、今日に辿り着いた軌跡について二人はツアーで多忙な中、丁寧に語ってくれた。

Oh Wonder – Album Sampler

Interview:Oh Wonder(Josephine Vander Gucht、Anthony West)

OWの楽曲において互いが寄り添うように美しいコーラスを奏でるジョセフィーンとアンソニー。それぞれの音楽的な影響はとても似ていて、そして作曲のプロセスは独立したプロセスではなく、全てのプロセスにおいて緊密なコラボレーレションが基本になっている。

――まず2人が最初に夢中になった音楽やバンドについて思い出せますか?

ジョセフィーン・ヴァンダー・ギュット(以下、ジョセフィーン) 私は多分、デス・キャブ・フォー・キューティーの“Summer Skin”だと思うわ。iTunesで、その週のフリー・シングルだったの。私はその時14歳くらいだった。曲をダウンロードしてすぐにハマったの。その曲を聴いて、彼らの他のアルバムも全部聴いてみたいって思ったし、彼らのショーも見に行くようになったのよ。その時からデス・キャブ・フォー・キューティーのファンになったの。

Death Cab For Cutie – “Summer Skin”

アンソニー・ウエスト(以下、アンソニー) 僕が最初にハマったのはザ・シネマティック・オーケストラ。“To Build A Home”って曲があるんだけど、パトリック・ワトソンがフィーチャリングされていて、そこから4年間ずっとパトリック・ワトソンを聴き続けているんだ。

Cinematic Orchestra – To Build A Home(feat. Patrick Watson)

――それらの曲にハマった理由は?

アンソニー 歌詞がすごく詩的だと思うから。歌詞にストーリーがあるから、すごく繋がりを感じるんだ。

ジョセフィーン 私たちって、二人ともピアノがベースの曲の大ファンでもあるの。あと、2曲ともすごくシンプルな曲よね?

アンソニー だね。

ジョセフィーン シンプルなメロディに……。

アンソニー 美しい歌詞。

ジョセフィーン そうね。美しい歌詞。そういった曲にはすぐに惹き付けられるわ。

――歌詞はOWにとって重要な要素ですよね?

ジョセフィーン かなり重要。歌詞が上手く書かれた作品なら、どんな曲だって好きだわ。自分たち自身を表現するにあたって、歌詞を書くのって一番大変な作業なの。10ワードでフィーリングをとらえたり、人に何かを感じさせるのって本当に難しい。

アンソニー そうだね。人に何かを感じさせるものにしないと。自分自身だけのために書いても、人が繋がりを感じられないから、内容を普遍的にするのは大切だと思うね。

――歌詞は二人で書くんですか?それともどちらか一人が主に書くのでしょうか?

ジョセフィーン 歌詞は二人で一緒に書くの。一緒に書く事で要素が増えるし、抽象的なものがより普遍的になるんだと思う。だから、そっちのほうがいいのよね。

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