クラシックの旋律にインディ・ロックやエレクトロニカから影響を受けたモダンなプロダクションを加え、00年代以降人気を博す音楽ジャンル=ポスト・クラシカル。中でもアイスランドを拠点に活動するオーラヴル・アルナルズ(Ólafur Arnalds)は、2010年代以降最も飛躍著しいアーティストと言えるかもしれない。彼は2007年に『Eulogy for Evolution』でアルバム・デビューを果たすと、以降もシーンの中核を担うレーベル〈Erased Tapes〉などから作品をリリース。近年はハリウッド映画『アナザー・ハッピー・デイ ふぞろいな家族たち』(2011)や『Gimme Shelter』(2013年)の映画音楽を担当した他、ヒット作『ハンガー・ゲーム』(2012)にも楽曲が使われている。

彼の最新作『アイランド・ソングス(Island Songs)』は、その名の通り、母国アイスランドを舞台に様々な地域に住む人々と音楽との繋がりを描いたプロジェクト。2016年夏に彼自身がアイスランドの様々な場所を訪れ、そこに暮らす人々とコラボレーションして作った楽曲を、7週間連続でドキュメンタリー・フィルムとともに公開していくという、音楽と映像を組み合わせたユニークな試みとなった。今回はその日本盤リリースに際して、本人にメールインタビュー! プロジェクトを通しての思い出を語ってもらった。

Interview:オーラヴル・アルナルズ

——『アイランド・ソングス』は2016年にアイスランド各地を回りながら現地の人々とコラボレーションして制作した楽曲を、動画とともにアップするプロジェクトでした。あなたがこのタイミングで母国アイスランドの様々な人々に意識を向けたのはなぜだったんですか?

僕はいつでもアイスランドの音楽シーンに刺激を受け、魅了されてきたんだよ。ただ、前の7曲入りのプロジェクト(『Found Songs and Living Room Songs』)は内側に目を向けて、僕の周りの親密な環境について曲を書いたものだった。だから今回は外に目を向けて、自分の国に住む他の人たちが「何をしているのか」「なぜそうしているのか」を探求しようと思ったんだ。 (旅で訪れた場所やコラボレーターについては)はじめに、コラボレーションをして面白いものが作れるかどうか、普段自分がやっていることとのコントラストがあるかどうかを考えた。だけど、同時に各地に暮らす彼らのストーリーを見つめ、音楽とともに制作したドキュメンタリー・フィルムの中で、彼らがそれぞれどんな役割を果たすかもポイントとして考えていたね。

——多くの人々がかかわるプロジェクトを進めるのはきっと大変だったでしょうね。

すべてのタイミングをコーディネートするのは本当に大変だったよ。それぞれレコーディングした週の終わりにはビデオをリリースしたかったからね。それが、今回僕らがすべてのビデオをワン・ショットで撮影した理由なんだ。最初は映像に関してももっといろんなことを計画してたんだけど、結局はなにもエディットすることはなくなった。編集に何日も費やす代わりに、ビデオをそのままオンラインに載せることにしたんだ。

——1曲目“川岸”に参加したエイナル・ゲオルグ・エイナルソンは、アウスゲイルの作品でも作詞を担当していた彼のお父さんです。アウスゲイルとも何か話したのでしょうか?

もちろんだよ。実際のところ、今回のプロジェクトで最初に話をしたのはアウスゲイルだった。そこで彼のお父さんのことを聞いて、「お父さんがこのプロジェクトに興味があると思うかい?」ってたずねた。アウスゲイルがこのアイディアをサポートしてくれてありがたかったし、この曲をリリースしたとき、彼のファンとも曲を分かち合うことができて本当によかったよ。

Ólafur Arnalds – Árbakkinn ft. Einar Georg

——また、6曲目“パーティクル”には、オブ・モンスターズ・アンド・メンのナッナ・ブリンディス・ヒルマルスドッティルが参加していますね。

彼女はとてもおおらかで、野生的でありながらも、すべてのポイントを確実にものにする。そういう考えを持った、すでに完璧な人と作業できるのはとてもすばらしいことだった。

Ólafur Arnalds – Particles ft. Nanna Bryndís Hilmarsdóttir