お互いへの絶大の信頼をベースに、自然だが極めてインタラクティブなスタイルで曲作りを行っているOW。彼らの魅力は楽曲だけではなくて、シンプルでありながらもとてもイマジネーションの湧いてくるその歌詞でもある。ふたりはどんなアプローチで歌詞を書き、何を伝えようとしているのだろうか?

――歌詞についてですが、凄く思考を喚起されるような特徴を持っているように感じます。ふたりは曲のなかで我々に何を訴えようとしているのですか?

ジョセフィーン 私たちが伝えようとしているメッセージ、もしくは大切にしているのは、人と人の繋がり。だから私たちの曲の多くは、”周りに誰もいないというのがどんな感じか”に関してだったり。

例えば“Heart Hope”っていう曲に関して言えば、世の中では最近の恐ろしい出来事を含め色々なことが起こっているし、テクノロジーは急激に進化して、超高層ビルがそこら中で建てられて、その一方で食べ物を買えないような人たちも存在している。本当に様々なことが自分たちの周りで起こっているわけだけど、私たちが人間という事実は変わらないし、何が起こっているかは関係なく、お互い助け合うことが一番だということを歌っているの。

物事を大きく捉えて、世界を一つと見なすことが大事だと思っているの。自分自身の生活にフォーカスを置くのは簡単だけど、それよりも広い世界において皆が愛し合って、コミュニティを築き上げることが大切だと歌っている。それが、私たちが自分たちの音楽を通してやりたいと思っていることなのよね。そういったコミュニティを築き上げていきたいの。

リスナーからメールをもらったりすると、それが少なからず出来ているような気がするわ。彼らのことを直接知っているわけではないし、小さな範囲かもしれないけど、誰かの役に立てていると実感出来るの。10人でもいいから、力になれているとしたらそれは素晴らしいことだと思う。それこそが、私たちが成し遂げたいと思っていることだから。

――ということは、メッセージは常に明確で、抽象的な歌詞を書くことはあまりないんですね?

ジョセフィーン ないわね。

アンソニー 僕たちがライブでプレイするのが好きな曲の中に“Landslide”って曲があって、その曲のコーラスに《I’ll be there for you》というフレーズが出てくるんだけど、オーディエンスを見ると、皆が一緒になって歌っているんだ。それを見ていて、一人一人の《I’ll be there for you》にそれぞれの意味が込められているのがわかった。何かマジカルなものを感じたね。

――では、ここで少し俯瞰的な質問をさせてください。OWだけで他にはない自分たち独自のスタイルやサウンドのアイデンティティって何だと思いますか?

アンソニー それは今から追求していくつもりだよ。次の作品の曲も書き始めたばかりだし、まだツアー中でもあるから。これから世界中を回るから、そこからまた曲作りの色々なインスピレーションを受ける事が出来たらいいなと思う。文化が全然違うから、日本なんて特にそうだね。日本に行ったら、これまでとは全然違う曲が出来上がるかもしれない。来年同じ質問をされたら、しっかりと答えられるようになっているんじゃないかな。

Oh Wonder – Drive

彼らがサウンド・クラウンドやハイプ・マシーンで注目を集めたのは約1年前。話題になっていたのは「毎月1曲ずつ新曲をリリースする」というその発表方法。そして、リリースされていく楽曲のクオリティの高さから彼らの人気と評価はハイプ・マシーンなどを介しながら雪だるま式に拡がっていった。アルバム・リリース前にネタ明かしをしてしまうことにもなったわけだが、このアイデアにはどんな狙いがあったのだろうか?

――毎月新曲を1曲ずつリリースしていく手法についてですが、このアイデアはどこから来て、やってみて実際にどうでしたか?

ジョセフィーン あれは私たちのアイデアよ。スローペースのお決まりのリリースの仕方ってあるじゃない?曲が何曲が出来上がるまで待って、そこからリード・シングルを選んで、そこから売り込んで行くっていうやり方。だからリリースとリリースの間に半年くらいかかっちゃう。

でも私たちは、何かそれとは違う新しいことにチャレンジしたかったのよね。1ヶ月に1曲リリースするという経験は、私たちに何かを生み出す力を与えてくれただけじゃなく、そのお陰で仕上がった時点で曲をリリースすることが出来た。できたてホヤホヤの作品をすぐにオーディエンスとシェアすることが出来たから、何かよりパワフルなものを皆に与えることが出来たと思うの。作品が新鮮だからこそ、私たち自身もその作品に対して興奮しているし、同時に、良い意味でまだ作品に対して未知の部分があってそわそわするのよね。

あの経験からは多くを学んだわ。プレッシャーの下での作業もこなせるようになったし、人々の反応も聞けたし、リリースすることにも慣れて、その度にエキサイティングな気持ちになれるようになった。曲が出来上がった時のその興奮を、同じタイミングで皆とシェア出来たっていうのがすごく良かったと思うわ。

――大変ではなかった?

アンソニー 実のところ、簡単だったし楽しかったんだ。ここまでのリアクションがあったからこそだとは思う。曲をリリースする度に毎月”あの曲からはすごく何かを感じた”とかメールをもらったりして、そういう反応からはすごくインスピレーションを受けたし、曲を書き続けようっていうやる気につながった。世界中の沢山の人々が聴いてくれているんだなという実感は活力になったね。

――もしOWを知らない人に自分たちの音楽を勧めるとしたら、どんな風にオススメしますか?他のアーティストやバンドの名前を使って説明してらえますか?

ジョセフィーン ソングライティングに関して言えば、ロンドン・グラマーっぽいかもしれないわね。

London Grammar – Strong – Later… with Jools Holland – BBC Two

アンソニー ジェイムス・ブレイクとか。

ジョセフィーン そうね。そんな感じだと思う。

アンソニー 僕たちの音楽を”音の湯たんぽ”って表現した人がいたな。寒さの中で感じる暖かさ、みたいな。あの気持ちよさだよ。

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