——アメリカではグラス・アニマルズのサポートを務め、ロンドンでもヴァクシーンズやシューラ等々、多くのアーティストと共演してきました。今までの共演者で最も感銘を受けたのは誰ですか?
イザベル ケイト・テンペストかな。彼女のこと知ってる?
——はい、もちろん。2014年のマーキュリー・プライズ(イギリス、アイルランドで毎年最も優れたアルバムに対して送られる賞)にもノミネートされた、ラップとポエトリーリーディングの中間を行くユニークなスタイルの音楽性を持ったアーティストですよね。
ジェームス 彼女が2016年に出したアルバム『Let Them Eat Chaos』のツアー最終日がロンドンのラウンドハウスで行われて、僕たちもサポート出演させてもらったんだ。3,000人以上も入るヴェニューがソールドアウトになって、ケイト・テンペスト自身にとってもすごく重要な意味を持つギグで、そこに参加できた経験はとても印象的だったよ。
——そのケイト・テンペストも手掛けたダン・キャリーが、あなた達のアルバムのプロデュースに参加していますね。彼と出会ったきっかけを教えてください。
イザベル 私たちのマネージャーが、スマホに録音した“プリーテス”のライブ音源をダンに聴かせたの。そしたら、彼はまだ私が歌い出す前のベースのイントロだけを聴いて、すぐに一緒にやりたいって言ってくれたんだって。私たちがその話を最初に聞いたときは、何で勝手にそんなラフな音源を聴かせちゃうの!? って怒ったんだけど、結果的にそれが良い方向に転がったわね。
Pumarosa – Priestess (Live At Village Underground)
——実際に一緒にレコーディングしてみて、彼のプロダクション・ワークについてどう感じましたか?
ジェームス ダンとの作業はとても特別だったよ。彼はとても忍耐強くて、いつも穏やかなんだ。壁を挟んだコントロール・ルームで離れて作業するんじゃなく、バンドと演奏ブースの中に入って一緒に音楽を作り上げてくれた。とても熱心で、一体感があって、それでいてパーソナルでもあって、素晴らしい時間だったよ。
イザベル 彼はとても親身になってくれたから、本当に素晴らしかった。全てのことについて意味を考えて、バンドの内側に立って、それぞれの演奏の細かい所まで理解してくれる。他のプロデューサーだと、テクニカルな部分を重視するあまりに、もっと冷たい関係になってしまう場合もあるでしょう? そういうやり方を好むアーティストやバンドもいると思うけど、私たちにはダンの方法論が合ってた。
ジェームス その方法論が曲の仕上がりにも反映されていると思う。僕たちの気持ちが上がって、徐々に演奏に熱がこもっていく様子が曲の中に余さず表現されている。
——これまで、シングル等のアートワークにはほぼ全てイザベルが描いた絵が使われています。このアルバムもそうですが、今までのものが人物画だったのに対して、今回はもっと抽象的ですよね。あのアートワークはどういうイメージで描いたんですか?
イザベル あの絵も「顔」をイメージして描いたのよ! 分からなかった?(笑)
——あぁ、なるほど! 顔をイメージした抽象画になっているんですね。
イザベル シングルほど分かりやすいものにはしたくなかったから、顔のイメージを抽象的に表現してみたの。もっとシンボル的なイメージね。アルバムのタイトルにもなった『魔女』を象徴するようなアートワークになったと思う。