ルーツとなった曲は今でもいちファンとして純粋に聴くし、僕はまったく何も考えずに音楽を聴く時間もすごく大事だと思っている
――AIさんの“最終宣告”はどうですか?
中学校2~3年の頃、でっかいスクリーンでMTVが見られる家に住んでいる友達がいて、当時はそこにみんなで集まって洋楽アーティストばっかり見ていたんです。でもAIさんの曲を聴いて、「やべえ、こんなにクロい、濃い歌を歌える人が日本にもいるのか」と思って。実際にお会いした時にも言ったんですけど、当時札幌のHMVでサイン会にも行ったんですよ。〈Def Jam Japan〉の一発目のシングルだったというのも、自分にとっては大きいですね。
次に選んだNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの曲は、「ザ・アンダーグランド」な雰囲気のラップを聴いた最初の頃の曲。キングギドラやZEEBRAさんの曲で「日本にもドクター・ドレーみたいなギャングスタっぽいものがあるんだ」と思っていた時に、(小学校の頃から同級生だった)MC松島が「これ知ってるか?」って休み時間に聴かせてくれたのが最初でした。僕はNMUからフロウを学び始めたんです。新作ではMACKA-CHINさんと一緒にスタジオで作業が出来たし、一緒にご飯を食べに行ったりもしてもらえて。大先輩なのにすごく気さくな方で、音楽の話というより面白い話しかしなかったかもしれないですね(笑)。
NITRO MICROPHONE UNDERGROUND – “NITRO MICROPHONE UNDERGROUND”試聴はこちら(スマホ専用サイト)
――(笑)。次はノラ・ジョーンズの“Don’t Know Why”ですが、これをルーツとして選ぶのは少し意外でした。
この曲がヒットしていた中学時代にクルマのラジオでかかっていたので、これを聴くと札幌を思い出すんです。去年の3月、MC松島の結婚式で札幌に帰った時に初めて自分で北海道の街を運転したんですけど、その時、たまたまカバンの中に一枚だけ入っていたCDがノラ・ジョーンズの『Come Away with Me』で。“Don’t Know Why”が入っていることすら忘れていたのですが、そこから2日間ずっとリピートしながら札幌を運転したんですよ。雪がまだ残っていて、それが色んな原風景に触れるきっかけになって……。
Norah Jones – “Don’t Know Why”試聴はこちら(スマホ専用サイト)
――これは〈ブルーノート〉から出た作品ですが、今回の『Good Morning』には本国の〈ブルーノート〉に所属する黒田卓也さんも参加していますね。
そうですね。僕はホセ・ジェイムズがすごく好きなので、(その作品やライブなどに参加している黒田さんを知って)「この人、日本人だよな? すげえ」って。それで黒田さんの作品も聴くようになったんですよ。黒田さんはスタジオに来て生で演奏してくださって、アドリブも入れてくれたんで、それらも使わせていただきました。
――スティーヴィー・ワンダーの“Part Time Lover”はどうでしょう?
これは6~7歳ぐらいの頃、夏に海に行く時には父親がハワイのラジオを録音したテープをクルマでずっとかけていて、その中でも特に印象に残っていた曲ですね。子供だったので“Part Time Lover”がどういう意味かも知らなかったけど、「怪しい曲だな」と思っていて(笑)。2パックもカヴァーしていましたよね。
Stevie Wonder – “Part-time Lover” 試聴はこちら(スマホ専用サイト)
そして最後のグリーン・デイは、ノラ・ジョーンズやエミネムと同じで中学時代に聴いていた曲。僕は洋楽の入口ってメストやSR71、ブリンク182、SUM41みたいなメロディック・パンクだったんです。たとえばウィズ・カリファとかも、結構そういうノリを持っている気がします。そこからエミネムの方に広がっていった感じだったんですよ。
Green Day – “Minority” 試聴はこちら(スマホ専用サイト)
――今回選んだ楽曲は、今聴くと印象が変わったりもしますか?
基本は全然変わらないですね。今でもいちファンとして純粋に聴くし、僕はまったく何も考えずに音楽を聴く時間もすごく大事だと思っているので。今回このプレイリストを選ばせて頂いて、改めて「そういう自分に戻れるなぁ」と思いましたね。
――では最後に、今回選んでいただいた10曲の中で特に新作に影響を与えた曲があれば教えてください。
今回で言うと、“Don’t Know Why”が一番大きいかもしれないですね。去年の3月に札幌に帰った時に昔の記憶に触れて、そこで色んなことを思い出したのが、3か月後に出来た“All I Want”に繋がっていくんです。あの時「昔はこんなこと思ってたな」「だからラップを始めたんだよな」「でもラップを始める前はこんな音楽も好きだったよな」って、改めて自分の過去の記憶に触れることが出来たんですよ。
――なるほど、それが“All I Want”のリリックや音に繋がっていったんですね。
そうなんです。だから、当時から考えても一周しているというか。今回のアルバムでやっとまた“朝になった”。そういう意味でも、『Good Morning』なんですよ。
RELEASE INFORMATION
[amazonjs asin=”B01C51IEQ8″ locale=”JP” title=”Good Morning”]
photo by Kohichi Ogasawara